小沢コージのものくろメッセ その21 偉大なるマンネリの旨さ

小沢コージのものくろメッセ その21 偉大なるマンネリの旨さ

アヘッド 運転席 モノクロ

そこにはシボレー・カマロやキャデラックCTSなどティピカルアメ車と並んで、すっかり向こうに溶け込みきってるロードスターが置いてあり、左ハンドルの2リッターエンジン仕様に乗ったがなんだか妙に楽しい。

走りの爽快さはもちろん、街全体にロードスターを歓待しているようなムードが溢れているのだ。絵ハガキのような椰子の木に、海岸線にはぶっ飛ばせる高速が流れ、少し街中から離れるとそれほど多くはないけどワインディングロードもある。

そこで155馬力、2ℓのUSロードスターは意外に奔放に走る。日本の多少ダルな1.5ℓモデルとは違い、クラッチをラフに繫ぐとガツンとやや乱暴に飛び出て、軽めのステアリングを回せばギュっと回る。足回りは明らかに硬めで、昔のようなクイックさはないが、他のアメ車に比べればやっぱりクルクル走る。

つくづくこのクルマはこの場所のためにつくられたのだと思う。実際、初代、2代目、3代目、すべてのロードスターを見掛けるし、どれも見事に似合っているのだ。

それとLAオートショーで発表された新型フィアット124スパイダーを見てびっくりした。見事なレトロデザインなのだ。ベースは新型マツダ・ロードスターで、〝フィアットが作ったミツオカ〟と揶揄する人もいたがそれは否めない。

でも、それは決して否定的な意味だけではなく、それだけ1960年代に出た元祖124スパイダーが西海岸で愛されていたってことだ。他にもアルファロメオ・スパイダー、MGB、ロータス・エランなどマツダMX-5の原型となったクルマは北米に沢山存在し、やがて絶滅した。

1989年に生まれた初代ロードスターはそれら先達達のリバイバルなのだ。向こうに「2人乗り」「簡便な幌」「楽しく元気なFR車」を愛する文化があり、そこにポコっと新興マツダがハマっただけなのだ。

西海岸のホテルやレストランに来ると、そこにはおそらく全世界の人が知っているようなアメリカンポップスが常に流れている。懐かしいところではヴァン・ヘイレンやアースウィンド&ファイアーなどであり、なんか聞いた事あるな系では、ポール・アンカやフランク・シナトラがある。

しかもそれがケチャップベタベタで、なおかつお皿に載せて食べるハンバーガーとコロナビールに見事似合うのだ。ほとんど自分の中で溶けかけた記憶に、今がシンクロする不思議な瞬間。つくづくこの国は、偉大なるマンネリで出来てるのだと思う。

実際、'50〜'60年代のアメリカンカルチャーは、いろんな意味で世界を席巻した。その記憶は極東アジアの少年だった自分の頭にまですり込まれているのだ。

例え英語があまり分からなくても染みてくるティピカルアメリカン風味。そのクルマ味を日本人が作り続けているという事実。世界は時代を越えて繋がり、クルマはやっぱり文化なのだと思う瞬間である。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の“バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタiQなど。

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