新車当時、日陰者だったF31レパードが人気。その理由とは?

F31レパードは、現在でこそ人気車種のひとつですが、新車当時はトヨタ ソアラの陰に隠れ、販売は伸び悩みました。ソアラという存在が大きすぎたこともありますが、当時の日本人には少し地味に映った面もあるかもしれません。そんなレパードが、どうやって現在の人気を得ていったのでしょうか?探ってみたいと思います。

Chapter
知的な大人のためのスペシャリティカー
フラグシップとしてのプライドとポリシー
レパードの人気のきっかけは?
あの頃は買えなかった…それが、遅咲きの理由

知的な大人のためのスペシャリティカー

日産 レパード(1987)

F31レパードのイメージカラーは、ゴールドメタリックと落ち着いた印象のダークブルーでした。

R32スカイラインの主管も務めた伊藤修令氏からバトンを引き継いだ山羽和夫主管はレパード発表の際に「知的な大人のハイセンスなライフスタイルを演出するクルマ」と紹介しました。

それはF31レパードが、控えめで落ち着いた精神性こそが大人の感性に訴えかけられる、という狙いで作り上げられたことを意味しています。

モダンよりクラシックなライン。スーツの世界で言えば、先鋭的なアルマーニよりもトラディショナルなエルメネジルド・ゼニアの感覚に近いかもしれません。

その意味では、初めから目立とうとは思っていなかったのであり、ソアラを意識しながらも、ソアラとは別の価値観を追求していたことが伺えます。

フラグシップとしてのプライドとポリシー

目立たぬ落ち着いた衣装をまといながら、しかしフラッグシップとしてのプライドも合わせ持つ、その二面性がレパードにはありました。

前期型の自然吸気VG30DEエンジンは、バンク別のスロットルに、各気筒には点火時期の調整機能を盛り込むなどしたハイテクエンジンで、最高出力136kW(185ps)/6,000rpm、最大トルク245Nm(25.0kgm)/4,400rpmを発生。後期では、VG30DEにセラミックターボを追加したVG30DETに進化。最高出力188kW(255ps)/6,000rpm、最大トルク343Nm(35.0kgm)/3,200rpmにアップしています。

足まわりは、フロントがストラット、リアはセミトレーリングアームの組み合わせ。アルティマグレードにのみ、超音波で路面状況を把握し減衰力を変化させるスーパーソニックサスペンションが搭載されていました。

室内で目を引くのが、マリンブルーに輝くデジタル表示の計器盤です。またオートカセットセレクターに加え、助手席の中折れ機構”パートナーコンフォートシート”は、日産が編み出したおもてなしの装備でした。

しかし、残念なことに、日産の意図するところは理解されず、市場ではソアラより地味という理由で、なかなか人気を得ることはできなかったのです。

レパードの人気のきっかけは?

日産 レパード F31

「ユージ、逮捕は諦めよう。退治するんだよ」

「あぶない刑事」は、F31レパードを語るうえで、外すことのできないキーワードです。

VG30DEの乾いた始動音ののち、タイヤスモークをあげながら横浜の街を激走。凶悪犯とのカーチェイスを繰り広げ、時に被弾しながら、サングラスが似合う主人公の2人とともに、主役級の活躍をしたモデルがゴールドのF31レパードでした。

このTVドラマでの活躍が、レパードにとって追い風となったことは言うまでもありません。ゴールドメタリックという珍しいカラーをラインナップした、デザイナー(Y31セドグロと同じ若林氏)のセンスの良さがここに生きました。

このカラーチョイスは、いかにも破天荒で一気に捜査を進める正義感の強い大下勇次(柴田恭兵)の相棒として、あるいは横浜という高感度な街中でひときわ存在感を放つアイコンとして、これ以外の選択はちょっと考えられないというくらい見事にハマっていたものです。

また、勝俣州和演じる犯人が乗る初代ソアラと、レパードが繰り広げたカーチェイスも語り草となっています。

あの頃は買えなかった…それが、遅咲きの理由

「あぶない刑事」は、当時の中高生に絶大なる人気を博しました。大学生がソアラに熱中していた頃、中高生はあぶない刑事とレパードに強く感化されていたわけです。

F31レパードからY32レパードJフェリーに移行すると同時期に、当時中高生だった若者は免許を取得する年齢となり、そしてバイトで貯めた、あるいは親からの大借金を手に、中古車店に並ぶ金色のレパードをこぞって買い求めるようになります。これがレパードが、遅咲きだった最大の理由でしょう。

しかもその後、2015年になって「あぶない刑事」の完結編が劇場公開されたことで、「あぶない刑事」を知らない世代もレパードに憧れ、購入したという現象もあるようです。

理由を聞くと「シブかっこいいから」なんていう言葉が聞こえてきたりします。もしかすると、新車当時に理解されずに苦労した「大人っぽさ」を、現代の若者がこのクルマから感じ取っているのかもしれませんね。

登場した当時は、ソアラと比較され不遇の時を過ごし、やがて本当の理解者たるやや後の世代から厚い支持を獲得するという、自動車の歴史上まれに見る愛され方をされたレパード。ソアラとは似たスタイルでありながら、明確に異なる個性と歩みと歴史を持ったクルマに結果的になりました。

いまでもピカピカに磨き上げられたり、エンジンや足まわりを丁寧に手入れされたりしながら現役で走り続けているレパードは、幸せ者かもしれませんね。