「送りハンドル」はなぜダメ? 正しいハンドル操作と安全運転のポイント

ハンドル
運転に慣れてくると、ハンドルの回し方に自己流のクセが出ていませんか? 教習所以来、「送りハンドルはダメ」と聞いた記憶がある方も多いでしょう。一方で、プロドライバーは腕を交差させない操作を基本としています。

これらは似ているようで、実は全くの別物です。

この記事では、教習所で禁止される「送りハンドル」と、プロが実践する「プッシュプルステアリング」の違いを明確にし、それぞれの理由と正しい操作方法を解説します。
Chapter
教習所で「ダメ」と言われる“送りハンドル”とは
なぜ教習所の「送りハンドル」は危険なのか?5つの理由
プロが実践する正しい「プッシュプルステアリング」とは
正しいハンドル操作:クロスハンドルとプッシュプルの使い分け
クロスハンドル(交差ハンドル)の特徴と使い所
プッシュプルステアリング(送りハンドル)の特徴と使い所
絶対NGな危険ハンドル操作
内掛けハンドル(逆手ハンドル)は危険
片手ハンドル(ワンハンド)は不安定
まとめ:状況に合わせたハンドル操作で安全運転を

教習所で「ダメ」と言われる“送りハンドル”とは

日本の多くの自動車教習所で「送りハンドル」として禁止されているのは、ハンドルを細かく不器用に持ち替えたり、手のひらでハンドルの内側を滑らせるように操作したりする、非効率で不安定な操舵方法を指す俗称です。

この操作方法は、次に挙げるような危険性があるため、原則として「NG」とされています。

なぜ教習所の「送りハンドル」は危険なのか?5つの理由

  1. 大回りリスク:旋回速度が遅れる 
    一度にハンドルを大きく回せないため、交差点などで操作が遅れ、車が大回りしてしまう危険があります。

  2. 咄嗟の危険回避が難しい 
    緊急時に素早く大きくハンドルを切る操作に対応できません。また、ハンドルをしっかり握れていない瞬間があるため、路面からの衝撃(キックバック)に対応できない恐れもあります。

  3. 舵角が把握しにくい 
    何度も小刻みに持ち替えるため、タイヤが今どちらを向いているのか(舵角)が分かりにくくなり、ハンドルを戻すタイミングを失いやすくなります。

  4. 自己流操作で事故リスク増大 
    教習所で教わる正式な方法ではないため、危険な自己流のクセがつきやすくなります。

  5. 初心者には習得が難しい 
    一見簡単そうに見えますが、運転に不慣れな人がこの方法でスムーズかつ迅速に操作するのは難しく、かえって危険な状況を招きます。

プロが実践する正しい「プッシュプルステアリング」とは

一方、レーシングドライバーや海外の安全運転講習で基本とされるのが「プッシュプルステアリング」です。

これは、腕を交差させず、片方の手でハンドルを押し上げ(プッシュ)、もう片方の手で引き下げる(プル)ように連動させて操作する方法です。

常に両手でハンドルをしっかり握り、ハンドルの外周を滑らせるように操作するため、最も車両を安定させられる安全な操作方法とされています。姿勢が安定し、細かな調整がしやすいメリットがあります。

以上のように、教習所で禁止される俗な「送りハンドル」と、プロが実践する「プッシュプル」は、似ているようで全くの別物です。

日本の教習所では、誰もが確実に操作を習得できる「クロスハンドル(交差ハンドル)」を基本として教えていますが、運転に慣れてきたら、より安全で正確なプッシュプルステアリングを練習してみるのも良いでしょう。

正しいハンドル操作:クロスハンドルとプッシュプルの使い分け

安全運転のためには、正しいハンドルの握り方と状況に応じた回し方を身につけることが重要です。

まず基本は、両手でハンドルを「9時15分」の位置で握ることです。かつては「10時10分」と教わった方もいるかもしれませんが、これはパワーステアリングのない時代の教えで、現代のエアバッグ付きの車では9時15分が推奨されています。

この持ち方なら安定した姿勢となり、万一の際のリスクも軽減できます。

クロスハンドル(交差ハンドル)の特徴と使い所

クロスハンドルとは、ハンドルを大きく回す際に腕を交差させて持ち替える方法です。日本の教習所ではこちらが基本として教えられ、駐車時の切り返しやUターンなど、極低速で素早く大きくハンドルを回す場面で有効です。

ただし、腕が交差する間は片手操作になり、体勢も崩れやすいため、速度が出ている状況での使用は危険です。クロスハンドルは、徐行レベルの速度域でのみ使うようにしましょう。

プッシュプルステアリング(送りハンドル)の特徴と使い所

プッシュプルステアリングは、腕を交差させずにハンドルを回す、安全で正確性の高い操作方法です。高速道路や山道のカーブなど、ある程度の速度を保ったままスムーズに曲がる場面で有効です。常に両手でハンドルをコントロール下に置けるため、安定した走行が可能です。
具体的な操作方法は、例えば右カーブなら、まず右手(曲がる方向と同じ側の手)でハンドルを上に押し上げ(プッシュ)、同時に左手(外側の手)は下に引き下げます(プル)。両手はハンドルの外周を滑らせるように移動し、腕が交差することはありません。

この操作は、体がシートにしっかり固定されたまま行えるため、正確なハンドルさばきが可能になります。

以上のように、クロスハンドルとプッシュプルステアリングは、どちらが絶対的に正しいというものではなく、状況に応じて使い分けるのが理想的です。「極低速での大きな操作はクロスハンドル」「通常の走行中のカーブはプッシュプル」と使い分けることで、より安全で快適な運転が実現できます。

絶対NGな危険ハンドル操作

内掛けハンドル(逆手ハンドル)は危険

内掛けハンドル(逆手ハンドル): ハンドルを内側から手のひらを返すように握り、下から上に引っ掛けて回す方法です。

腕をひねった独特の姿勢になるため緊急時にとっさの操作ができず、さらに衝突時にエアバッグが開くと逆方向に腕が弾かれて関節を痛めるリスクが非常に高く危険です。ハンドルを大きく早く回せるように感じるかもしれませんが、実際には素早い細かな修正が効かず危機回避にも不向きなので、絶対に避けましょう。

片手ハンドル(ワンハンド)は不安定

片手ハンドル(ワンハンド): ハンドルを片手だけで操作することです。

例えばハンドル上部を片手で持ったまま回す「ヤンキーハンドル」のようなスタイルは、常に片手運転になるため安定性が損なわれます。見た目はラクそうですが実は腕に余計な力が入り疲れやすく、ハンドルに十分な力が伝わらないので車の挙動に即応できません。

特に車が不意にスリップしたり急な動きをした際、片手では立て直しが遅れて事故につながる危険があります。日常的に片手運転をしている人はすぐに改め、必ず両手でハンドルを握る癖をつけてください。

まとめ:状況に合わせたハンドル操作で安全運転を

ハンドルの回し方は運転の基本であり、安全運転に直結する重要な技術です。送りハンドルがダメとされるのは、状況を選ばず誤った使い方をした場合に危険が生じるからであって、適切に使えば決して悪い操作法ではありません。

逆に、教習所で習ったクロスハンドルも用途を誤れば不安定になり得ます。大切なのは速度やカーブの大きさなど状況に応じて最適な方法を選ぶことでしょう。


普段の運転では、まず基本となる正しいドライビングポジションと9時15分の握り方を守りつつ、落ち着いてハンドル操作を行ってください。曲がり角の半径や走行スピードに応じて、送りハンドルとクロスハンドルを上手に使い分け、安全かつスムーズに車を曲げることを意識しましょう。

そしていかなる場合でも片手運転や内掛けハンドルといった安易な操作に頼らず、確実なハンドルさばきを心掛けてください。正しいハンドル操作を身につければ、急な危機回避にも対応でき、同乗者にも安心感を与えることができます。

知識と技術をアップデートし、安全で快適なドライブを楽しみましょう。
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