なぜポルシェとスバルだけが水平対向エンジンを採用するのか?

ポルシェ 911 Carrera 4 GTS

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現在、世界で水平対向エンジンを採用しているのは、日本のスバル(トヨタとの共同開発生産車含む)と、ドイツのポルシェのみ。以前は、アルファロメオやシトロエンなどにも採用されていた水平対向エンジンですが、最近ではめっきり減ってしまった印象です。その要因は何があるのでしょうか。
Chapter
水平対向エンジンとは?
水平対向エンジンのメリット
水平対向エンジンが衰退した理由
ポルシェとスバルが水平対向エンジンを採用し続ける理由

水平対向エンジンとは?

水平対向エンジンはその名の通り、クランクシャフトを中心にして、ピストンを左右、水平に配置したレイアウトが特徴です。

これにより、エンジンは軸方向に短く、上下に薄いフラットエンジン、左右バンクのピストンが対象で動くことから、ボクシング選手がグローブで打ち合う動作に例えて、ボクサーエンジンとも呼ばれます。

ちなみに、この水平対向エンジンを発明したのは、メルセデス・ベンツ生みの親であるカール・ベンツでした。

水平対向エンジンのメリット

水平対向を採用する理由のひとつに、まず振動の少なさが挙げられます。

水平対向エンジンは、向かい合った1組のピストンが、横方向に往復します。これにより、ピストン同士が互いの慣性力を打ち消し合い、振動を抑えられます。

また、直列やV型エンジンが上下方向に長いことに対して、水平対向エンジンは、シリンダーがフラットに配置されているため、全高が低くなり低重心化しやすく、高い走行安定性をもたらします。

さらに、等間隔爆発を採用しやすく滑らかなフィーリングとなります。

独特な排気音も特徴で、ファンにはボクサーサウンドとして親しまれており、これも水平対向エンジンのある種のメリットですね。

水平対向エンジンが衰退した理由

メリットの多い水平対向エンジンですが、採用するメーカーが少ないのは、デメリットもあるからです。

そのひとつがエンジンの横幅です。高性能化、高出力化にともない、エンジン排気量は増加傾向にあった際、気筒数が変わらなければ、ピストンストロークの延長またはボアの拡大が必要になります。

しかし、もともと横幅のあるエンジンなので、ストロークを延長するとエンジンルームに収まらなくなる可能性があります。かといってボアを広げると、エンジンのショートストローク化が進行し、扱い難いエンジンになってしまいます。

スバルが、フロントにストラット形式のサスペンションを採用していることや、ポルシェ911が長らくリアにトーションビームを用いてきたことは、水平対向エンジンの横幅と無関係ではありません。

また、シリンダーブロックが左右で独立していることで、エンジンの製作工数が片側シリンダー分だけ増えてしまうことも、コストを重視する現代のものづくり的観点からみればデメリットです。

さらに、他形式エンジンの振動低減に関する技術向上や、横置きエンジンおよび前輪駆動レイアウトの一般化、排ガス対策による排気系の複雑化など、水平対向エンジンのメリットが弱まる、または対応が難しい事象が増えてしまい、結果、採用するメーカーが減少したのです。

ポルシェとスバルが水平対向エンジンを採用し続ける理由

まずポルシェですが、911とボクスター&ケイマンのスポーツモデルに採用されています。その理由として、初代911から続く伝統であるのと同時に、水平対向エンジンが高回転域まで滑らかであること、車両の低重心化にも最適であることなど、メリットが数多くあるからです。

スバルも同じような理由で長年採用し続けていますが、そのほかに衝突安全性能への貢献も理由として挙げています。86/BRZの低く構えたスタイリングは、水平対向エンジンによるところも大きいように思います。

とはいえ、水平対向エンジンを採用すること自体、それほどメリットはありません。しかし、水平対向エンジン独特の音やフィーリングにはファンが多いのも事実です。

気がつけば世界的にも希少なエンジンとなりましたが、ポルシェやスバルには今後も生産を続けてほしいですね。多くのボクサーエンジンファンのために…。


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