排気量が1,000cc、2,000ccピッタリじゃないのはなぜ?

排気量が1,000cc、2,000ccピッタリじゃないのはなぜ?

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クルマのカタログを眺めていて、ある数字に違和感を覚えたことがある方も多いのではないでしょうか。それは、エンジンの排気量。

1,998ccや1,496ccなど…ほぼ全てのクルマの排気量が、ぴったりとキリの良い数字になっていないのです。

今回は、エンジン排気量がぴったりとキリの良い数字になっていない理由について、じっくり解説していきましょう。

吉田 恒道|よしだ つねみち

1980年代、大学卒業後ファッション・モード専門誌「WWD Japan」編集部勤務を皮切りに編集者としてのキャリアを積む。その後、90年〜2000年代、中堅出版社ダイヤモンド社の自動車専門誌・副編集長に就く。以降、男性ライフスタイル誌「Straight’」(扶桑社)など複数の男性誌編集長を歴任し独立、フリーランスのエディターに、現職。著書に「シングルモルトの愉しみ方」(学習研究社)がある。

吉田 恒道
Chapter
エンジン排気量のキリを良くする必要性はない
エンジンの構造上の理由も含まれている?
工業製品としての誤差を考慮している

エンジン排気量のキリを良くする必要性はない

クルマのスペックは、現在では誰でも気軽に見ることができるものとなっています。ディーラーや中古車販売店では紙のカタログをもらうことができますし、インターネットを使用すれば、メーカーのホームページにアクセスすることでオンラインのカタログを閲覧することも可能です。

そのカタログに必ず記載されているのが、エンジンの排気量です。

排気量とは、クルマに搭載されている内燃機関(エンジン)の容積の大きさを示すものです。 排気量の単位はccもしくはリットルで表され、400ccの容積を持つ気筒が4気筒備わっていれば、総排気量は1,600ccに相当するということを示します。

しかし1L なら998cc、2.0L なら1998ccと、カタログにはキリよくゼロが並んだ数値が記載されていません。

こうなってしまう大きな理由は、「そうする必要がない」つまり、綺麗な数値に合わせる必要は無いからなのです。エンジンを開発する技術者は、エンジンの排気量をただ綺麗に見せるために日々開発を行っているワケではありません。

1L のエンジンがきっちり1,000ccであっても、基本的には何の意味も持たないのです。

エンジンの構造上の理由も含まれている?

エンジンの排気量がキリの良いピッタリした数値ではない理由として、「そもそも、そのように作るのが難しい」ということが挙げられます。

エンジンに用いられるシリンダーの形状は、円柱の形をしています。排気量はエンジンシリンダー内をピストンが上下する範囲の体積×エンジンシリンダーの数(気筒数)で求めることができますが、シリンダーは円柱なので計算式に円周率(3.14...)を使う必要が出てくるのです。

そのため、ぴったり2,000ccや3,000ccとすることは非常に困難。円柱ではなく、箱型のシリンダーが使われているのであれば、キリの良い数値の排気量を出すことができるかもしれませんが、スペースの効率やエンジンの設計上それは難しいでしょう。

ちなみに、排気量は誰でも簡単に計算することができます。

例えばトヨタのカローラを見てみると、内径×行程が80.5×88.3(mm)で直列4気筒となっています。シリンダー1気筒辺りの排気量を求める式は、80.5×80.5×3.14(π)×88.3÷4÷1,000となり、449.181769がシリンダー1本辺りの排気量ということになります。

さらに、このカローラは直列4気筒なので、449.181769×4を計算すると1796.72708。

小数点は切り上げるので、カタログに掲載されている総排気量1.797ccは正しいということが分かります。

工業製品としての誤差を考慮している

クルマの排気量が中途半端なのは、エンジン製造時に発生する微妙な違いを考えた上でのものもあります。

自動車のエンジンはどこまでいっても工業製品です。そのため、金太郎飴を切るように、全く同じ製品が延々と生み出すことができるワケではないということ。

ご存じの通り、クルマには総排気量によって自動車の税額が定められています。例えば、現在では1,500cc超2,000cc以下では3万6,000円、2,500cc超3,000cc以下では5万円といった具合。

この時、エンジンの個体差を考慮せず、「全てのエンジンの排気量が2,000cc、もしくは3,000cc」と公言してしまうと、もし製造上の誤差が発生した場合に「ワンクラス上」の税額を支払わなければならない事態が発生してしまうのです。

全く同じクルマでも、個体によって税額が異なってしまうのでは工業製品として正常ではありません。そのため、カタログを眺めていると気が付きますが、区分すれすれの排気量はキリが良くなる数値よりもやや少な目に設計されていることがほとんどです。
排気量がキリの良い数字ぴったりな数値でないのには、理由があることはわかりました。

そもそもピッタリに作るのが難しかったり、開発過程でのイレギュラーを想定しているというもの。

厳密な総排気量を普段から気にしている人は少ないかもしれませんが、そういった面からカタログを見てみると面白い発見があるかもしれません。

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