ホンダの大人気ミニバン、 オデッセイ進化の過程。プロによる徹底解説

ホンダ オデッセイ アブソルート EX 2020年

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1994年の初代から4代目まで、低く構えたスタイリングを特徴にファンを獲得してきたホンダを代表するミニバン、オデッセイ。5代目に進化するにあたり、それまでの低ルーフコンセプトと決別し、オーソドックスなミニバンスタイルにあらためられました。ここでは、その進化の過程を探ってみましよう。

文・写真/萩原 文博

萩原 文博|はぎはら ふみひろ

1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューし、大学在学中に中古車情報誌の編集部にアルバイトとして加入。1995年より編集部員として編集作業に本格的に携わる。中古車の流通、販売店に精通し、「中古車相場師」として活動。2006年からフリーランスの編集者となり、中古車だけでなく、現在は日本で最も多くの広報車両を借り出して取材を行い、新車でもユーザー視点のバイヤーズガイドを中心に、人気車種の動向や流行りの装備の価値評価などを加味した、総合的に買いのクルマ・グレードの紹介をモットーとしている。

萩原 文博
Chapter
ミニバンは背の高いものという常識を覆しヒットした初代オデッセイ
初代のコンセプトを受け継ぎ進化させた2代目
よりシャープに、都市部での需要を見越して全高ダウン
走りの質と安全性を強化した4代目
モデル統合で一般的なミニバンスタイルに大変身

ミニバンは背の高いものという常識を覆しヒットした初代オデッセイ

1BOXカーの広い空間にセダンの快適さと走行性能を合わせ持つ、新しいコンセプトのホンダ オデッセイが発売されたのは1994年10月でした。開発費と生産する工場の制約から、アコードのプラットフォームを使い、アコードと同じラインで生産されたオデッセイは、他のミニバンに比べて背の低いエクステリアデザインが特徴でした。

室内の床を低くすることで、1BOXカーのようなゆとりの空間と、3列シートレイアウトを実現。6人乗りと7人乗りが用意され、多人数で移動できる空間と、ホンダがそれまで培ってきた高性能セダンづくりの技術を生かし、1BOX車のスペースユーティリティとセダンの爽快な走りや快適な乗り心地、安全性を高次元で両立しました。

当初は、2.2L直列4気筒エンジンのみの設定で、組み合わされるトランスミッションは4速AT、駆動方式は2WD(FF)とホンダ独自のデュアルポンプシステムを導入したリアルタイム4WDの2タイプを用意。

サスペンションは、4輪ダブルウィッシュボーン式ですが、リアには3列目の居住性など室内効率を高めるためにコンパクトなインホイール形式のサスペンションを新開発しました。

1996年に一部改良を行い、快適装備を充実。そして1997年にはマイナーチェンジを行い、内外装の変更に加えて搭載するエンジンをVTEC付きの2.3L直列4気筒へと変更。1997年には、3.0L V6エンジンを搭載したプレステージを追加するなどラインアップを強化しました。

初代のコンセプトを受け継ぎ進化させた2代目

2代目オデッセイは1999年12月に登場しました。エンジンラインアップは先代モデル同様、2.3L直列4気筒VTECエンジンと3.0L V型6気筒VTECエンジンの2種類。

組み合わされるトランスミッションは2.3L車が4速AT、3.0L車は新開発の5速ATとなり、駆動方式は全モデルで2WD(FF)と4WDが選べるようになっていました。

エクステリアデザインは先代モデルを引き継ぎ、低重心&ワイドスタンスを基本テーマに確かな存在感のある力強さと空力性能を追求。上質感と安定感を両立しています。
インテリアは、全モデルで7人乗りのベンチシート仕様と6人乗りのキャプテンシート仕様を設定。快適性と使い勝手の向上を追求し、スペアタイヤの床下収納への変更や3列シートもシートピローを取り外すことなく一体で床下収納を可能とするなど、利便性が向上しています。

走行性能を向上させるために、フロントにストラットタワーバーを装着。さらにリアサスペンションの取り付け部のクロスメンバー強化などにより、安心感のある走りを実現しました。

またボディの床面のほぼ全域、ドア周辺部、ダッシュボードなどに遮音材・吸音材を隙間なく敷きつめることで、ロードノイズやエンジン透過音の侵入を低減するとともに、電子制御式液封エンジンマウントの採用や、ドアミラーやワイパー形状にもこだわり高い静粛性を実現しています。

2001年のマイナーチェンジでは、内外装の変更とともに、ローダウンサスペンションや17インチアルミホイールの採用などにより、走行性能を向上させたスポーティグレードのアブソルートを追加しました。

よりシャープに、都市部での需要を見越して全高ダウン

2003年10月にフルモデルチェンジを行い、3代目モデルが登場しました。新開発のプラットフォームを採用した3代目は、全高を先代モデルより80mm(2WD車)低めることで、全高を一般的な立体駐車場に入庫可能な1,550mmとし、ワイドスタンスがより強調されたスタリングとなりました。

それでいて、室内空間は前モデルより5mm上回る室内高を実現。インテリアは、インストルメントパネルからドアまで一貫したデザインイメージをもつ機能的で斬新的なコクピットに、優雅なくつろぎが得られるパッセーンジャーエリアを融合した質感の高さが魅力です。

フロントの操作系はセンターパネルに集中配置。シフトレバーの位置をステアリングに可能な限り近づけることにより、より快適な操作性を実現しました。

2列目以降の居住空間は、2列目シートにダブルフォールディング、3列目シートに床下格納を採用することで、多彩なシートアレンジを可能としました。この3列目シートとテールゲートには電動格納機能や電動開閉機能を装備(※一部グレードのみ)して、利便性を向上させています。

搭載するエンジンは、2.4L直列4気筒i-VTECのみですが、標準モデルにはレギュラーガソリン仕様の最高出力118kW(160ps)/5,500rpm、最大トルク218Nm/4,500rpmのエンジン。

アブソルートにはハイオクガソリン仕様の、最高出力147kW(200ps)/6,800rpm、最大トルク232Nm/4,500rpmを発生するエンジンが搭載されました。

トランスミッションは、2WD車の標準グレードに新開発の7スピードモード付CVT。上位グレードとアブソルートにSマチック付5速ATの設定。駆動方式は2WD(FF)と新開発の4WDが用意されました。

この4WDシステムは、デュアルポンプシステムのクラッチ機構にワンウェイカムユニットとパイロットクラッチを追加したリアルタイム4WDと呼ばれるもので、タイムラグを感じることなく、駆動力を伝達し、雪道などでの発進性、旋回時の安定性を向上させています。

安全装備は、ステアリング舵角に連動してヘッドライトユニットが動くAFS(アダプティブ・フロントライディング・システム)をはじめ、ブレーキ制御を4輪制御としたVSA。ミリ波レーダーで前走車を検知し、追突の危険を警報や軽いブレーキでドライバーに知らせる衝突軽減ブレーキなどを採用しています。

2006年にマイナーチェンジ敢行し、内外装のデザインを変更。LED式リアコンビネーションランプの採用をはじめ、テールガーニッシュが追加されるなど、リアまわりをメインにアップデート。アブソルートは、足回りの強化が実施され、オデッセイ初の18インチアルミホイールを採用するなど、さらに走りに磨きを掛けています。

走りの質と安全性を強化した4代目

2008年10月に登場した4代目オデッセイは、乗る人の心をときめかせる“感性クオリティ”をコンセプトに「人とクルマの一体感」「全席の爽快感」「独自の存在感」を高次元で融合。あらゆるシーンで人のこころに響く気持ち良さを目指して開発されました。

先代同様、多くの立体駐車場に収まる1,545mm(2WD車)の全高を実現。リアドア上部の開口幅を拡大することで、3列目への乗降性を向上させるだけでなく、2列目シート下の構造を工夫し、3列目乗員の足入れスペースを拡大するなど、7人の乗員が快適に移動できるゆとりの空間を実現しています。

エクステリアデザインは、“センシュアル・ダイナミズム”をコンセプトに、変化に富んだ面構成でダイナミックな塊感を表現することで、官能的な美しさと力強さを表現。

インテリアは、“アドバンスド・エモーショナル・デザイン”をコンセプトに先進性を兼ね備えた上質で爽快な空間を実現しています。爽快感や広がり感を演出する伸びやかな造形のインストルメントパネルに、オーディオやエアコンなどを操作しやすい配置として、直感操作性に優れたセンターパネルを採用しています。
搭載されているエンジンは2.4L直列4気筒 i-VTECエンジンで、レギュラーガソリン仕様は最高出力127kW(173ps)/6,000rpm、最大トルク222Nm/4,300rpm、対するアブソルートのハイオク仕様(2WD車)は、最高出力151kW(206ps)/7,000rpm、最大トルク232Nm/4,300rpmとなりました。

トランスミッションは、標準モデルの2WD車がトルクコンバーター付きCVT、4WD車とアブソルートは5速ATとなっています。

この4代目から、運転支援機能として高速道路での運転負荷を軽減する車速/車間制御機能(ACC)&車線維持支援システム(LKAS)を採用。さらに、車両挙動安定化制御システム(VSA)と協調制御し、車両の挙動をより安定化する操舵力アシスト制御のモーションアダプティブEPSを全モデルに標準装備するなど、高い安全性を誇っています。

2011年のマイナーチェンジでは、デザインや装備の充実化を図っています。

モデル統合で一般的なミニバンスタイルに大変身

5代目となる現行型オデッセイは、2013年10月に登場しました。上級モデル、エリシオンとのモデル統合によって、一般的なミニバンスタイルとなった5代目は、シリーズ初となるスライドドアの採用と、超低床プラットフォームによって、従来モデルをはるかにしのぐ広い室内空間と歴代オデッセイで定評のあった爽快で安定した走りを実現しました。

グレード体系は従来と同じで、新開発2.4L直列4気筒i-VTECエンジンが標準モデルとアブソルートで仕様が変わることも同じですが、ガソリンは全車レギュラー仕様となったことがトピックです。

それぞれのスペックは、標準モデルが最高出力129kW(175ps)/6,200rpm、最大トルク225Nm/4,000rpm、アブソルートには最高出力140kW(190ps)/6,400rpm、最大トルク237Nm/4000rpmです。

2016年には、ハイブリッド車を2WD車に追加設定。2.0Lガソリンエンジンと駆動、発電を行う2つのモーターを組み合わせたスポーツハイブリッドi-MMDと呼ばれるハイブリッドシステムは、モーターによる走行を積極的に行い、JC08モード燃費で26.0km/Lを実現しました。

組み合わされるトランスミッションは全車CVTで、アブソルートにはパドルシフトを採用した7スピードモード付CVTを採用しています。

エクステリアデザインは、“Solid Streamline”をコンセプトに、超低床を活かした広い空間を持ちながら四角い形状とすることなく、流麗かつ力強いプロポーションを追求。インテリアは、モダンで飽きの来ないホテルのスイートルームをモチーフに、すべての座席で最上のくつろぎをもたらす室内空間を実現しています。

先進の安全装備として、リアバンパーに設置したレーダーで車両の後側方を監視し、死角エリアに存在する車両をドライバーに知らせる「ブラインドスポットインフォメーション」や前走車だけでなく、対向車にも作動し、誤発進抑制機能も備えるなどさらに進化した衝突軽減ブレーキ(CMBS)、前走車への追突や誤発進の未然防止をサポートするシティブレーキアクティブシステムなどを採用しました。

また2015年の改良では、衝突軽減ブレーキ(CMBS)をはじめ7つの運転支援機能をパッケージ化した安全運転支援システム「Honda SENSING」をオプション設定。2017年11月の改良では、内外装の変更と同時に、機能性が向上した安全運転支援システム「Honda SENSING」を全車に標準装備されました。
2020年11月にはマイナーチェンジが敢行され、アブソルートのみにグレードを整理しました。

同時に、内外装のデザインを一新するとともに、快適装備としてドアノブに触れることなく流れる光に手をかざすことで、パワースライドドアの開閉が可能となるジェスチャーコントロールを採用するなど利便性をアップ。「Honda SENSING」には後方誤発進抑制機能を追加するなど、商品力を向上させています。
低ルーフスタイルで一石を投じた初代から、都市部に多い立体駐車場に対応したパッケージを採用した3〜4代目まで、メーカーエンジニアのアイディアと企画力を感じるミニバンとして一目置かれる存在だったオデッセイ。今後は、どのように進化するのか、どんなアイディアが投入されるのか楽しみです。
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