戦車の運転には専用の免許が必要?日本の戦車メーカーや価格も徹底解説

10式戦車

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第一次世界大戦から現代に至るまで、戦車は各国陸軍の主力兵器として重要な役割を担ってきました。

日本でも陸上自衛隊を中心に運用されていますが、「車」の名が付く乗り物である戦車について、メーカーや値段はどうなっているのか? 一般人が運転するにはどんな免許・資格が必要なのか? 公道を走行できるのか? といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

今回は、なかなか一般には知られていない戦車のことをご紹介します。

CARPRIME編集部

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Chapter
日本の戦車:主力は小型・軽量化した最新鋭10式戦車
現行の主力戦車ラインアップ
10式戦車の機動力と軽量化
世代交代と10式戦車の高度化
戦車を製造している国内メーカーはどこ?価格はいくら?
国内で戦車を製造するのは三菱重工業のみ
最新鋭10式戦車の価格は約9億円台
なぜ一般人は戦車を買えないのか?
戦車の運転に必要な免許・資格とは?
戦車には大型特殊自動車免許が必要
履帯限定の大型特殊免許という選択肢
自衛隊独自のMOS資格も必須
免許とMOSを両方取得して初めて運転可能
個人所有のハードルは極めて高い
車検・重量制限と通行許可の壁
路面保護や追加改造でさらに困難
結論:操縦できるのは訓練を受けた自衛官のみ
まとめ:戦車は「乗り物」でも特別な存在

日本の戦車:主力は小型・軽量化した最新鋭10式戦車

戦車

富士総合火力演習で隊列走行する陸上自衛隊の戦車群(先頭は最新鋭の10式戦車)。

現行の主力戦車ラインアップ

まず、日本国内で現在運用されている主な戦車について見てみましょう。

陸上自衛隊では、74式戦車(通称ナナヨン、1970年代導入)、90式戦車(通称キュウマル、1990年代導入)、そして最新鋭の 10式戦車(ヒトマル、2010年代導入)の3種類が主力として活躍しています。

特に10式戦車は2010年度に制式採用された最新型で、従来の戦車に求められる高い攻撃力・防御力に加え、小型・軽量化や低コスト化、将来の拡張性まで追求して開発された、非常に先進的な戦車です。

10式戦車の機動力と軽量化

従来、戦車は世代が新しくなるごとに大型・重量化しがちでしたが、10式戦車は全備重量約44トンと比較的軽量で、70km/h以上の高速走行が可能になるなど機動性も高められています。

この機動力向上と軽量化により、全国の主要な橋梁の約84%は10式戦車が通過可能とも報じられています。

戦車もまた時代に合わせて進化を遂げており、日本の戦車は近年よりコンパクトかつ高性能なものへと進化しているのです。
小型・軽量化された10式戦車は、高い機動力と攻撃・防御性能を両立しています。

世代交代と10式戦車の高度化

なお、10式戦車の名称「10」は平成22年度(西暦2010年)に制式化されたことに由来します。

74式や90式も、それぞれ制式採用年の下二桁から名付けられました。

こうした戦車の世代交代に伴い、旧式化した戦車(例:61式戦車など)は順次退役・更新されてきましたが、2020年代現在でも74式戦車が一部で運用されるなど、世代の異なる戦車が併用されています。

最新型の10式戦車は、3人乗り(車長・砲手・操縦手)で高度な射撃管制システムやC4Iシステムも備えた「第4世代主力戦車」とも評されており、まさに日本の技術の粋を集めた戦闘車両と言えるでしょう。

戦車を製造している国内メーカーはどこ?価格はいくら?

国内で戦車を製造するのは三菱重工業のみ

戦車を日本国内で製造しているメーカーは、実は一社のみです。

陸上自衛隊向け戦車を一貫して手がけているのは、三菱グループの大手重工業メーカーである三菱重工業です。三菱重工業は、他の重工メーカー(川崎重工業やIHIなど)と並ぶ日本最大級の機械メーカーで、古くから防衛装備品の研究・開発を行ってきた実績があります。

戦後初の国産戦車である61式戦車(1961年制式化)以降、74式、90式、10式といった歴代の日本製戦車の開発・生産を一貫して担当しており、防衛省への納入実績も豊富です。

戦車だけでなく装軌式の回収車橋梁架設車など関連車両の開発も手掛けており、重工業技術を通じて日本の国防を支えています。

最新鋭10式戦車の価格は約9億円台

では、その最新鋭10式戦車の価格はいくらぐらいするのでしょうか?

民生用の乗用車とは桁違いですが、公開された正式な車両価格は存在せず、調達費用などからの推計値のみとなります。

防衛省の予算資料等から推測するしかないのですが、一般的には1両あたり約9億~9億5,000万円程度と言われています。

実際、10式戦車は2010年度の調達費用から算出すると約9億5,000万円ほどとされており、この金額は他国の最新戦車と比べても遜色ない高額なものです(参考までに、米軍のM1エイブラムス戦車は1両数億円~、ドイツのレオパルト2A7で約8~9億円程度とも言われます)。

宝くじで10億円当たれば買えてしまう金額ではありますが、もちろん実際には一般人が戦車を購入することはできません。
陸上自衛隊の主力戦車「10式戦車」。国内で唯一戦車を製造する三菱重工業によって開発・生産された第四世代戦車で、1両あたり約9億円以上と推定されます。

なぜ一般人は戦車を買えないのか?

10式戦車

10式戦車

戦車はれっきとした「武器」(軍用車両)であり、たとえ資金があってもメーカーの三菱重工業が民間人に売ることはありません。

また、自衛隊が保有していた戦車も、用廃後はすべて解体処分される決まりで、払い下げ品として市場に出ることはないと防衛省は説明しています。

唯一考えられる道は海外からの中古戦車の輸入ですが、その場合も大砲の砲身を切断する・装填装置を不可逆的に使用不能にする等の措置を講じて「兵器として使用できない状態(いわゆるスクラップ扱い)」にしなければ、日本への輸入は認められません。

実際、NPO法人がイギリスから旧日本軍の九五式軽戦車を輸入した例はありますが、個人でこうした手続きを踏み、維持管理していくのは事実上不可能でしょう。

つまり戦車の個人所有・購入は日本国内ではほぼ不可能であり、「値段」の話もあくまで夢物語と言えそうです。

戦車の運転に必要な免許・資格とは?

90式戦車

90式戦車

戦車には大型特殊自動車免許が必要

戦車だからといって特別な「戦車専用免許」が存在するわけではありませんが、通常の車以上に厳しい条件が課せられています。

戦車は道路交通法上、「大型特殊自動車(大型特殊車両)」に分類されるため、まず大型特殊自動車免許が必要になります。

大型特殊免許とは、農耕用トラクターやブルドーザーなど特殊な車両を公道で運転するための免許区分です。戦車も履帯(キャタピラ)で走行する特殊車両の一種なので、例外ではありません。

履帯限定の大型特殊免許という選択肢

さらに戦車の場合、通常の大型特殊免許とは別に「大型特殊免許(カタピラ限定)」と呼ばれる限定付き免許でも運転できます。

これは履帯式車両に限定して運転を認める免許区分で、実際に陸上自衛隊の教習施設では履帯限定の大型特殊免許を隊員が取得しています。

いずれにせよ、公道で戦車を運転するためには大型特殊免許、いわゆる大特が不可欠です。

自衛隊独自のMOS資格も必須

さらに、戦車を含む自衛隊の車両を運転するためには、道路交通法上の免許に加えて、自衛隊内部で定められた「MOS」(Military Occupational Specialty)という特技資格を取得する必要があります。

陸上自衛隊では職種ごとに専門技能を認定するMOS制度があり、戦車の操縦手になるには機甲科のMOS(戦車操縦)に合格しなければなりません。

MOSには基本、初級、中級、上級と段階があり、それぞれ操縦できる範囲(例えば基本は教習車のみ、中級で部隊の戦車運用など)が決まっています。

免許とMOSを両方取得して初めて運転可能

  • 大型特殊自動車免許(または大型特殊免許<カタピラ限定>) – 戦車を公道で運転するために必要な一般免許区分
  • 陸上自衛隊の戦車操縦MOS資格 – 戦車を軍用車両(兵器)として操作するために必要な自衛隊内の資格
この両方を満たした陸上自衛隊員のみが、実際に戦車を運転できるというわけです。
陸上自衛隊の戦車乗員たるには、履帯付き車両用の大型特殊免許取得に加え、内部資格である「機甲MOS(戦車操縦手)」を修得する必要があります。写真は90式戦車。実際の砲身には使用不能にするための措置が取られることもあります。

個人所有のハードルは極めて高い

74式戦車

74式戦車

では、仮に大型特殊免許を持っている一般の人が、兵器としての戦車を運転することはできるのでしょうか?

結論から言えば、現実的にはほぼ不可能です。

というのも、前述のように戦車そのものを個人で所有できないことに加え、たとえ何らかの形で非武装化された戦車(戦車型車両)を入手したとしても、公道を走行するハードルが非常に高いからです。

車検・重量制限と通行許可の壁

まず、公道を走る車両は道路運送車両法に定められた保安基準に適合させる必要があり、いわゆる車検に合格しなければなりません。

戦車の場合、方向指示器やブレーキランプ、前照灯、バックミラーといった保安装備は一応備わっています(自衛隊車両には法律に従ってウインカーやライト、ミラーが取り付けられています)。

しかし、最大の問題はその重量です。10式戦車でも約44トン、90式戦車に至っては50トン近くあり、一般的な道路はもちろん、橋梁や舗装への負荷が甚大です。

実際、日本の道路には重量指定道路といって「25トン以上の車両通行禁止」の規制がある区間が存在し、戦車の重量では通行できない道路も多くあります。

仮に車検を通して公道走行が理論上可能になったとしても、こうした重量制限を考慮して事前に綿密なルート策定をしなければなりません。

陸上自衛隊が訓練などで戦車を公道走行させる場合も、路面が丈夫な道路を事前に調査し、国土交通省への通行許可を得た上で運行計画を立てているのです。

路面保護や追加改造でさらに困難

さらに、戦車が舗装路を走る際には履帯(キャタピラ)にゴムパッドを装着して路面を傷つけないよう配慮する必要があります。

これらすべての条件をクリアして初めて戦車の公道走行が実現しますが、現実にはこうした運用が許されているのは自衛隊など公的機関のみです。

一般の愛好家が個人的に戦車を走らせることは、法律上不可能ではないにせよ、必要な車両改造や各種許可取得、維持費等を考えると事実上不可能と言ってよいでしょう。

結論:操縦できるのは訓練を受けた自衛官のみ

実際、陸上自衛隊の駐屯地周辺などでは、演習場への移動のため戦車が公道を走る光景に出会えることがあります(例:北海道千歳市、大分県玖珠町などでは駐屯地~演習場間を戦車が公道移動することがあり、自治体のウェブサイトで運行予定が公開されています)。

しかし、一般人が操縦席に座って戦車を運転する機会は皆無と言ってよいでしょう。戦車の運転は、日々訓練を重ねて資格を取得したプロの自衛官だけに許されたものなのです。

まとめ:戦車は「乗り物」でも特別な存在

戦車のメーカーや価格、運転に必要な免許や資格、公道走行の可否について解説しました。

戦車は自動車の一種ではありますが、その製造は三菱重工業のみが担う特殊な分野であり、価格も数億円単位と桁外れです。

また、運転には大型特殊免許こそ必要なものの、それ以上に軍内部での専門資格(MOS)が必須であり、一般の人が運転することはほぼ不可能と言える代物です。

たとえ戦車の外観をした車両を手に入れても、公道を走るには法律の壁が高く立ちはだかります。

とはいえ、戦車は多くの人にとってロマンをかき立てる存在でしょう。

模型やゲームの世界で戦車に思いを馳せるファンも多く、「いつか本物に乗ってみたい」と夢見る向きもあるかもしれません。

現実にはその夢を叶えるのは極めて難しいですが、陸上自衛隊のイベントなどで戦車の展示走行を見学したり、体験搭乗イベントに参加したりすることはできます。

戦車の運用を陰で支える自衛官たちの努力にも思いを馳せつつ、安全な場所でその迫力を楽しむのが良さそうですね。
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