【プロ徹底解説】ゴルフ7をおさらい!フォルクスワーゲン ゴルフTDIは完熟されたクルマ?

ゴルフ7 TDI 萩原文博

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ドイツ本国では次期モデル“ゴルフ8”が登場した中、日本では販売中のフォルクスワーゲン・ゴルフ7にようやくディーゼルエンジンが追加された。ここのところ欧州ではディーゼルエンジンに対する風当たりが強くなってはいるものの、ディーゼルエンジンへの人気は根強いのも確かだ。今回追加された2.0ℓ直4ディーゼルターボエンジンは、いわばフォルクスワーゲンの主力エンジンの一つであり、ゴルフ7の主力エンジンともなっていた。今回は熟成領域に入ったゴルフ7「TDI」の出来映えを考えてみた。

文・会田 肇/写真・萩原文博

会田 肇|あいだ はじめ

1956年、茨城県生まれ。大学卒業後、自動車雑誌編集者を経てフリーとなる。自動車系メディア等でカーナビをはじめとする分野を取材、執筆に従事する一方で、ビデオカメラやデジタルカメラの批評活動を積極的に続けている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。

会田 肇
Chapter
モデルチェンジする前に、現行型ゴルフをおさらいしてみよう
現行型ゴルフの内装は派手ではないが地味でもない。確かな質感の高さ
現行型ゴルフでお買い得なのはマイスター
現行型ゴルフの不満点とは
現行型ゴルフのディーゼルエンジンはトルク十分でストレスを感じさせない
シフトスケジュールが絶妙のDSGは走って楽しい2ペダルMT
現行型ゴルフのサスペンションセッティングとボディ剛性は熟成の域に達している

モデルチェンジする前に、現行型ゴルフをおさらいしてみよう

今回試乗したのは、ディーゼルエンジン搭載モデルであることを示す「TDI」のバッヂをつけた、そのゴルフTDIのトップモデル「TDI Highline Meister」だ。ゴルフの基本形でもある4ドアハッチバックで、ボディサイズは全長4265mm×全幅1800mm×全高1480mmで、 ホイールベースは2635mm。

ややワイドに振ったことで安定感のある落ち着きも醸し出し、嫌味がない端正なデザインは眺めていて安心感があるスタイルだ。逆にそれが“没個性”と取られることもあるが、幅広い人に受け入れられることを最大のテーマとしているゴルフだけに、の安心感を抱かせることはきわめて重要だったとも言えるのだ。

現行型ゴルフの内装は派手ではないが地味でもない。確かな質感の高さ

内装も特に際立った印象はない。とはいえ、内装は手に触れる一つひとつの質感が高く、プラスチッキーな印象を受けることが多い国産車と比べると雲泥の差。
シートも本革で、地味なデザインの中にもクォリティの高さは十分に伝わってくる。価格が391万円と、この手のクルマとしてはかなり高い印象だが、この質感の高さは誰もが納得がいくレベルにあると言っていいだろう。シートは本革を採用するもサポート性が高く、カチッとした収まり具合は長距離でも疲れにくそうだ。機能面ではデジタルメーターやインフォテイメントシステム「Discover Pro」を搭載し、そこには駐車支援システム「Park Assist」など先進テクノロジーの数々が標準装備されている。
荷室は、容積としてはまずまずといった感じだが、奥行きはあまりない印象。リアシートを倒した際もあまり広さは感じない。一方で、6:4分割可倒式の後席には中央部に貫通できる機能が備わっていて、長尺物を積む際に重宝する。デッキボードの高さも2段階となっていて、用途に合わせた使い分けができるなど小技が効いている。

「TDI」には大きくコンフォートラインとハイラインの二つに分けられ、それぞれに“マイスター”仕様が用意されて都合4つのラインナップとなる。

現行型ゴルフでお買い得なのはマイスター

お買い得と思われるのはこのマイスターで、純正ナビゲーションシステムである「ディスカバープロ」と、メーター類を12.3インチディスプレイに表示する「デジタルメータークラスター」が加わる。今どきカーナビは必須アイテムだし、デジタルメーターは近未来を感じさせる魅力的な装備。
17インチアルミホイール
この二つの追加装備は、マイスターの購入動機として大きな要素ともなるはずだ。さらにマイスターでは、コンフォートラインが足まわりを16インチから17インチにアップ、ハイラインでは専用デザインの17インチホイールが組み合わされる。また、ハイラインは内装が本革となり、スポーツシートはヒーター、パワーランバーサポート(運転席のみ)まで備えた贅沢なパワーシートとなる。その意味ではマイスターはかなりお買い得な仕様となっていると言えるだろう。
また、マイスターには、パークディスタンスコントロールやパークアシストを装備される。前者は前後の障害物を検知して警告して状況次第でブレーキまでかけてくれるは安心感を生み出す装備だし、後者は駐車時のステアリング操作を自動で行うなどを標準で装備するのも大きなポイントだ。

ただ、パークディスタンスは日常使いでありがたい親切装備ともいえるが、パークアシストは使いこなすのにやや慣れが必要だ。特に交通が混雑した街道沿いで使うのはちょっと厳しい。この機能を実行するにはギアをリバースに入れ、速度調整をする必要はあるものの、目の前でくるくるとステアリングが回転する動作は見ていて楽しいし、ちょっよした未来感を味わうにもいいかもしれない。

現行型ゴルフの不満点とは

残念なのはカーナビ機能も含むディスカバープロの使い勝手の悪さだ。すべてをタッチ操作としたことで、操作する際はすべて画面を見ながら行う必要がある。音量やトラックサーチはステアリングから行えるものの、フリック操作などスマホライクとしたことが運転中の操作をスポイルさせてしまっているのだ。

加えてカーナビの目的地検索は使い勝手が悪いことこの上なし。基本をスマホと連携させてオンライン検索することを前提としているため、仮にこれをつながない時は思うように目的地が探せない。しかもガイドも何もない状態で音声操作で「オンライン施設検索」というコマンドで音声検索を起動させる必要があるのだ。車両の設定や情報表示もすべてここで行われるため、カーナビだけを取り替えるワケにもいかないし、クルマの出来は良いのにここは残念で仕方がない部分だ。

現行型ゴルフのディーゼルエンジンはトルク十分でストレスを感じさせない

搭載されたエンジンは、VWの最新ディーゼル「EA288型」。環境性能を重視した設計で、ディーゼルエンジンを搭載するに当たっての遮音・防音もガソリン仕様よりしっかりやっている印象を受ける。エンジンをかければ車外では明らかにディーゼルとわかる音が響くものの、車内に入ればほぼ気にならないレベル。


走り出しても十分なトルクを発生し、街乗りから高速域まで満足いく走りを実感できる。ただ、低回転時のトルクはそれほど太さは感じず、この辺りはライバルと比べてやや物足りなさを感じるところ。とはいえ、アクセルを踏み込まず、ゆっくりと走っていても7速DSGが細かくシフトアップしていく。それでいて走りにストレスを感じさせないのはさすがと言う他はない。
特に素晴らしいと感じるのが高速での走りだ。100km/hで巡航しているとエンジン回転はわずか1500rpmほど。しかも、アクセルを踏み込めば強烈なトルクと共に力強く速度を上げていく。

シフトスケジュールが絶妙のDSGは走って楽しい2ペダルMT

国産車のCVTエンジンに慣れた多くの人にとって、この感覚はまさに感動もの。シフトスケジュールもよく練られていて、勾配のある道路では最適なギアを選んでくれるし、パドル操作で手動で操作してもほぼラグなく切り替える。ATとしてイージーな走るにも対応できるし、パドルでのMTな走りも両方を楽しめる。もはやDSGは走って楽しい“2ペダルMT”と表現してもいいのではないだろうか。

現行型ゴルフのサスペンションセッティングとボディ剛性は熟成の域に達している

サスペンションの乗り味も相当にハイレベル。カチッとした剛性の高いボディとの組み合わせはまさに熟成納涼意気を感じさせるもの。この乗り味が安心感につながるのだ。正直、ディスカバープロの使い勝手の悪さがなければ、文句なしの仕上がり。ゴルフ8は通信ユニットを標準で装備した最新インフォティメントに仕上がっていると聞く。そういう意味でもゴルフ8には大いに期待したいところだ。
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