ホンダ シビックタイプRのFF最速記録がゴルフに破れる!なぜゴルフは勝つことができたのか?

シビックタイプR

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「ニュルブルクリンク北コースFF量産車世界最速!」という売り文句を引き下げて、日本市場でも750台の限定販売が数ヶ月で完売したホンダのFK2型シビックタイプRですが、そのニュル最速タイムがついに破られました!しかしその裏にはニュルのちょっとした事情が?

*2019年時点の情報です
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多くの自動車メーカーが目指すニュルブルクリンク北コースとは?
シビック タイプR、ついにゴルフに最速の座を譲る!
ニュルブルクリンクちょっとした裏事情と、期待されるライバルの逆襲

多くの自動車メーカーが目指すニュルブルクリンク北コースとは?

ドイツのラインラント=プファルツ州アイフェル地方のニュルブルクリンクにサーキットが解説されたのは1927年のことです。

コース全長が20.832km以上におよぶ大規模な北コースと、5.1kmの小規模なGPコースの2つで構成されており、第二次大戦前に当時のナチスドイツによって大規模改修を受けた北コースでは、第二次大戦の戦前・戦後を通じて、幾度かの改修を経ながら、さまざまなレースや、自動車メーカーによるテスト走行が行われてきました。

その最大の特徴は、世界屈指とも言われる過酷なレイアウトで、コース全体では300mもの高低差と多数のブラインドコーナー、ダウンフォース不足だと容易にジャンプしてしまうスポットがある上に埃っぽく波打つ路面、それでいて全体では平均スピードが高い高速サーキットなのにエスケープゾーンが狭い、など数え上げればキリがありません。

どちらかと言えば「モータースポーツのためのサーキット」というよりも、「閉鎖された公道」とでも呼んだ方がいい悪コンディションが特徴という無茶苦茶なサーキットで、自動車メーカーは公道最速を証明するためによく利用しています。

中でも有名なのは「ニュルブルクリンク24時間レース」で、普通のサーキットでは激速のはずのレーシングカーやスポーツカーが、何の変哲も無い大衆車に容易に抜かれるほどの波乱に展開で知られています。

具体的には、NISMOがR32スカイラインGT-Rで参戦していた時代には、特に夜間ステージで「俺今スズキのカルタスに抜かれた!」「俺なんかさっきミニクーパーに…」とドライバーが勝手の違いに大苦戦するほどで、R33スカイラインGT-Rでの参戦時代には、ラストラップでエンジンブローしたNISMOのGT-Rがリタイアするかというところを、後ろからプライベーターのコンパクトカーに押されてゴールするという劇的なシーンもありました。

それだけ過酷なコースなだけに、ニュルを走るドライバーやメーカーには奇妙な一体感や熱いライバル関係があり、現在でも多くのメーカーが「最速」の座をかけてニュル詣でを続けているのです。

シビック タイプR、ついにゴルフに最速の座を譲る!

そんなニュルの北コースで最新のホンダ FK2シビックタイプRが「7分50秒63」というラップタイムを叩き出し、「FF量販車最速」の座についたのは2015年3月の事。

本格的スポーツカーであるBMWのM4(7分52秒)などより、速いタイムなのですから大したもので、早速「ニュル最速」の名と共に大宣伝を行ってFK2シビック タイプRは大人気となったわけですが、それから1年以上たった2016年5月、ついにそのタイムが破られました。

新たにFF量販車最速の座に着いたのはフォルクスワーゲン ゴルフの新作、GTIクラブスポーツS。

ゴルフGTIの登場40周年を記念して世界400台限定で生産される特別なモデルで、外観はほぼ普通のゴルフ GTIクラブスポーツと大差ありませんが、軽量化されたボディに310馬力/38.7kgf•mを発揮する2リッター4気筒TSIターボエンジンが搭載されています。

このエンジンからしてレース用のゴルフ GTI TCRに搭載されていた、市販車用とは異なるレーシングエンジンをデチューンしたもので、これを車両重量1380kgのFK2シビック タイプRより軽い1360kgのボディに搭載したわけですが、3ドアとはいえ後席すら取り外して実用性をカットした特別な軽量マシンですから、あくまで実用車として登場したFK2シビック タイプRにはちょっと分が悪いところ…。

そのゴルフ GTIクラブスポーツSがニュル北コースで叩き出したタイムは「7分49秒21」と、FK2シビック タイプRから1秒以上も縮めたのでありました。

ニュルブルクリンクちょっとした裏事情と、期待されるライバルの逆襲

ちなみに、このゴルフの新記録にはちょっとした裏事情があります。

FK2シビックRが最速ラップを叩き出した直後に行われた「ニュルブルクリンク24時間レース」の決勝で、参戦していた日産 GT-R GT3の車体が浮き上がって観客席に突入、観客1名が巻き添えになって死亡するという事故があったのです。

それを機会にニュル北コースの安全性に対する深刻な疑問が改めて表面化し、2015年6月にはコース内での速度規制が敷かれるなどしてレースのみならず自動車メーカーによる最速アタックも禁じられてしまったのでした。

その後同年8月には速度規制を解除するためにコースの安全性を確保する改修計画が発表、安全用のフェンスやガードレールが増設された他、ジャンピングスポット解消のため一部で再舗装が行われるなどしたのです。

その工事が終わってニュル北コースの速度規制が解除されたのは2016年4月2日のこと。

早速、自動車メーカーによる「最速アタック」が再開され、今回のゴルフ GTIクラブスポーツSの記録もその中で叩き出されたわけです。

つまり、昨年3月のFK2シビック タイプRと同じ条件で出された記録では無いわけで、コースレイアウトそのものは変わらないものの、ジャンピングスポットが減った影響は少なくないでしょう。

これを受けてFFスポーツカーを生産しているメーカーが「最速奪還」に向けて動き出すのは間違い無いところで、FK2シビック タイプRを擁するホンダはもちろん、それ以前に最速だったメガーヌ RS.275トロフィーRを作っていたルノーなども黙っていないでしょう。

いわば今回はFK2シビック タイプRの王座陥落というより、新舗装での最速記録樹立というべきイベントで、今後各メーカーが「新舗装のニュル北コース最速」を目指して熱い戦いを繰り広げる号砲に過ぎないとも言えるでしょう。

改めて新しい「ニュル北」で、どのメーカーが決定的な最速の座を手にするのか、しばらくは目が離せませんね!
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