トヨタ GRスープラ SZ-R・SZ 徹底試乗・解説!直列4気筒エンジンのA90スープラはスープラRZとはどう違うのか?
更新日:2024.09.09
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トヨタ GRスープラ SZ-R・SZ 徹底試乗・解説!直列4気筒エンジンのA90スープラはスープラRZとはどう違うのか?
17年ぶりに復活した、新型スープラには4気筒モデルが存在します。それがSZ-RとSZ、2つのグレードです。4気筒のスープラ。いったいそのテイストは、そして走りはどんなパフォーマンスを秘めているのでしょう。
文・斎藤聡 /写真・CarMe[カーミー]編集部
17年ぶりに復活した、新型スープラには4気筒モデルが存在します。それがSZ-RとSZ、2つのグレードです。4気筒のスープラ。いったいそのテイストは、そして走りはどんなパフォーマンスを秘めているのでしょう。
文・斎藤聡 /写真・CarMe[カーミー]編集部
瞬間、セリカを思い出した。直列4気筒エンジンのスープラ
「新型スープラには4気筒モデルが存在する」、というのはちょっとした驚きでした。スープラのルーツであるセリカXXが、直列6気筒エンジン搭載モデルとしてセリカから派生しスープラになったことを思い起こせば、4気筒搭載モデルはスープラではなくセリカではないかとも思えるからです。
もっともそんなところに目くじらを立てるのは、その当時に青春だったオジサン世代だけかもしれません。とにもかくにもスープラが復活し、BMWとの共同開発(BMW社との包括的提携)によって作り出されたスポーツカーは相当に出来が良いということですから、ここはフラットに4気筒の実力を試してみたいと思います。
RZとは違う、SZ-RとSZの走り味のテイスト
搭載するエンジンは、2L直列4気筒DOHCツインスクロールターボで、2台は各々でチューニングが異なり、SZ-Rは258PS/400Nmを発揮、SZは197PS/320Nmを発生します。
SZ-RはRZの装備をほぼそのまま搭載しています。エンジンこそ2ℓ直4ですがモンロー社製の電子制御サスペンション=アダプティブバリアブルサスペンションシステムとアクティブディファレンシャルが装備されています。タイヤサイズも前255/40R18、後275/40R18 と偏平率とホイールサイズが異なりますが幅は同じです。
実際に走らせてみると、その印象はRZとは異なります。もっとも大きな違いはフロント周りの重さ感です。重量バランスはいずれも50対50ということですが、明らかにSZ-Rのほうがフロント回りが軽くノーズの動きが軽快です。
そして残ノーズの軽さがワインディングロードでは軽快さとなって作用します。カーブに向けてハンドルを切り出した時のノーズの動きが軽くスーッとクルマが向きを変えてくれます。向き変えながらコーナーの中にグイグイ入っていく感じがあります。
タイヤがRZはミシュランのパイロットスーパースポーツ、SZ-RがブリヂストンのポテンザS001という違いもあるかもしれません。純正装着のこのタイヤに限って言えば、スーパースポーツのほうがグリップの絶対値が高く、グリップの高さからくる安定性が高いようです。ポテンザはグリップの絶対値は劣るものの、ケース剛性の高さからくるしっかり感と初期応答の良さによる軽快さが感じられたからです。
FRスポーツカーとしてみた時、SZ-Rはこれもアリ、と思わせるバランスの良さと軽快さがあります。
2Lですが最大トルクは400Nmもあり、しかも1,550回転から発生しますから、スポーティに走らせていればいつも最大トルクが発揮できる状況にあります。アクセルを踏み込んだ瞬間フワッとトルクが膨らみ迫力のトルクでクルマをグイグイ加速してくれます。
さすがにRZに感じたようなパワー(トルク)の骨太感はありませんが、決して貧弱とは感じないし、軽快な操縦性とパワーが上手くバランスしているように感じました。
ノーズの軽さが作り出す軽みのある乗り味は、ザ・スープラであるRZとは違った楽しさ操縦の面白さがあります。
SZは197馬力/320Nmと、SZ-Rと比べても少々見劣りします。トヨタとしてはベース車的な位置づけで、サスペンションは電子制御が採用されていないし、リヤデフもオープンデフ(電子制御や機械式LSDなし)で、購入後にサスペンションやディファレンシャルのLSDなど様々手な部分に手を加えられるようなクルマなのだそうです。
少々本題から外れますが、じつはスープラは、想像以上にチューニングを念頭に置いてエクステリアデザインが行われています。後付けではなかなか冷却が難しいエンジン、インタークーラー、ミッション、ブレーキなどに、さらなる冷却が効くようにボディ各所にエアインテークやアウトレットが設けられているのだろそうです。
もしかしたら先代80スープラそうであったように、トヨタのテストドライバーの訓練車としてニュルブルクリンク練習車としてモディファイができるように作られているのかもしれません。
実際エアインテークやアウトレットの位置は、開発段階でテストを繰り返し、より効率のいい位置に配置されているのだそうです。ギミックじゃなかったんですね。そんな話を聞くだけでスープラがさらに魅力的に見えてきます。
スープラの素性の良さが見えるSZ
さて、では電子制御パーツを付けないスッピンのスープラはいったいどんな走りを見せてくれるのでしょう。
走りの印象は期待以上でした。一台のスポーツカーとして楽しいし、運転を覚えるための練習車としても良くできています。まあ、練習用としてはだいぶ高価ですが、そのくらいの素性の良さを感じることができました。
SZはタイヤサイズがほかの2グレードに比べ細くなっています。といっても、フロントタイヤは225/50R17、リアタイヤは255/45R17というサイズですから、一般的なタイヤサイズでいうと決して細くはありません。
ただ、このタイヤサイズがさらに軽快でマイルドな乗り味を作り出しているようです。路面からの突き上げや、荒れた路面の凹凸を前50偏平、後ろ45偏平のタイヤが上手に吸収してくれ、電子制御とは異なるソリッドだけれど、角の取れた乗り心地を作っています。操縦性の面でもタイヤのしなりが適度にあるので、敏感さがなく限界領域近くのグリップの様子もつかみ取りやすいです。
そもそも電子ディバイスの付かないSZの走りは思いのほか軽快でしかも素直。不思議なくらいマイルドで、ショートホイールベースからくる操縦性の神経質さは全く感じられませんでした。
スッピンの出来の良さを実感することができました。確かにコーナーでの限界スピードはSZ-RやRZに比べれば高くないし、加速性能も劣ります。けれども実際に山道を走らせてみると、サスペンションとタイヤのグリップと、パワーが巧い具合にバランスしていて、これがビックリするくらい楽しいのです。サイズ感はだいぶ違いますが、マツダロードスターに乗っているのに近い感覚があります。
速さではなく純粋に運転することの面白さとかコントロールする楽しさという点では一歩もSZ-RやRZに劣らないと感じました。むしろ練習&お楽しみ用にSZが欲しいと思えるほどでした。
スープラの4気筒モデルに試乗してみると、改めて6気筒エンジンを積むRZは、ザ・スープであるのだなと思いました。その一方で4気筒のスープラも、4気筒エンジンの軽さからくるフットワークの良さはRZとは別の愉しさがあると感じました。とくにSZはスープラのクルマの作りの良さをダイレクトに実感できるモデルで、モディファイのベース車としてももちろん良いのでしょうが、しばらく素のままで乗って、素性のいいFRスポーツカーの走りを楽しむのをお薦めしたくなります。令和に復活したスープラは、想像以上に楽しく魅力的なスポーツカーに仕上がっていました。
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斎藤 聡 | SATOSHI SAITO
モータージャーナリスト。車両のインプレッションはもちろん、タイヤやサスペンションについて造詣が深く、業界内でも頼りにされている存在。多数の自動車雑誌やWEBマガジンで活躍中。某メーカーのドライビングインストラクターを務めるなど、わかりやすい解説も人気のヒミツ。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カーオブザイヤー選考委員。