温故知新…アルピーヌ・ルノーA110ベルリネットと新生アルピーヌA110を乗り比べ【前編】

昨2018年6月、日本国内においても先ずは初回限定版の「プルミエール・エディション」からリリースされた新生アルピーヌA110は、あまりの人気ゆえにくじ引きで購入者が決められたことで話題を呼んだ。また同年末には、正規のカタログモデルたる「ピュア」と「リネージ」の国内販売も開始となり、ともに長いウェイティングリストができているという。

文・武田公実 / 写:S.Kamimura

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アルピーヌ・ルノーA110ベルリネット…ラリーシーンを変革させた名車
アルピーヌ A110…現代に復活した名作

当代最新のリアルスポーツカーである新生アルピーヌA110は、名作「アルピーヌ・ルノーA110ベルリネット」の精神とスタイルを、現代にセルフカバーしたモデルとも言えよう。

その「真価」と「進化」を探るために、オリジンたるアルピーヌ・ルノーA110(1970年型1600S)をさる個人オーナーから、そして復活版アルピーヌA110ピュアをアルピーヌ・ジャポンから借り出し、約半世紀の時代を隔てた二台の「A110」の比較テストドライブを行うことになった。

アルピーヌ・ルノーA110ベルリネット…ラリーシーンを変革させた名車

アルピーヌ A110(クラシック)

1962年から77年まで生産された「アルピーヌ・ルノーA110ベルリネット」は、第二次大戦後のフランスでは随一とも言えるスポーツカーブランド、アルピーヌの中でもさらに最高傑作と目されるモデルである。

南仏の地方都市、ディエップのルノー販売代理店主ジャン・レデレが1955年に興したアルピーヌは、ルノー量産車のコンポーネンツを活用したスポーツカーを製作するというスタイルを、復活後の現在に至るまで貫いている。

アルピーヌ A110(クラシック)

創業から1995年にいったん歴史の幕を閉じるまでに製造されたモデルは、いずれもエンジンをリアに置くRRモデル。ルノー「4CV」をベースとする「A106ミッレ・ミリア」に始まり、後継車「ドーフィン」をベースとする「A108」。

そして革新的なRRベルリーヌ「ルノー8(R8)」をベースとしたのが、A110ベルリネット。自社製のバックボーン式フレームにR8用の前後サスペンションと4輪ディスクブレーキを移植し、FRPの美しいボディを組み合わせたモデルだが、その成功の鍵は、なんといっても「ル・ソルシェ(魔術師)」ことアメデ・ゴルディーニがチューンした高性能エンジンを得たことだろう

1965年、A110-1100ゴルディーニ(1100G)からスタートしたアルピーヌとゴルディーニの伝説的コラボレーションは、ラリー活動で一気に開花することになるのだ。

アルピーヌ A110(クラシック)

生来、伊「ミッレ・ミリア」などの長距離ロードレース用GTから発展してきたA110が、実はラリーマシンとして非凡な資質を持っていることに気付いていたレドレとゴルディーニは、さらに高性能な「A110-1300S」を開発。先ずは国内ラリーから本格的に総合優勝を目指して参戦して、予想どおりの好成績を挙げる。しかし、ポルシェ911など強力なライバルが居並ぶ国際ラリーに撃って出るには、依然としてパワー不足であることが露呈、そこで1.6リッターユニットを搭載した「1600S」を製作し、WRCの前身である欧州ラリー選手権(ERC)に投入することになった。

彼らの目論みはみごとに効を奏し、素晴らしい速さと耐久性を兼ね備えたA110は、1971年シーズンにはERCで初の全欧タイトルを獲得。さらに1973年シーズンには伝統の「モンテカルロ・ラリー」優勝を皮切りに、この年から開幕したWRC選手権製造者部門タイトルを制覇。ついに、世界ラリー界の頂点を極めるに至った。

そしてルノー・アルピーヌA110の活躍は、長らく耐久性と長距離の走破能力が最大の勝因とされていた国際ラリーの局面を、スピード至上主義へと一変させてしまったのである。

アルピーヌ A110…現代に復活した名作

アルピーヌ A110 ピュア

一方、車名に「ルノー」が入らないニューカマー、アルピーヌA110は、2013年に設立が発表された新生アルピーヌ社の第一作。当初は英国ケータハムとの提携で、のちにA110となるモデルも共同で開発されると公表されたが、翌年にはコラボを解消。ルノーおよび、往年のアルピーヌがあったディエップを拠点とする「ルノー・スポール」とともに、すべてフランスで開発することになったといわれている。

紆余曲折ののち、2017年に晴れてワールドプレミアとなった新生アルピーヌA110は、運動性能や空力性能の面でも現代最新のスポーツカーをリードする存在となるべく、オリジナルA110のリアエンジン+後輪駆動からミッドシップ+後輪駆動に変更されたのが最大のトピックだろう。

アルピーヌ A110 ピュア

その一方で、アルミ製プラットフォームとアルミボディに加え、アルミ製サスペンション、世界初となる電動パーキングブレーキを内蔵したブレンボ製リアブレーキキャリパーに代表される軽量パーツの採用により、車両重量は現代のスポーツカーでは充分に「ライトウェイト」と言える1110kg(ピュア)/1130kg(リネージ)に収めたのは、歴史的傑作「A110」の名跡を継承するに相応しいと思われる。

そして、リアアクスルの前に搭載されるパワーユニットは、ルノー・日産アライアンスが新たに開発した総アルミ製の直列4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボ「M5P」型。かつてのアルピーヌ/ゴルディーニ直系となるルノーのモータースポーツ部門で、長らくF1GPなどのレース活動も支えてきたルノー・スポールがチューニングを手掛け、最高出力で185Kw(252ps)/6000rpm、最大トルクでは320Nm/2000rpmを発生する。

アルピーヌ A110 ピュア

その結果として得られたパワーウェイトレシオは4.4kg/ps。独・ゲトラグ社製の湿式7速DCTを組み合わせて、0-100km/h加速タイムは現代スーパーカーにも匹敵する4.5秒を達成したという。

新生A110には、持ち前の軽さと俊敏性を前面に押したベーシックバージョンの「ピュア」と、レザーシートなどでGTカーとしてのキャラクターも加味した「リネージ」の2グレードがカタログモデルとして設定。今回は、起源であるルノー・アルピーヌA110との対比にもより好適とも思われる、ピュア仕様を連れ出すことになった。