9年乗ったオーナーだったからこそわかる魅力と苦労。初代(NA)ロードスターを振り返る。オーナーレビュー

マツダ ユーノス ロードスター NA 鈴木ケンイチ

これまで愛車として、マツダのロードスターを20年以上かけて乗り継いできた。中古車の初代マツダロードスター(NA)、初代ロードスターをベースにしたメーカーカスタムのM2 1001、NR-Aにてワンメイクレースにも参戦した、2代目(NB)ロードスター。そして現在も所有する2代目(NB)ロードスターの最終型だ。この長いロードスターのオーナーライフのきっかけとなったのが、最初に出会った初代(NA)ロードスターであった。どんなクルマなのかを、ここで改めて紹介したい。

文/写真・鈴木 ケンイチ

鈴木 ケンイチ

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)

鈴木 ケンイチ

あえて、考えてみる。ロードスターの実用性について

初代(NA)ロードスターは世界的な名車のひとつだ。それを否定する人は少ないだろう。しかし、30年前のスポーツカーを令和時代に走らせるとして考えると完璧なわけではない。いくつかの覚悟が必要だ。

まず、今どきのスポーツカーと比べればパワーがない。ハッキリ言って遅い。1.6リッターのB6エンジンはカタログ数値でも最高出力120馬力。1.8リッターのBPエンジンでも130馬力。実際には100馬力出てない個体も多いはずだ。これらのエンジンは、NAロードスター以前から様々なマツダ車に使いまわされていた汎用エンジンがベース。スポーツカー専用ではないので、同時代のスポーツカーに比べても非力だ。コーナリングの限界も低く、最後は背負い投げされるような動きでスピンする。

万一、クルマが横転や転倒するとAピラーは簡単に折れてしまうので、サーキット走行などもスポーツ走行を望むなら、ロールバー装着が必須となる。冷却能力も低いので、サーキットを走るなら、高性能なラジエターへの交換などの対策が必要になる。

また、エンジンのスロットルの開閉は、アクセルペダルから続くワイヤーで行う。パワステは油圧だし、横滑り防止装置などの電子デバイスもほとんどない。ヘッドライトの照度も低く、夜間は非常に暗い。クラシックカーのようなものだ。さらにシートの作りが良いとは言えず、ペダルの位置も適正ではなく、左にオフセットしている。気になる人はシート交換を推奨する。

室内の快適性はお世辞にも良いとは言えない。エンジン音もロードノイズも大きく室内に進入する。また、ビニール製の幌は遮音性能だけでなく、断熱や保温性能も低い。夏は暑いし、冬は寒い。後方視界も、いまひとつ。

ただし、幌の劣化がなければ雨漏りの心配はないが、オープン走行時の風の巻き込みも、現代車と比べれば大きい。髪の長い人は帽子を着用してドライブされることをお勧めする。

そして最終型でも1997年式。つまり20年以上の昔だ。機械類のほとんどが故障する可能性があるし、内外装もそうとうにくたびれているはず。これから乗っていこうというのであれば、「様子を見ながら」「修理しながら」というカーライフになるだろう。

令和に突入した今、もし20世紀の名車を手に入れるならば早めに購入を

初代(NA)ロードスターに、これから乗ろうと考えて探せば、今なら100万円以下の車両も販売されている。古いクルマなので乗りっぱなしというわけにはいかないはずなので、必ず修理が必要になるだろう。

しかし、古いのだから、苦労するのは当然のこと。この名車を普通の価格で入手できるのは、生誕から30年経った2019年頃が最後のチャンスかもしれない。なぜなら時が流れれば流れるほど、クルマの価格は上昇し、所有するのも難しくなる。今でいう1960年代の名車のようなプレミアム価格に、将来の初代(NA)ロードスターの価格がつり上がってゆくことは間違いないからだ。

欲しいと思うなら、なるべく早く手に入れることをお勧めしたい。

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