9年乗ったオーナーだったからこそわかる魅力と苦労。初代(NA)ロードスターを振り返る。オーナーレビュー

マツダ ユーノス ロードスター NA 鈴木ケンイチ

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これまで愛車として、マツダのロードスターを20年以上かけて乗り継いできた。中古車の初代マツダロードスター(NA)、初代ロードスターをベースにしたメーカーカスタムのM2 1001、NR-Aにてワンメイクレースにも参戦した、2代目(NB)ロードスター。そして現在も所有する2代目(NB)ロードスターの最終型だ。この長いロードスターのオーナーライフのきっかけとなったのが、最初に出会った初代(NA)ロードスターであった。どんなクルマなのかを、ここで改めて紹介したい。

文/写真・鈴木 ケンイチ

鈴木 ケンイチ

モータージャーナリスト。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。レース経験あり。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)

鈴木 ケンイチ
Chapter
初代(NA)ロードスターは、"おしゃれ"な雰囲気が購入の決め手。
ロードスターには、"カーライフ"を豊かにさせる様々な魅力があった
あえて、考えてみる。ロードスターの実用性について
令和に突入した今、もし20世紀の名車を手に入れるならば早めに購入を

初代(NA)ロードスターは、"おしゃれ"な雰囲気が購入の決め手。

初めてロードスターを手に入れたのは1990年代の中盤。まだ、初代のロードスターが現役であった時代だ。とはいえデビューから5年以上が過ぎており、中古車は100万円以下で買える状況であった。また、当時は、まだまだスポーツカーの人気が高く、シルビアや180SX、古いレビン/トレノ(AE86)、シビック、スカイライン、ランエボ、インプレッサなども買い物リストに挙げられた。
しかし、「スポーツカーは格好いいけれど、あまり本気すぎるのも大人げない」「速さを競うものではないオープンカーの方がおしゃれである」「リトラクタブルライトがまるでカエルの目のようで、ユーモラスで可愛らしい」という、いささか軟派な理由からロードスターを選んだ。

まだ自動車ライターとしては駆け出しで、自動車媒体以外の一般誌の仕事にも関わる当時の自分としては、ごく自然な考えであったと思う。個人的な思いとしては、最近のスポーツカーは走りばかりに傾倒しており、おしゃれ感などの、もう少し軟派な部分を軽視しているのが、人気低迷の理由ではないかと思うこともある。

ロードスターには、"カーライフ"を豊かにさせる様々な魅力があった

いささか軽薄なノリで選んだ初代(NA)ロードスターであったが、オーナーになって驚いた。「なんと良いモノを手に入れたのだろうか」と。

まず、オープン走行の爽快さに感動した。まさに百聞は一見にしかず。実際の体験してみないとわからない。屋根付きのクルマとは、まったく別の乗り物であった。古くから世界中の自動車メーカーがオープンカーを作り続けるのは、この爽快さを求めてのこと。それが、最も手ごろな価格で体験できるのが初代(NA)ロードスターであったのだ。
さらに、ドライバーの意思を忠実に再現するかのような“人馬一体”の走りも楽しい。「これがスポーツカーだ」と、ドライバーに教えてくれるかのようだ。1トン前後の軽量ボディに前後重量配分50:50、前後ダブルウィッシュボーンといった初代(NA)ロードスターの基本が、人馬一体の走りを実現させる。また、そうした基本がしっかりしているため、初代(NA)ロードスターは、街乗りやワインディングだけでなく、しっかりと手当をすればサーキットでの本格的スポーツ走行を行うことができる。走りに懐の深さがあるのだ。

また、実用性も意外とあった。室内空間はミニマムだが、トランクがしっかりと使える。2人で1泊2日くらいの旅行であれば問題なくこなせる。大きな荷物も運べないし、友人たちとわいわい旅行することも、暮れと盆に親と一緒に移動することもできない。しかし、年に数日あるかないかの不便に目をつぶれば、子供のいない夫婦、もしくは独身者であれば日常のクルマとして利用できるのだ。
そうこうしているうちに、ロードスターはカスタム用の部品が非常に多いことに気づいた。専門店も数多くあり、チューンナップして速さを磨くことから、ドレスアップ、実用性アップまで、星の数ほどのカスタムの提案があったのだ。しかも、部品の価格が安い。もともとNAロードスターは車両価格の低い大衆車で、しかもヒットしたからユーザーも多い。顧客が多いことで部品も安く提供できていたのだ。

しかも、そうしたカスタム用の部品の多くは、自分で取り付けることができた。なんと、ロードスターはオーナーが自らの手でメンテナンスを行うことも前提として開発されていたのだ。そのためボルト・ナット類の寸法は、ハンドツールの工具で扱えるモノに統一されていたし、純正の部品も手に入れやすかった。実際に、自分の手でブレーキパッド交換に始まり、サスペンション交換、クラッチ交換、サスペンションのブッシュの交換までを行い、大いに自動車の構造を知ることができたのだ。
さらにロードスター専門ショップに顔を出すうちに、走行会やミーティングといったイベントがあることも知った。オーナーズクラブも全国津々浦々に存在する。そこに顔を出せば、いい歳をした大人が、新しい友達を得ることができたのだ。こうした横のつながりが生まれるというのもロードスターの大きな魅力だ。

とても軽い気持ちで選んだ初代(NA)ロードスター。しかし、乗ってみれば、「オープン走行が爽快」「走りの懐が深い」「実用性もそこそこある」「カスタム・メニューが豊富」「自分でもイジれる」「イベントが多い」「オーナーの友達ができる」といったカーライフを充実させるため魅力が非常に多いことに気づいた。その結果が、20年を超えるロードスター人生となったと言えるだろう。

あえて、考えてみる。ロードスターの実用性について

初代(NA)ロードスターは世界的な名車のひとつだ。それを否定する人は少ないだろう。しかし、30年前のスポーツカーを令和時代に走らせるとして考えると完璧なわけではない。いくつかの覚悟が必要だ。

まず、今どきのスポーツカーと比べればパワーがない。ハッキリ言って遅い。1.6リッターのB6エンジンはカタログ数値でも最高出力120馬力。1.8リッターのBPエンジンでも130馬力。実際には100馬力出てない個体も多いはずだ。これらのエンジンは、NAロードスター以前から様々なマツダ車に使いまわされていた汎用エンジンがベース。スポーツカー専用ではないので、同時代のスポーツカーに比べても非力だ。コーナリングの限界も低く、最後は背負い投げされるような動きでスピンする。

万一、クルマが横転や転倒するとAピラーは簡単に折れてしまうので、サーキット走行などもスポーツ走行を望むなら、ロールバー装着が必須となる。冷却能力も低いので、サーキットを走るなら、高性能なラジエターへの交換などの対策が必要になる。
また、エンジンのスロットルの開閉は、アクセルペダルから続くワイヤーで行う。パワステは油圧だし、横滑り防止装置などの電子デバイスもほとんどない。ヘッドライトの照度も低く、夜間は非常に暗い。クラシックカーのようなものだ。さらにシートの作りが良いとは言えず、ペダルの位置も適正ではなく、左にオフセットしている。気になる人はシート交換を推奨する。
室内の快適性はお世辞にも良いとは言えない。エンジン音もロードノイズも大きく室内に進入する。また、ビニール製の幌は遮音性能だけでなく、断熱や保温性能も低い。夏は暑いし、冬は寒い。後方視界も、いまひとつ。

ただし、幌の劣化がなければ雨漏りの心配はないが、オープン走行時の風の巻き込みも、現代車と比べれば大きい。髪の長い人は帽子を着用してドライブされることをお勧めする。

そして最終型でも1997年式。つまり20年以上の昔だ。機械類のほとんどが故障する可能性があるし、内外装もそうとうにくたびれているはず。これから乗っていこうというのであれば、「様子を見ながら」「修理しながら」というカーライフになるだろう。

令和に突入した今、もし20世紀の名車を手に入れるならば早めに購入を

初代(NA)ロードスターに、これから乗ろうと考えて探せば、今なら100万円以下の車両も販売されている。古いクルマなので乗りっぱなしというわけにはいかないはずなので、必ず修理が必要になるだろう。

しかし、古いのだから、苦労するのは当然のこと。この名車を普通の価格で入手できるのは、生誕から30年経った2019年頃が最後のチャンスかもしれない。なぜなら時が流れれば流れるほど、クルマの価格は上昇し、所有するのも難しくなる。今でいう1960年代の名車のようなプレミアム価格に、将来の初代(NA)ロードスターの価格がつり上がってゆくことは間違いないからだ。

欲しいと思うなら、なるべく早く手に入れることをお勧めしたい。

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