ベントレー 新型コンチネンタルGTは圧倒的なまでの洗練ぶり

ベントレー コンチネンタルGT 試乗会

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先に言っておかねばならないが、筆者は「ベントレー」というブランドに格別の想いを抱いている。

今を去ること28年前、学校卒業後に初めて就いた仕事は、ロールス・ロイス/ベントレーのセールス担当者。

そして現在では、ロールス・ロイス/ベントレー専門の私設博物館「ワク井ミュージアム」のキュレーターとして、クラシック・ベントレーと身近に過ごす日々を満喫してきた。

そんな筆者にとって、新型コンチネンタルGTはさる2017年秋のフランクフルト・ショーにおいてワールドプレミアに供された時から、猛烈に魅力的なモデルとして映っていたのである。

文・武田 公実/写真・土屋 勇人

※ 2018年9月時点

武田 公実|たけだ ひろみ

かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。

武田 公実
Chapter
よりアイコニックになったプロポーション
圧倒的なまでの洗練ぶり
新型コンチネンタルGTはRタイプ・コンチネンタルの正統な後継車に

よりアイコニックになったプロポーション

2003年にデビューした初代から数えて三代目となった新型コンチネンタルGTは、新しいプラットフォームやベントレーでは初採用となる8速DCT、48Vアンチロールバー、最新世代のコネクティビティにアート的なインテリアなどの新機軸がふんだんに盛り込まれたニューカマーである。

しかし筆者を最初に魅了したのは、そのボディデザイン。過去のベントレーが製作した偉大なモデル「Rタイプ・コンチネンタル」の血脈が、歴代のコンチネンタルGTの中でも最も明確に受け継がれているかに見えたからである。
1952年に登場したベントレーRタイプ・コンチネンタルは、その名のとおり欧州大陸旅行を強く意識したグランドツアラー。当時の世界一贅沢なGTカーだったと言えよう。

なかでも名門コーチビルダー「H.J.マリナー」社が架装したプレーンバック・クーペは、空力特性をも意識した軽量アルミボディの効果で、当時としては超高性能スポーツカーの領域とされていた時速120マイル(約192km/h)の最高速度を実現。加えて、端正かつ流麗なボディスタイルで、今なお世界中のベントレー愛好家を魅了し続けている。
ベントレーにとっては歴史的アイコンであるRタイプ・コンチネンタルH.J.マリナー製クーペのデザインモチーフが、初代および二代目のコンチネンタルGTでも投影されてきたことは周知の事実だが、三代目となる新型ではこれまで以上に明確なものとなった。

その最大の要因は、新たに導入されたMSBプラットフォームであろう。従来型のプラットフォームはFFベースの4WDだったのに対して、MSBプラットフォームはポルシェ・パナメーラなどにも近いFRベースの4WD。それゆえフロントアクスルを前方に135mm移動した結果として、旧き良きRタイプ・コンチネンタルを思わせるロングノーズのプロポーションが完成するに至った。

しかし、新型コンチネンタルGTがRタイプ・コンチネンタルから受け継いでいるのがスタイリングだけではないことは、昨年秋のデビュー直後から一日千秋のごとく待ちわびてきたテストドライブによって判明することになるのだ。

圧倒的なまでの洗練ぶり

これまで筆者は、ワク井ミュージアム所蔵のベントレー「Rタイプ・コンチネンタル」をしばしば運転する特権に浴してきたが、そのたびに感心したのは1950年代初頭のモデルとしては特例的にソフィスティケートされていることである。

胸のすくようなパフォーマンスを持ちつつ、静粛性や乗り心地は高級サルーンに勝るとも劣らない。また、すべての操作は重いがナチュラルで、操縦性もバランスに優れたものと言える。そしてこの洗練性こそが、新型コンチネンタルGTがRタイプ・コンチネンタルから60余年の時を経て引き継いだ、最高の資質であるかと思われるのだ。

初代コンチネンタルGTは、FF由来のシャシー上に構築されたノーズヘビーな成り立ちゆえに不可避的にアンダーステアが強く、それを4WDの強力なトラクションでねじ伏せるような走りとなっており、それがある種の魅力ともなっていた。また前後トルク配分を40:60に変更した二代目でも、その基本的キャラクターが大きく変わることは無かった。

ところが、FR由来となるMSBプラットフォーム上に構築された新型コンチネンタルGTは、前後の重量バランスが大幅に向上。ロール角/ロールスピードともに緻密な制御を行う48Vアンチロールバーの効力も相まって、まるで良くできたFRスーパースポーツのごとく洗練されたハンドリングマナーを披露してくれる。

新型コンチネンタルGTはRタイプ・コンチネンタルの正統な後継車に

かくしてドラスティックな進化を遂げた新型コンチネンタルGTだが、現時点で正式リリース済みのモデルはスタンダードのW12版のみである。ただし、最新世代となったW12ツインターボエンジンは、先代W12から60psアップとなる635psをマーク。

0~100km/h加速3.7秒、最高速度333km/hというスーパーカー並みの高性能は、二代目の最高性能バージョン「コンチネンタルGTスピード」をも凌駕するものとなっている。

また上記のハンドリングマナーに加えて、8速DCTのレスポンシブな変速マナーなどに代表されるスポーツカーとしての資質を飛躍的に向上させつつも、同時に4人の乗員が快適に長距離移動することを可能とする、文字どおりの「グランドツアラー」であることは、歴代ベントレー・コンチネンタルの良き伝統を体現している。

つまりは、あらゆる面において60余年の時を経たRタイプ・コンチネンタルの正統な後継車となり得ていることが、今回のテストドライブで良く分かったのである。

単にスタイリングを継承しただけでなく、「世界最速・最高級のグランドツアラー」という、Rタイプ・コンチネンタルが1950年代に確立した哲学をも、卓越した洗練性によって体現することになった新型コンチネンタルGT。

あくまで個人的な想いではあるものの、この価格帯の超高級クーペとしては間違いなく「No.1」の一台と太鼓判を押してしまいたいのである。

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