ルノー 新型メガーヌR.Sは、乗り心地とハンドリングの完全両立!
更新日:2024.09.09
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いわゆる自動車ジャーナリストを生業としていると、試乗させていただくニューモデルの多くについて、実際にステアリングを握る以前からある程度の予想がつくようにも思い込みがちである。たしかに近年の新型車は概ね出来が良いので、ほぼ事前の予測どおりのインプレッションとなることも多いのだが、年に1、2台くらいは期待を大きく上回る魅力的なニューカマーが登場することもある。今回ご紹介するルノー・スポール(R.S.)の新型車「メガーヌR.S」も、その最たる一例と言えるだろう。
文・武田公実/Takeda Hiromi 写真・土屋勇人/Tsuchiya Hayato
文・武田公実/Takeda Hiromi 写真・土屋勇人/Tsuchiya Hayato
新型メガーヌR.Sデビュー!
この8月30日に国内発表されたばかりの新型メガーヌR.Sは、初代から数えて三代目。ルノー、あるいは欧州製ホットハッチに詳しい読者諸賢ならばご存知かもしれないが、歴代のメガーヌR.Sは、かなりハードコアな仕立てのクルマだった。
なかでも「ノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)FF最速車」のタイトルを巡って、現行型シビック・タイプRのベンチマークと目された「トロフィーR」など、特別に仕立てた高性能バージョンたちは乗り心地も相当にハードで、メガーヌR.Sというモデルの「手強い」イメージを決定づけていた感が強かった。
そんな先達たちに比べると、今回初めて対面した新型メガーヌR.Sはメインマーケットである欧州市場の意向によって、実用性重視の5ドアハッチバックに集約されたこともあってだろうが、スポーツカー然とした2ドア(+テールゲート)クーペの先代と比べてしまうと、たとえ前後のオーバーフェンダーやスポイラーで武装されていても、どうしても少々大人しく映ってしまった。
なかでも「ノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)FF最速車」のタイトルを巡って、現行型シビック・タイプRのベンチマークと目された「トロフィーR」など、特別に仕立てた高性能バージョンたちは乗り心地も相当にハードで、メガーヌR.Sというモデルの「手強い」イメージを決定づけていた感が強かった。
そんな先達たちに比べると、今回初めて対面した新型メガーヌR.Sはメインマーケットである欧州市場の意向によって、実用性重視の5ドアハッチバックに集約されたこともあってだろうが、スポーツカー然とした2ドア(+テールゲート)クーペの先代と比べてしまうと、たとえ前後のオーバーフェンダーやスポイラーで武装されていても、どうしても少々大人しく映ってしまった。
新型メガーヌR.Sは乗り心地とハンドリングの完全両立
「ルノー・スポール カーズ(市販車部門)」と「ルノー・スポール レーシング(F1にも関与するレース部門)が共同開発したという1.8リッター直噴ターボエンジンに火を入れ、メガーヌR.Sとしては初採用という電子制御6速デュアルクラッチ式DCT(6EDC)のセレクターをDレンジに入れて走り出すと、まずは乗り心地の良さと静かさに拍子抜け。
ところが、スイッチ一つで操作できる走行モード「ルノー マルチセンス」を「SPORTS」モードにセットして、ちょっとやる気を出してワインディングに突入すると、状況は一変する。
ところが、スイッチ一つで操作できる走行モード「ルノー マルチセンス」を「SPORTS」モードにセットして、ちょっとやる気を出してワインディングに突入すると、状況は一変する。
曲率強めのタイトコーナーでは、まるで一回りもコンパクトな「R.S.クリオ」にも匹敵するかのような俊敏さを見せつける一方で、Rが緩くてスピードレンジの高いコーナーでは大排気量スポーツカーのような安定性。大げさな物言いかもしれないが「これって魔法じゃないの?」と思ってしまったほどである。
でも試乗後によくよく説明を聞いてみると、それは魔法のようなものなのではなく、画期的なシステムを実に入念なチューニングで仕上げた成果であることが分かった。この素晴らしい二面性を確たるものとした最大の要因は、「4コントロール」というあまり聞きなれないシステムなのだ。
現行メガーヌGTでも採用されている「4コントロール」は、スピードや操舵角などに対応して後輪もステアさせる4輪操舵システム。低/中速では最大で2.7°まで前輪と逆位相に操舵することでコーナリング時の回頭性を向上させる一方、高速では最大1.0°まで同位相に操舵することで安定性を高められるという。
きめ細かい制御が行われる4輪操舵システムによってロールスピードが抑えられた結果、スプリング/可変式ダンパーをソフトなセットとしても旋回性能やハンドリングは高いレベルを保持できる。それが筆者を感動させた乗り心地とハンドリングの完全両立、つまりは「魔法」の正体とのことなのである。
でも試乗後によくよく説明を聞いてみると、それは魔法のようなものなのではなく、画期的なシステムを実に入念なチューニングで仕上げた成果であることが分かった。この素晴らしい二面性を確たるものとした最大の要因は、「4コントロール」というあまり聞きなれないシステムなのだ。
現行メガーヌGTでも採用されている「4コントロール」は、スピードや操舵角などに対応して後輪もステアさせる4輪操舵システム。低/中速では最大で2.7°まで前輪と逆位相に操舵することでコーナリング時の回頭性を向上させる一方、高速では最大1.0°まで同位相に操舵することで安定性を高められるという。
きめ細かい制御が行われる4輪操舵システムによってロールスピードが抑えられた結果、スプリング/可変式ダンパーをソフトなセットとしても旋回性能やハンドリングは高いレベルを保持できる。それが筆者を感動させた乗り心地とハンドリングの完全両立、つまりは「魔法」の正体とのことなのである。
新型メガーヌR.Sは入念にセットアップを重ねた小気味よい走り
一方、昨今話題の新生「アルピーヌA110」と基本を一にする、最高出力279ps/最大トルク390Nmの直4ターボエンジン+6EDCトランスミッションの組み合わせも、実に魅力的。現代のパワーユニットとしては気持ちよく吹け上がるエンジンと、レスポンスに優れたトランスミッションのコンビネーションで、とても小気味よく走らせられる。
このパワートレーンにしても、前述のシャシーにしても、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに代表されるドイツ製のライバルたちがハード面でスポーツ性を高めるのに対して、こちらは人間の感覚を生かして入念にセットアップを重ねた成果であるかのように感じられるのだ。
もちろん、自動運転技術を応用した安全運転支援システムや、スマートフォンとのコネクティビティなどの先進装備の充実ぶりでは、同じクラスの絶対王者VWゴルフGTI/ゴルフRには及ばないのだが、このドライビングプレジャーがあるならばメガーヌR.Sは互角、あるいはそれ以上の魅力を湛えているとも思われる。
あとは、本国仕様では設定のある6速MT仕様の日本導入も期待したい、というのはいささか過ぎた願望かもしれないが……。
このパワートレーンにしても、前述のシャシーにしても、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIに代表されるドイツ製のライバルたちがハード面でスポーツ性を高めるのに対して、こちらは人間の感覚を生かして入念にセットアップを重ねた成果であるかのように感じられるのだ。
もちろん、自動運転技術を応用した安全運転支援システムや、スマートフォンとのコネクティビティなどの先進装備の充実ぶりでは、同じクラスの絶対王者VWゴルフGTI/ゴルフRには及ばないのだが、このドライビングプレジャーがあるならばメガーヌR.Sは互角、あるいはそれ以上の魅力を湛えているとも思われる。
あとは、本国仕様では設定のある6速MT仕様の日本導入も期待したい、というのはいささか過ぎた願望かもしれないが……。
新型メガーヌR.S 画像ギャラリー
エクステリア
インテリア
走り
武田公実|Takeda Hiromi
かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッドで営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、クラシックカー専門店などで勤務ののち、自動車ライターおよびイタリア語翻訳者として活動。また「東京コンクール・デレガンス」、「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントにも参画したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム」ではキュレーションを担当している。