現行国産車では1車種のみ!? ワイパーが1本しかない車3選

レーシングカーでは、軽量化や空力調整のために、1本アームのシングルワイパーにすることが多々ありますが、市販車となるとシングルワイパーは珍しく、通常は2本になっています。しかし、なかには珍しいシングルワイパーの市販車があります。ここではシングルワイパー採用した市販車を、現行車と懐かしい旧車を交えて紹介します。

文・赤井福

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シングルワイパーの特徴
①現行国産車唯一のシングルワイパー「トヨタ ヴィッツ」
②考え抜かれた構造「ランボルギーニ ムルシエラゴ」
③シングルワイパーの革命児「メルセデス・ベンツ Eクラス」(W124)

シングルワイパーの特徴

シングルワイパーは、2本ワイパーと比べると、拭き取り面積が小さくなります。特にボンネット側に支点がある場合、上方部分に吹き残しが生まれ、信号や看板の確認が困難になります。

そんな不利をわかったうえで、各メーカーは知恵と技術を絞り、シングルワイパーを採用しています。

では、どんな車種がシングルワイパーを採用しているのでしょうか。

①現行国産車唯一のシングルワイパー「トヨタ ヴィッツ」

トヨタ ヴィッツは、現在販売されてる国産車で唯一、シングルワイパーを採用しています。現行の130型になった2010年12月に、それまで採用していた2本ワイパーをやめて、大きなシングルワイパーへと変貌しました。

採用された理由は、コストカットの意味合いが強く、姉妹車のラクティス(2代目)もシングルワイパーでした。

ワイパーが2本あると、配線やアームなど、パーツは2本分必要になりますが、シングルワイパーになればいくつかのパーツを省略できます。さらにヴィッツ/ラクティスでは、リンクに工夫をして、拭き残しを極力少なくすることに成功したことで、シングルワイパーで十分だと判断されたのでしょう。

②考え抜かれた構造「ランボルギーニ ムルシエラゴ」

スーパーカーには、シングルワイパーが少なくありません。なかでもランボルギーニは、1974年に発売されたカウンタックですでにシングルワイパーを採用していました。しかし、ここで注目したいのは、ムルシエラゴです。

その構造が秀逸で、太めのワイパーブレードに並行してリンク機構がセットされています。これにより、ワイパーブレードの角度をコントロールすることができ、ワイパーの浮きあがりを抑えます。

ランボルギーニのような緩傾斜のフロントガラスの場合、特にワイパーが浮きやすいため考えられたそうです。さすが最新技術の結集したスーパースポーツカー、ワイパーひとつにもぬかりはありません。

③シングルワイパーの革命児「メルセデス・ベンツ Eクラス」(W124)

1985年、「パノラマワイパー」というシングルワイパーが装着された、メルセデス・ベンツの初代Eクラス(W124)が発表されました。ワイパーアームの回転軸に独自のリンク機構を作り、当時の2本ワイパーを上回る面積を拭き取ることができました。伸縮している部分がMの形を描くことからM字ワイパーとも呼ばれました。

フロントガラスの中央にワイパーの回転軸があり、回転軸内にギアを設けてワイパーブレードが伸縮することで、通常のアームでは届かない場所も拭き取ることができました。

非常に複雑な構造だったため、修理が大変で、回転軸のギア摩耗による動作不良が多かったことから、その後は現在のモーター式に変わります。しかし、1本で2本ワイパーを上回る拭き取り性能を誇ったパノラマワイパーは、メルセデス・ベンツの技術力を示すひとつの指標となりました。


数少ないシングルワイパーですが、かつてのパノラマワイパーのような、革新的なシングルワイパーが開発されれば、2本からシングルワイパーに技術転換することも考えられます。

あまり注目することのないワイパーですが、雨の日のドライブには欠かせない存在です。個性的なシングルワイパーのクルマに今後も注目したいですね。

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文・赤井福
フリーライター。大学卒業後、金融業に従事。その後、6年間レクサスの営業マンとして自動車販売の現場に従事する。若者のクルマ離れを危惧し、ライターとしてクルマの楽しさを伝え、ネット上での情報発信を行っている。