頭文字DのAE86はなぜ速いのか?
更新日:2024.09.09
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『頭文字(イニシャル)D』は、1995年から2013年まで週刊ヤングマガジンに掲載されていた漫画です。10代の走り屋たちが、峠道でバトルを繰り広げる様子に憧れ、車好きになった方も多いのではないでしょうか。原作の冒頭で、主人公がコップの水をこぼさないように、クルマにかかるGの出方をコントロールしながら豆腐を運ぶシーンは、たくさんの読者の記憶に残っていることでしょう。じつは、この主人公の神懸った運転技術以外にも、バトルで勝利できた理由があるのです。
文・吉川賢一
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いつもCarMeをご覧いただき誠にありがとうございます。
一部不適切な表現があり、記事内容を修正いたしました。
読者の皆様ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
(2018年4月10日)
文・吉川賢一
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一部不適切な表現があり、記事内容を修正いたしました。
読者の皆様ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
(2018年4月10日)
- Chapter
- 主人公が乗るAE86の特徴
- モデルとなった峠道は…
- 文太によるチューニング
主人公が乗るAE86の特徴
主人公が運転するAE86(以下ハチロク)とは、1983年にトヨタ自動車が販売したカローラ レビンとスプリンター トレノの共通型式番号のことです。
原作では、峠道で高速ドリフトを繰り返しながら、並み居る強豪に勝利する様子がたくさん描かれています。しかし「本当に早いのかな?」と疑問に思うことがあります。実際、ハチロクの馬力はカタログ値で130ps。ノーマルでは決して速いクルマではありません。それでも、最新の国産ハイパフォーマンスカーに勝ちつづけます。どうして、そのようなことが可能になったのでしょうか。
その理由のひとつが、ハチロクの車体重量です。1.6L直4エンジンを搭載したFR方式にもかかわらず、車重はわずか925㎏(2ドア)。軽さで有名なFF方式のホンダ シビック タイプRでさえ1,040㎏ですから、この重量は驚異的です。
車体が軽いことで、車両運動の基本である「走る・まがる・止まる」のポテンシャルが非常に高く、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなどを相手に、勝利することが可能となっていました。
原作では、峠道で高速ドリフトを繰り返しながら、並み居る強豪に勝利する様子がたくさん描かれています。しかし「本当に早いのかな?」と疑問に思うことがあります。実際、ハチロクの馬力はカタログ値で130ps。ノーマルでは決して速いクルマではありません。それでも、最新の国産ハイパフォーマンスカーに勝ちつづけます。どうして、そのようなことが可能になったのでしょうか。
その理由のひとつが、ハチロクの車体重量です。1.6L直4エンジンを搭載したFR方式にもかかわらず、車重はわずか925㎏(2ドア)。軽さで有名なFF方式のホンダ シビック タイプRでさえ1,040㎏ですから、この重量は驚異的です。
車体が軽いことで、車両運動の基本である「走る・まがる・止まる」のポテンシャルが非常に高く、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなどを相手に、勝利することが可能となっていました。
モデルとなった峠道は…
頭文字Dの舞台となる秋名山は、急カーブが連続して続く峠道です。これは群馬県にある上毛三山のひとつ、榛名山がモデルになっているといわれています。
一般的に峠道は、舗装されているとはいえ石や枝が落ちていていたり、崖崩れが起きていたり危険な場面がたくさんあります。また、サルやシカなど、野生動物に気をつけなければなりません。また天候による路面コンディション悪化に苦労をしたり、対向車と正面衝突しそうになる場面も多く、大変危険な状況にあります。
しかし、ここにもハチロクの味方になる要素がありました。主人公 藤原拓海が乗るハチロクがバトルを行うのは、おもに峠の下り道(通称ダウンヒル)です。もし、ダウンヒルではなく平坦なサーキットでレースをしていたら、ハチロクに勝ち目がないのは目に見えています。
ダウンヒルでは、かならずコーナー手前で減速が必要となります。そのため、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなど加速が良いクルマ(かつ重たいクルマ)ほど、減速するための大きな力が必要となり、ブレーキとタイヤに負荷がかかります。
これらが熱ダレをおこし、急なコーナーでは制動&旋回のラインを狙ったとおりに通すことが出来なくなり、そういった負荷のかからないハチロクがレースの後半になるほど強い、といった現象がおきたのです。
一般的に峠道は、舗装されているとはいえ石や枝が落ちていていたり、崖崩れが起きていたり危険な場面がたくさんあります。また、サルやシカなど、野生動物に気をつけなければなりません。また天候による路面コンディション悪化に苦労をしたり、対向車と正面衝突しそうになる場面も多く、大変危険な状況にあります。
しかし、ここにもハチロクの味方になる要素がありました。主人公 藤原拓海が乗るハチロクがバトルを行うのは、おもに峠の下り道(通称ダウンヒル)です。もし、ダウンヒルではなく平坦なサーキットでレースをしていたら、ハチロクに勝ち目がないのは目に見えています。
ダウンヒルでは、かならずコーナー手前で減速が必要となります。そのため、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなど加速が良いクルマ(かつ重たいクルマ)ほど、減速するための大きな力が必要となり、ブレーキとタイヤに負荷がかかります。
これらが熱ダレをおこし、急なコーナーでは制動&旋回のラインを狙ったとおりに通すことが出来なくなり、そういった負荷のかからないハチロクがレースの後半になるほど強い、といった現象がおきたのです。
文太によるチューニング
本作では、ハチロクはより高性能な他のクルマ相手に、何度も勝利をおさめることになります。主人公の父である文太、およびプロジェクトDらの手によって、軽量で低重心なハチロクの強みである「高速コーナーリング」、そして「コーナー立ち上がりの加速」で負けないように、足まわりやエンジンをチューニングしていました。その結果、主人公はクルマをコントロールしやすくなり、数々の名勝負を戦ってみせたのです。
また、ハチロクはストーリー後半になるほどハイグリップなタイヤを装備していきます。通常、ハイグリップタイヤになるほど溝が少なくなっており、路面との摩擦による熱でタイヤを溶かし、粘着性を発揮させることでグリップを得ることができます。
一般道の制限速度走行では、摩擦の熱によるグリップを得ることはできませんが、タイヤに負担が掛かるダウンヒルでは、このタイヤが威力を発揮します。さらに、路面のギャップや継ぎ目をいなすため、サスペンションをストロークするようセッティングすることで、タイヤの接地性を高めていました。
また、ハチロクはストーリー後半になるほどハイグリップなタイヤを装備していきます。通常、ハイグリップタイヤになるほど溝が少なくなっており、路面との摩擦による熱でタイヤを溶かし、粘着性を発揮させることでグリップを得ることができます。
一般道の制限速度走行では、摩擦の熱によるグリップを得ることはできませんが、タイヤに負担が掛かるダウンヒルでは、このタイヤが威力を発揮します。さらに、路面のギャップや継ぎ目をいなすため、サスペンションをストロークするようセッティングすることで、タイヤの接地性を高めていました。
ハチロクのような軽量なクルマを乗ると、それを体感できるかもしれません。もし機会があれば、ぜひ乗ってみることをお勧めします。
吉川賢一
モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。