頭文字DのAE86はなぜ速いのか?

AE86

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『頭文字(イニシャル)D』は、1995年から2013年まで週刊ヤングマガジンに掲載されていた漫画です。10代の走り屋たちが、峠道でバトルを繰り広げる様子に憧れ、車好きになった方も多いのではないでしょうか。原作の冒頭で、主人公がコップの水をこぼさないように、クルマにかかるGの出方をコントロールしながら豆腐を運ぶシーンは、たくさんの読者の記憶に残っていることでしょう。じつは、この主人公の神懸った運転技術以外にも、バトルで勝利できた理由があるのです。

文・吉川賢一

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(2018年4月10日)

Chapter
主人公が乗るAE86の特徴
モデルとなった峠道は…
文太によるチューニング

主人公が乗るAE86の特徴

主人公が運転するAE86(以下ハチロク)とは、1983年にトヨタ自動車が販売したカローラ レビンとスプリンター トレノの共通型式番号のことです。

原作では、峠道で高速ドリフトを繰り返しながら、並み居る強豪に勝利する様子がたくさん描かれています。しかし「本当に早いのかな?」と疑問に思うことがあります。実際、ハチロクの馬力はカタログ値で130ps。ノーマルでは決して速いクルマではありません。それでも、最新の国産ハイパフォーマンスカーに勝ちつづけます。どうして、そのようなことが可能になったのでしょうか。

その理由のひとつが、ハチロクの車体重量です。1.6L直4エンジンを搭載したFR方式にもかかわらず、車重はわずか925㎏(2ドア)。軽さで有名なFF方式のホンダ シビック タイプRでさえ1,040㎏ですから、この重量は驚異的です。

車体が軽いことで、車両運動の基本である「走る・まがる・止まる」のポテンシャルが非常に高く、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなどを相手に、勝利することが可能となっていました。

モデルとなった峠道は…

頭文字Dの舞台となる秋名山は、急カーブが連続して続く峠道です。これは群馬県にある上毛三山のひとつ、榛名山がモデルになっているといわれています。

一般的に峠道は、舗装されているとはいえ石や枝が落ちていていたり、崖崩れが起きていたり危険な場面がたくさんあります。また、サルやシカなど、野生動物に気をつけなければなりません。また天候による路面コンディション悪化に苦労をしたり、対向車と正面衝突しそうになる場面も多く、大変危険な状況にあります。

しかし、ここにもハチロクの味方になる要素がありました。主人公 藤原拓海が乗るハチロクがバトルを行うのは、おもに峠の下り道(通称ダウンヒル)です。もし、ダウンヒルではなく平坦なサーキットでレースをしていたら、ハチロクに勝ち目がないのは目に見えています。

ダウンヒルでは、かならずコーナー手前で減速が必要となります。そのため、ランサー エボリューションやR32 スカイラインGT-Rなど加速が良いクルマ(かつ重たいクルマ)ほど、減速するための大きな力が必要となり、ブレーキとタイヤに負荷がかかります。

これらが熱ダレをおこし、急なコーナーでは制動&旋回のラインを狙ったとおりに通すことが出来なくなり、そういった負荷のかからないハチロクがレースの後半になるほど強い、といった現象がおきたのです。

文太によるチューニング

本作では、ハチロクはより高性能な他のクルマ相手に、何度も勝利をおさめることになります。主人公の父である文太、およびプロジェクトDらの手によって、軽量で低重心なハチロクの強みである「高速コーナーリング」、そして「コーナー立ち上がりの加速」で負けないように、足まわりやエンジンをチューニングしていました。その結果、主人公はクルマをコントロールしやすくなり、数々の名勝負を戦ってみせたのです。

また、ハチロクはストーリー後半になるほどハイグリップなタイヤを装備していきます。通常、ハイグリップタイヤになるほど溝が少なくなっており、路面との摩擦による熱でタイヤを溶かし、粘着性を発揮させることでグリップを得ることができます。

一般道の制限速度走行では、摩擦の熱によるグリップを得ることはできませんが、タイヤに負担が掛かるダウンヒルでは、このタイヤが威力を発揮します。さらに、路面のギャップや継ぎ目をいなすため、サスペンションをストロークするようセッティングすることで、タイヤの接地性を高めていました。


ハチロクのような軽量なクルマを乗ると、それを体感できるかもしれません。もし機会があれば、ぜひ乗ってみることをお勧めします。

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