埋もれちゃいけない名車たち VOL.11 ポルシェの絶滅危惧種的意欲作「PORSCHE 924」

アヘッド PORSCHE 924

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〝ポルシェ〟という名を持ちながら歴史に埋もれそうなクルマなんてあるの?と疑問を抱く方もいらっしゃることだろうが、「ある」と答えるしかない。

text:嶋田智之  [aheadアーカイブス vol.127 2013年6月号]
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VOL.11 ポルシェの絶滅危惧種的意欲作「PORSCHE 924」
PORSCHE 924

VOL.11 ポルシェの絶滅危惧種的意欲作「PORSCHE 924」

今でこそカイエンやパナメーラが成功を収めているが、以前はポルシェ=911という永遠の方程式がとにかく絶対的だったから、ユーザー達が911以外のポルシェを選びにくいという時代がかなり長く続いた。

とりわけ他社のコンポーネンツを利用して作られたモデルは辛かった。時として「本物のポルシェじゃない」みたいにこき下ろされ、出来栄えや実力とは関わりのないところで曲がった評価がなされたことも少なくない。

1975年発売の〝924〟というモデルは、その代表例といえるだろう。924から始まる一連のモデルの直接的後継車種が現在は存在しないため、次第に忘れ去られようとすらしている。放っておけば間違いなく埋もれてしまうことだろう。

けれど924は、実はポルシェにとっての意欲作だった。

ポルシェ初のフロントエンジン+リアドライブとされた924は、911より下のクラスを狙ったエントリーモデルとしての役割を担い、できる限り安い価格でユーザーに提供するために、前後サスペンションユニットやブレーキ、駆動系、ステアリング系などをフォルクスワーゲンから、エンジンはアウディから、と主要なメカニカルコンポーネンツを流用して、開発コストを極力抑える努力がなされていた。

とはいえ、市販乗用車のパーツを適当に寄せ集めてスポーツカーをでっち上げたわけじゃない。それら流用パーツのチョイスと組み合わせは、重量バランスや各部の強度などを含めて吟味に吟味を重ねて行なわれ、必要な部分には当然のごとく強化も加えられた。

例えばパワーユニットは、アウディ100用の直4OHV1871㏄を直4SOHC1983㏄へと大改良を加え、本国仕様では125PS/16.8㎏–mを稼ぎ出している。特筆すべきはトランスミッションとデフを一体化して後輪の車軸に直結させるトランスアクスル方式を採用していたこと。

そのため前後の重量配分をほぼ等しくすることができ、924はエンジンのパワーこそほどほど+α程度ながら、抜群のコーナリング性能とハンドリング性能を得るに至ったのだ。世界中のFRレイアウトのスポーツカーを開発するエンジニア達がこぞって参考にしたほど、それは優秀なレベルにあった。

そしてそのスタイリングも、後年のスポーツカー達に大きな影響を与えた。ポルシェが本気で設計・開発した924は、実はスポーツカーとして第一級だったのだ。

924はそれなりに売れた。けれど911と違って軽く見られていたせいか、長く大切に乗り続ける人も少なく、現存数は多くない。中古車を見たら救いたいと思ってるのに、まず市場には出てこないほど……。

PORSCHE 924

1960年代後半から70年代前半の914での商業的な成功を受け、ポルシェが再びVWと手を組んで開発を進めた924だが、最終的にはポルシェがプロジェクトを全面的に買い取って独自のモデルとして発売することになった。

VWやアウディのコンポーネンツを流用したおかげで売価を抑えることができ、また2+2にハッチバックの実用性も評価され、924は5年で10万台生産を越えるほどの成功作となった。その後、高性能版の追加や排気量の拡大、兄弟車944の誕生など基本に変更を加えないまま発展を続け、1988年まで生産が続けられた。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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