禅の思想を持ったフランス車 ルノー トゥインゴ "ゼン"

アヘッド ルノー トゥインゴ "ゼン"

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トゥインゴに新グレード「ゼン」が加わり、897ccのターボエンジンと998ccの自然吸気エンジンの2種が用意されることになった。既存のモデル同様、前者のエンジンには6速EDC(AT)が組み合わせられる一方、新しく導入された後者は5MTのみの展開となり、過度なデバイスが廃されているのが特徴だ。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.171 2017年2月号]

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禅の思想を持ったフランス車 ルノー トゥインゴ "ゼン"

禅の思想を持ったフランス車 ルノー トゥインゴ "ゼン"

グレード名が日本語の「禅」そのものに由来することを踏まえると、例えば「足るを知る」という禅の基本的な思想に、より忠実なのが5MTの方だろう。そこにあるのはシンプルさに徹した割り切りだからだ。

とはいえ、それは我慢を強いられるようなものではない。割り切られたのは商品性を高めるためのアルミホイールやオートワイパー、オートライト、オートエアコン(マニュアルエアコンは標準装備)といった装備であり、安全性に関するものは他のグレードと共通。

むしろ必要な操作のすべてを自分の意志で行えるようになったため、様々なおもてなし機能を煩わしく思う人にはむしろ清々しく映るに違いない。

実際、走りは爽やかだ。5MT車だけに与えられた998ccの直列3気筒エンジンが発する最高出力は71psに過ぎず、車重が960kgと軽いことを差し引いても加速力は控えめ。

制動力も旋回時のスタビリティも少しずつ物足りないものの、だからこそ自分でそれを引き出したり、補おうとした時に得られる「操ってる感」はどこか2輪に近く、スポーツマインドを駆り立ててくれる。

また、加速でリヤにトラクションが掛かり、減速でフロントが沈み、コーナリング中はアクセルとステアリングで姿勢をバランスさせる、そういう振る舞いのすべてが手に取るように分かるため、ごく普通に街中を流していても高い一体感に浸れるところが心地いい。

それでいて高速道路における巡航性能にも大きな不満はなく、加速こそ緩やかながら3人乗車のままでも3速で100km/hに到達するなど、十分な余力を見せてくれた。

ゼンには特筆すべきスペックも装備も与えられていないが、そのプリミティブさと引き換えに乗り手が得られるものは意のままに車体を操れる、もしくはそれに限りなく近づけるドライビングの根源的な喜びだ。

運転を代わった編集長の若林さんが100mも走らないうちに発した「なにこれすっごく楽しい!」というひと言。それがこのクルマの魅力をシンプルに表しているように思う。

●ルノー トゥインゴ「ゼン」(5MT)
車両本体価格:¥1,710,000(税込)
排気量:998cc
駆動方式:後輪駆動(RR)
最高出力:52kW(71ps)/6,000rpm
最大トルク:91Nm(9.3kgm)/2,850rpm

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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