オンナにとってクルマとは Vol.39 “人”がいるから走る

オンナにとってクルマとは

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サングラスにニット帽、首から鼻までをネックウォーマーで覆って、さらにマウンテンジャケットのフードをすっぽり被る。外気温はすでに0度を下回り、ハンドルを持つ手の感覚がどんどん奪われていく。「これじゃ、まるで銀行強盗だね」と爆笑しながら、それでも私たちは幌を閉じようとはしなかった。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.133 2013年12月号]
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Vol.39 “人”がいるから走る

Vol.39 “人”がいるから走る

英国の歴史あるオープンスポーツカーのケーターハム・スーパーセブンを、EV(電気自動車)に改造した「EVスーパーセブン」で、チャデモ(*)の急速充電器だけを使って日本一周するというチャレンジ。

主催の日本EVクラブが、「日本を世界一の充電大国にしよう」と、EVの普及とチャデモの普及を訴えるために計画した旅で、その56日間にもわたる旅のラスト4日間に、竹岡圭さんと私がゲストドライバーとして参加してきた。

エンジンの熱によるヒーターが使えないEVだが、会長の館内さん曰く「目立つこともEVスーパーセブンの使命」とのことで、オンナふたり、できる限りオープンで走るゾと心に決めて臨んだ旅だった。

日産や三菱のディーラー、県庁、道の駅、地元の企業などを訪問すると、どこでも大歓迎を受けた。それどころか、チャデモでの充電中や、ちょっとコンビニに寄るだけでも、たくさんの人が興味を持って声をかけてくる。

スパルタンな見た目とは裏腹に、音もなく走る様子には大人も子供も「うわぁ、静か!」と驚き、写真をバシャバシャ撮っていた。各地でこうした交流を続けながら、長い旅は東京都庁での到着式をもって、無事にミッションを達成した。

この旅を通してとくに実感したことは、現代のクルマが追い求めている快適性、安全性、高い走行性能といったものは、ドライブして感じる楽しさ、充実感、昂揚感に根本的にはまったく関係ないということだ。こんなに寒く過酷で、スペースは狭く乗り心地は悪く、速度だって最高で80km/hほどしか出していない。それでも、私には間違いなく、今年いちばんの記憶に残る素晴らしいものになった。

やっぱり、ドライブを彩る主役は人だ。一緒に乗る人、行く先々で出逢う人、到着を待っていてくれる人。そうした人たちに会うために、人はクルマで走る。だから、将来すべてがEVに切り替わったとしても、ドライブの根本の楽しさが失われることはない。そう確信できたことが、私の大きな収穫だった。

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text : まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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