F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1+ vol.01 TVの外の記者会見
更新日:2024.09.09
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開幕戦オーストラリアGPの表彰式と、上位3名のドライバーが出席した記者会見は見ものだった。表彰式が一段落した後、その場でインタビューを行うのは近年の慣例だ。現役を退いた開催国出身のドライバーがインタビュアーを務めるケースが多い。開催国出身ではないものの、開催国でとくに人気のあった往年のドライバーが出てくることもある。
text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.149 2015年4月号]
text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.149 2015年4月号]
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vol.01 TVの外の記者会見
▶︎優勝したハミルトンはもちろんのこと、3位に入ったベッテルは終始上機嫌。レッドブルに在籍していた昨シーズンは開幕戦でつまずくと、シーズンを通じて不調に終わったが、「隠れファンだった」と明かしたフェラーリに移籍した今シーズンは、テストの段階から好調。幸先のいいスタートを切ったことで、気分が高揚したのだろう。記者会見でベッテルとジョークの応酬を繰り広げたロズベルグだが、チームメイトのハミルトンとは言葉をまじえることも、視線をかわすこともなかった。
今シーズンから趣向が変わったのか、表彰台に出てきたのは映画俳優にして元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーだった。
優勝したL・ハミルトン(メルセデスAMG)にマイクを向けるシュワルツェネッガーを見て「あれ?」と思ったのはモニター画面のこちら側だけではなかったようで、ハミルトンは臆することもなく、「もっと背が高いと思っていましたよ」と口に出した。シュワルツェネッガーの答えがふるっている。
「あぁ、今日はハイヒール履いてこなかったからね」
表彰式を終えた上位3名のドライバーは記者会見室に移り、全世界のテレビ局に向けてメッセージを送った後、現地の記者から質問を受ける段取りになっている。この質疑応答は放映されない。
そのせいか、ちょっと緩んだムードになることがあり、この日もそうだった。引き金を引いたのは、フェラーリ移籍後の初レースで3位に入ったS・ベッテルだ。
優勝したハミルトンと2位に入ったN・ロズベルグのタイム差は1.3秒だったが、ロズベルグと3位ベッテルのタイム差は33秒もあった。つまり、メルセデスAMGの2台が圧倒的な強さを見せつけたレースだった。
「この後も似たような展開がつづくと思う?」と聞かれたロズベルグは、「もっと接戦になった方がファンは喜ぶだろうね」と返答。そこにベッテルが割って入った。
「本当にそう思っているの? だったらガレージを開放してよ」
情報を公開しろと半ばジョークで言っていることは、緩んだ表情からも明らかだった。ロズベルグはジョークに乗ったのか、それとも真面目な性分がそうさせたのか、ベッテルを第2戦マレーシアGPでのブリーフィングに誘った。さて結末は……。
チームメイトのK・ライコネンがリタイヤしたことについて「残念だ」とベッテルが発言すると、仕返しのつもりなのか、ロズベルグは「それ本心?」と突っ込みを入れる。身近なライバルに対してアドバンテージを得たことを内心喜んでいるのではないかと勘ぐっているのだ。
ベッテルも負けてはおらず、「君たちはお互いをどう思っているか知らないけど、僕らはうまくやっているからね。(チームメイトがリタイヤしたのは)本当に残念だよ」と返した。たわいないジョークの応酬のように聞こえるが、冷たい火花が見え隠れする。
今シーズンから趣向が変わったのか、表彰台に出てきたのは映画俳優にして元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーだった。
優勝したL・ハミルトン(メルセデスAMG)にマイクを向けるシュワルツェネッガーを見て「あれ?」と思ったのはモニター画面のこちら側だけではなかったようで、ハミルトンは臆することもなく、「もっと背が高いと思っていましたよ」と口に出した。シュワルツェネッガーの答えがふるっている。
「あぁ、今日はハイヒール履いてこなかったからね」
表彰式を終えた上位3名のドライバーは記者会見室に移り、全世界のテレビ局に向けてメッセージを送った後、現地の記者から質問を受ける段取りになっている。この質疑応答は放映されない。
そのせいか、ちょっと緩んだムードになることがあり、この日もそうだった。引き金を引いたのは、フェラーリ移籍後の初レースで3位に入ったS・ベッテルだ。
優勝したハミルトンと2位に入ったN・ロズベルグのタイム差は1.3秒だったが、ロズベルグと3位ベッテルのタイム差は33秒もあった。つまり、メルセデスAMGの2台が圧倒的な強さを見せつけたレースだった。
「この後も似たような展開がつづくと思う?」と聞かれたロズベルグは、「もっと接戦になった方がファンは喜ぶだろうね」と返答。そこにベッテルが割って入った。
「本当にそう思っているの? だったらガレージを開放してよ」
情報を公開しろと半ばジョークで言っていることは、緩んだ表情からも明らかだった。ロズベルグはジョークに乗ったのか、それとも真面目な性分がそうさせたのか、ベッテルを第2戦マレーシアGPでのブリーフィングに誘った。さて結末は……。
チームメイトのK・ライコネンがリタイヤしたことについて「残念だ」とベッテルが発言すると、仕返しのつもりなのか、ロズベルグは「それ本心?」と突っ込みを入れる。身近なライバルに対してアドバンテージを得たことを内心喜んでいるのではないかと勘ぐっているのだ。
ベッテルも負けてはおらず、「君たちはお互いをどう思っているか知らないけど、僕らはうまくやっているからね。(チームメイトがリタイヤしたのは)本当に残念だよ」と返した。たわいないジョークの応酬のように聞こえるが、冷たい火花が見え隠れする。
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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/