F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1+ vol.06 ホンダ、試練と期待の日本GP

F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1+  vol.06 ホンダ、試練と期待の日本GP

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F1に復帰したホンダの厳しい戦いが続いている。シンプルだった「エンジン」から複雑な「パワーユニット」に移行して2年目からの参戦なので、厳しい戦いになることは覚悟していた。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.154 2015年9月号]
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vol.06 ホンダ、試練と期待の日本GP

vol.06 ホンダ、試練と期待の日本GP

▶︎写真は第10戦ハンガリーGPでF・アロンソが5位フィニッシュを果たしたシーン。現状のマクラーレン・ホンダにとっては全開率の低いコースの方が相性はいいように見える。第14戦日本GP(9月27日決勝)の舞台となる鈴鹿サーキットは全開率が比較的高いため、チャレンジングな戦いになりそうだ。シーズン開幕当初はロングノーズで走っていたが、第8戦オーストリアGPでショートノーズにスイッチ。第11戦ベルギーGPでは、パワーユニットを大幅にアップデートした。


ホンダがやろうとしているのは、全開で走っているクルマがたくさんいる本線上に短い助走で合流するようなものだ。しかも、圧倒的な速度差で横を駆け抜けていく車両は「シーズン」というルートを一度経験しており、どこに難所があるのか熟知し、対策を済ませている。

一方、ホンダは事前にルートの予習はしていたけれども、実際に走らせてみると想定と違うことがたくさんあり、その対応に迫られて本来の開発に本腰を入れて取り組めていないのが実状だ。

テストコースで満足のいく仕上がりになったとしても、公道で走らせてみたら問題点が浮かび上がってくるのは市販車の開発と同じ。バッティングセンターでヒットを連発できたとしても、本物のピッチャー相手にヒットを打てるとは限らないのと同じである。「リアルな世界」に勝る鍛錬の場はないのだ。

パートナーを組むマクラーレンは空力性能を重視したため、極端にスリムなボディにすることを望んだ。ホンダはその望みを聞き入れ、複数のコンポーネントで構成されるパワーユニットをコンパクトな容積で成立させた。

そのしわ寄せが冷却性能に及んだ。’14年以降のF1のパワーユニットは、600馬力以上を発生する1.6L・V6直噴ターボエンジンに加え、163馬力(120kW)を発生するアシスト用のモーターを積んでいる(市販ハイブリッド車と同じで、減速時にエネルギーの回生=発電も行う)。

モーターは熱に弱く、所定の温度を超えると途端に性能が低下する。もちろんホンダは過酷な状況にさらされることを承知の上でパワーユニットを設計したのだが、現実は予想以上に厳しく、熱対策に苦しめられた。

エネルギーマネージメントにも苦しんでいる。現行パワーユニットは排気のエネルギーを電気エネルギーに変換するモーターも搭載している。

アシスト用モーターと合わせて2つのモーターを積んでいるわけだが、これらを効率良く使ってエネルギーを蓄えるほど、アシストできる時間は長くなり、それだけパフォーマンスは向上する。そのエネルギーの出し入れがホンダにとっては課題で、コースの特性によって、うまくいったりいかなかったりする。

うまくいったのはアロンソが5位、バトンが9位に入って今季初のダブル入賞を果たした第10戦ハンガリーGPであり、うまくいかなかったのは、2台が完走したものの13位と14位に終わった第11戦ベルギーGPである。

アロンソが5番目に速いラップタイムを記録していたことを考えると、レース全体を通じてコンスタントに性能を発揮することが、いかに重要かがわかる。第14戦日本GPは、課題克服の度合いを確かめるいい機会になりそうだ。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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