継承される名前の重さ 〜ホンダ CRF1000Lアフリカツイン

アヘッド ホンダ CRF1000Lアフリカツイン

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「ブランディング」という言葉がある。例えば、ひとつの商品名が何を想起させるか、それによっていかにして消費行動を喚起するか。市場を睨む者たちは、あらゆるテクニックを駆使、コストを投入してそれを成功させようとし、世の中はそうして作り上げられたブランドネームに満ちている。

text:春木久史 [aheadアーカイブス vol.167 2016年10月号]
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ホンダ CRF1000Lアフリカツイン

ホンダ CRF1000Lアフリカツイン

▶︎9月にアサマレースウェイで開催されたアフリカツインユーザーのギャザリング「ライドアフリカツイン」には、新型だけではなく、歴代アフリカツインのオーナーが多数集まった。初代モデルも多く、今でも多くのアフリカツインはオーナー に大切にされている。



だが、長く、本当の銘柄として残るものは、ほんの一握りであるということは言うまでもない。結局のところ、本当の意味でのブランドとして残るのは「本物」だけなのた。

1980年代に、当時のパリ・ダカールラリーで活躍したホンダのファクトリーマシンの遺伝子を抱いて登場。欧州を中心に人気モデルとしてロングセラーとなった「アフリカツイン」が、今年2月、17年ぶりに復活、登場した。

発売とほぼ同時に、国内における予定の販売台数である2千台を超えるオーダーが入っていたと言われる。それだけでも、この「アフリカツイン」に寄せるファンの期待の大きさ、その熱量がわかろうというものだ。

その「熱気」は、ブランクだった17年の間、絶え間なく「作り手」に伝えられていた。世界中のファンが「次のアフリカツインはいつ出るんだ? いつまで待てばいいんだ?」と、ラブコールを送り続けてきた。

それを受けるメーカー側も作る以上は、期待に応えることができるもの、いやそれを超えるものでなければならないと強く意識した。ブランクが長いほど、その責任は大きなものになっていったという。
▶︎ライドアフリカツインの会場には 80 年代にパリダカを席捲したファクトリーマシン、NXR も展示された。アフリカ乗りの大切なアイコン。


今年の2月に福島県で行われたジャーナリスト向けの試乗会で、新しい「アフリカツイン」を目の当たりにした時に感じたことは、作り手の意志が、ストレートにプロダクトに反映されたバイクであるということだった。量産型のバイクの場合、コストやコンプライアンス、また市場戦略なども複雑にからみ、開発者の意志はどうしてもスポイルされがちだ。

もとより、それを含めて工業製品というものは作られるわけで、そのことに是も非もないが、スポーツモーターサイクルという趣味性の高いジャンルにおいては、このことが、即、価値につながるといっていい。本物であるかどうかが大事だということだ。

発表と同時に、実際的な性能にこだわる世界中のオフロード系のジャーナリストたちが、「CRF1000Lアフリカツイン」を「こいつは本物だ」と絶賛した。開発、テストには、多数のオフロード乗りたちが関り、ディテールには、コストを度外視していると思える部分も垣間見える。

「アフリカツインの名に恥じないように」というこだわりが、ショールームにならぶ一台にまで貫かれるということは、開発者だけではなく、会社として本当のブランドを作る力があるということだ。

17年間というブランクは、今や、「アフリカツイン」というブランドの歴史の1ページに帰したといっていい。

▶︎大半がロードユース目的というのがこの種のビッ グオフ市場。そこに妥協なくオフロード性能を与えたところが「本物」なのだ。

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