小沢コージのものくろメッセ その34 ビッグネームの行方

アヘッド 運転席 モノクロ

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ふと考えて見ると、マツダCX-5ってシトロエンのCXと車名被ってたんだな、と思う今年始め。我ながら気づきのあまりの遅さに愕然とするが、逆に言うとシトロエンCXが、それだけ過去のモノになったということかもしれない。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.170 2017年1月号]

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その34 ビッグネームの行方

その34 ビッグネームの行方

次世代のシトロエンXMが出たのが1989年だからもう30年近い。

今後いわゆるクルママニアが減るとしても、シトロエンDSやポルシェ911の空冷モデル、メルセデス・ベンツ190シリーズ、といった輸入車に限らず、ソアラ、プレリュード、セリカなど、かつての名車のイメージが無くなっていくだろう。

そのうちピンクレディーと言っても通じなくなるように。今は有り難いことにちびまる子ちゃんや再結成の影響でわかる子供もいるが。

というか普段若い人と接しているクルマ業界の人は、とっくにそういう体験をしているに違いない。自分は、若い人とクルマの話をしないから気づかないだけで情報の陳腐化であり、埋没は着実に進んでいるはずなのだ。

となると一部車名は逆に今後長く使われるようになる気がする。例えばトヨタ・クラウン、カローラ、先ほどは昔の代表として使ってしまったがポルシェ911などだ。

例えばもし激安の電気自動車が出たりすると大衆車は激変する可能性がある。そうでなくとも先日スクープ取材をしていて驚いたが、今や50年の歴史を持つカローラのポジションは相当変わってきているようだ。特に商用として使われないセダンの方が。

今までカローラセダンに乗り続けていた60代以上ユーザーは、近年あまりに多く出る軽とリッターカーの中間のユーティリティカーに移行しているらしい。

具体的にはトヨタ・シエンタ、ホンダ・フリード、スズキ・ソリオやそのガチンコライバル、トヨタ・ルーミー&タンクほか4兄弟車だ。中でも特に国内市場を死守したいトヨタ系は、このニッチ市場に非常に積極的かつ野心的だ。

要するに「軽で十分なのになぜか軽に行かない白ナンバー車ユーザー」を徹底研究しているのだ。もう子供は巣立った、大人2人なら軽で十分! な年配がカローラセダンに乗っていたりする。

そこにはかつて微妙なプライドの問題や実用性、見た目の違いなどが影響していた。だが、全世代的に軽に抵抗がなくなるにつれ、この中間層を強化する必要が生じ、市場の多様性が増している。

スタイルがイマドキでハデ目だったりするだけじゃない。リアシートがとんでもなく広い上、荷室としても使えたり、シエンタやフリードのように一応3列シートが付いていて、息子娘夫婦と孫たちを同時に乗せることもできる。となるともう古臭いカローラセダンになぞ乗ってられない! というわけだ。

いよいよ伝統のカローラも本気で変わるべき時期が近づいているのかもしれない。しかし、トヨタはカローラの名前はまず間違いなく永久的に残そうとするのと、特にプレミアムゾーンで成功しているクルマは名前を変えないだろう。

いい例がメルセデス・ベンツSクラス。ここには問答無用の信頼感であり、高品質への期待が宿っている。

名前そのものが価値である同じくポルシェ911もスポーツカー界では絶対的。今後自動車ビッグネームは勝ち組と負け組の選別がさらに進むはずなのだ。そこに残っていられるのは果たして…。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の“バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。10月よりTBSラジオ(AM954/FM90.5)にて、辛口の自動車番組『週刊自動車批評』(月曜17:50〜18:00/)が放送中。 www.tbsradio.jp/car


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