今、注目したい2基のエンジン KTM vs Triumph

アヘッド バイク エンジン

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世の中、ITだAIだと騒がしいが、最近はモーターサイクルの世界も大きく様変わりしてきた。テクノロジーの進化により電子制御がもはや当たり前のように入り込んできたが、モーターサイクルたる根幹を成すエンジンの勢力図も同様に変化してきている。

text:佐川健太郎 [aheadアーカイブス vol.186 2018年5月号]
Chapter
今、注目したい2基のエンジン KTM vs Triumph
KTM 790 DUKE
Triumph STREET TRIPLE RS

今、注目したい2基のエンジン KTM vs Triumph

かつて2輪用エンジンと言えば、単気筒から2気筒、そして4気筒へとマルチ化しながら性能を高めてきた歴史がある。ひと昔前までは4気筒こそハイスペックの証とされ、逆に2気筒などは時代遅れのイメージがあった。

特にロードスポーツモデルではそれが顕著で、性能こそすべてのリッターSSは言うに及ばず、80年代~90年代のCBR250RRに代表されるような4スト250㏄レプリカなどは直列4気筒エンジンで2万回転近いハイレブを武器に速さを競っていた。

それが最近、特にミドルクラスでは直列4気筒ではないニューモデルが相次いでいる。

KTM 790 DUKE

KTM 790 DUKE
車両本体価格:¥1,129,000(税込)
エンジン形式:水冷4バルブDOHC並列2気筒
排気量:799cc
最高出力:77kW(105ps)/9,000rpm
最大トルク:86Nm/8,000rpm

その中に今バイク業界で注目を集める2基のエンジンがある。KTM 790 DUKEの並列2気筒エンジンとトライアンフの並列3気筒エンジンである。

600㏄~800㏄程度の排気量のいわゆるアッパーミドルクラスは世界的にも需要が伸びているそうだが、その理由のひとつとして、軽量で扱いやすい車格とパワーということが挙げられる。威風堂々とした見た目に有り余るパワーを持ったオバーリッタークラスよりも、日常的に使いこなせる軽快な乗り味へとニーズがシフトしているのだ。
そんな風を敏感に感じ取ったKTMの最新作、790 DUKEは新設計の水冷並列2気筒DOHC4バルブ、通称「LC8c」というレイアウトを投入してきた。

DUKEシリーズはこれまで690DUKE以下の小さい小中排気量は単気筒、1290スーパーDUKE Rはアドベンチャー系のVツインを採用していたが、今回の790では単気筒並みの軽快さとVツイン的なパンチ力を求めてパラツインにしたという。

ちなみに「LC8c」の小文字のcはコンパクトの意味で、Vツインである「LC8」の親戚であることが分かる。つまり、V型に開いた2つのシリンダーをぎゅっと閉じて1ブロックにまとめた構造なのだ。これにより、マスの集中化、およびエンジン搭載位置を前寄りに配置することによる前輪分布荷重を向上させた。

また、フロントまわりのスペースに余裕ができ、フォークのストローク量を犠牲にすることなくキャスター角を立てるなど、軽量化とともにまさにハンドリングマシンとして最適なディメンションを実現したのだ。

加えて、75度の位相クランクを採用することで、小気味よい鼓動感と路面をつかむトラクションフィールを得つつ、新設計のデュアルバランサーにより振動は低減されているなど、新時代を象徴するエンジンに仕上がっている。

Triumph STREET TRIPLE RS

Triumph STREET TRIPLE RS
(ベース車両、写真はMoto2プロトタイプ)
車両本体価格:¥1,430,000(税込)
エンジン形式:水冷4バルブ並列3気筒
排気量:765cc 
最高出力:90kW(123ps)/11,700rpm 
最大トルク:77Nm/10,800rpm
※moto2用エンジンは133ps/80Nmにチューンアップされている。
一方のトライアンフだが、90年代にヒンクリー産のブランドとして復活して以来、ハイパフォーマンスな水冷並列3気筒DOHC4バルブユニットを「タイガー」や「スピードトリプル」などのアーバンスポーツシリーズのアイコンとして育ててきた。

120度クランク等間隔爆発による回転フィールはロータリーエンジンを思わせる滑らかさで、それでいて細かい鼓動を含んだ独特のパルス感や、ややウェットなサウンドなど、トライアンフの3気筒ならではの感性に染み込むフィーリングが乗り手を酔わせる。

出力特性も独特で、全域に淀みなく溢れるフラットトルクが特徴。弾ける低中速トルクと高回転まで伸びるパワーを併せ持つことから「2気筒と4気筒のいいとこ取り」などと比喩されるが、まさに言い得て妙である。

そういえば、つい最近「ストリートトリプルRS」の3気筒765㏄をベースとするパワーユニットが2019年シーズンからMoto2エンジンとして供給されることとなり話題を呼んだが、これもレーシングエンジンとしての3気筒の可能性を示すものとして注目したい。

エンジンはモーターサイクルの顔であり、そのキャラクターを表す名刺のようなものだ。だから知るほどに面白い。

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text:佐川健太郎/Kentaro Sagawa
モーターサイクルジャーナリスト。出版社、フリー編集者を経て二輪雑誌やWEBメディアに寄稿。動画サイト「MOTOCOM」主宰、「ライディン グアカデミー東京」校長を務めるなど多方面で活躍している。
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