近未来のクルマの形!? イーロン・マスクが率いるテスラモーターズとはどんなメーカーなのか?

テスラモーターズ モデルS P100D

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2040年までに欧州で内燃機関のクルマを全廃するという報道がされてから、EVの未来はより明確なものになつつあります。現状では航続距離や充電インフラなどまだまだ課題が残されていますが、あるメーカーはEVの楽しさを追求し、先鋭化してモデルをここ数年矢継ぎ早にリリースしてきました。そのメーカーは「テスラモーターズ」。今回は同メーカーにスポットを当ててみます。

文・山崎友貴
Chapter
持続可能なエネルギーをコアとする社会の実現に向けて
なぜテスラモーターズは『EVを選択するのか?』という素朴な疑問
イーロン・マスクが構築しつつある未来図

持続可能なエネルギーをコアとする社会の実現に向けて

「テスラモーターズ」を語る時、世界的な起業家であるイーロン・マスクの存在を抜きにするわけにはいきません。

テスラモーターズの会長兼CEOで、スペースXのCEOでもある彼の目標は「持続可能エネルギーを原動力とした社会の実現」や「火星移住計画」といったものでした。イーロン・マスクは若き時から、人類の進歩に貢献する産業分野は「インターネット」「クリーンエネルギー」そして「宇宙」だと考えていたと言われています。

その彼の思想を具現化した企業のひとつが、テスラモーターズです。ちなみに車名のテスラとは19世紀から20世紀にかけて活躍した発明家・電気技師のニコラ・テスラから取ったものです。彼は交流電気方式や無線操縦、蛍光灯などを発明しました。また「世界システム」なる全地球的送電システムを提唱したのです。後のセンテンスのために、このことを頭の片隅にでも入れておいてください。

さて2003年、シリコンバレーから集った優秀なエンジニアたちは、電気自動車がガソリン車を越えるべく新世代のクルマ造りへの挑戦を、テスラモーターズとしてスタートさせました。

ロードスター

2006年7月、アメリカでテスラモーターズ最初のモデルである「ロードスター」のプロトが発表されました。当初はロータス・エリーゼにEVシステムを積んだものでしたが、幾度かプロトモデルの進化を重ねて、2008年3月ついに市販化が実現されました。

ちなみに当初の米国での値段は約1,000万円、日本市場では2010年から販売されており、1,810万円というプライスでした。

ですが、イーロン・マスクがTVインタビューの中で述べているように、革新的な製品を社会に普及させていくのにはステップがあり、高額で少数生産から大量生産でリーナブルという過程を経ていかなければ真の普及には繋がりません。
実際、テスラモーターズは、2010年に発売したセダンタイプのEV「モデルS」をエントリーモデルで800万円台から、そして2019年に日本導入予定の「モデル3」は約400万円にしたのです。

このように、持続可能なエネルギーを原動力とした社会の実現というイーロン・マスクのビジョンは、EVのモータリゼイションというムーブメントで着々と実現されているのです。

なぜテスラモーターズは『EVを選択するのか?』という素朴な疑問

さて、EVがゼロエミッションで、エコロジーな移動手段であることは言うまでもありません。ですが、なぜEVなのでしょうか。今の自動車に乗っている人なら、誰でもこんなこと思うでしょう。「電気だって化石燃料で作られてるのでは?」と。

10歳からPCのプログラミングを始め、12歳で商用ソフトを市販したというイーロン・マスクの非凡なる思考は、もっと大きな未来の社会を見据えていたのです。彼によれば、自動車の内燃機関による化石燃料のエネルギー効率はわずか20%。それに比べて、火力発電所での化石燃料のエネルギー効率は60%までに上昇します。

さらに火力発電所は排熱の再利用ができる他、敷地がそもそも広いため、自動車と違って走るためのメカニズム以外のものも造れて効率的だというのです。

つまり、エネルギーは別な場所で造らせて、自動車は走ることに特化すべきだというのが、彼の考え方なのです。
ちなみにテスタモーターズの技術には、イーロン・マスクが手がけるもうひとつの企業「スペースX」のものが活用されていると彼は言っています。スペースXが開発した再生可能な宇宙船の素材や形状は、テスラモーターズのEVの軽量化や空気抵抗の軽減に役立っています。

同社はパナソニックと提携して、より持続性の高いバッテリーの開発を進めていますが、それはまだまだ重量という課題から脱却できていません。

ですが、ボディの素材を軽量化し、空気抵抗を減らす形状を採用することで、航続距離をより実用的なレベルにまで向上させているわけです。
同社のEVには、ある特徴があります。それはガソリンエンジンのクルマにはない、想像を絶するドライブフィールです。

エンジンと違ってトルク変動がないモーターだからこそ、実現できる最高のフィーリングです。国産メーカーを中心とする従来のEVは、環境性能ばかりに注力されてきましたが、ワクワクするような感覚がないものは社会に普及しない、というのがイーロン・マスクの考え方のよう。

同社のEVのインプレッションは、機会を改めますが、その体験は長年クルマに乗っていても斬新で、感動的なものでした。クルマを操る感覚ではなく、融合、溶け込むような感覚とイーロン・マスクが言った通りです。

現在、テスラモーターズはトヨタ自動車とも提携を行い、共同で新型EVの開発を進めていました。EVの普及など遠い先の話と思っている方も多いかもしれません。

また、EVの実用性もまだまだと感じている人も少なくないでしょう。ですが、実現は目の前なのです。

イーロン・マスクが構築しつつある未来図

テスラモーターズが実用的なEVの開発と普及を推進していることはお話しましたが、現在は乗用車がメインとなっています。

ところが、イーロン・マスクはインタビューの中で、今後バスやトラックなどの交通インフラは、すべて全自動のEVに取って代わられるだろうと言っています。

奇しくも自動車開発の神様と言われ、フォード、GM、BMWで重職を歴任してきたボブ・ラッツもまた、「自動車の時代は終焉に近づいており、移動手段は完全自動化されたモジュールになるだろう」と言っています。

テスラは先日、EVトラックを発表し、アメリカではすでに市販が決まっています。私たちがSF映画の1シーンだと思った街のシーンは、もはや現実に近づきつつあるのです。
ですが、化石燃料を使う自動車インフラがすべてEV化したら、今度は電気エネルギーが足りなくなるという危惧が沸き起こります。しかも充電インフラも現状では十分に足りているとは言えません。

テスラモーターズが独自に設置している充電設備「スーパーチャージャー・ステーション」は開設予定を含めても、国内にわずか31ヶ所。公共の充電設備を含めても、到底、バスやトラックに代わる交通網をフォローできるようには思えません。
ここからは私見ですが、イーロン・マスクはアメリカで「ソーラーシティ」という太陽光発電の企業も経営しています。

この会社はユーザーに無料で太陽光発電パネルをリースし、安い電力で使ってもらおうというインフラ企業。「太陽は我々の頭上にある大きな核融合炉である」とイーロン・マスクは言っていますが、現在の太陽光発電は火力や原子力にまだ及ぶところではありません。

ですが、無料の太陽光発電で電力が格安で使えるという謳い文句に、多くのユーザーが賛同したらどうでしょうか。

発電インフラは急速に拡大し、これまで捨てていた太陽光エネルギーを効率的に使うことができるようになります。そして太陽光発電パネルの設置と併せて、街中にEVの充電ステーションをステーションを併設していったら、一気にEVの実用度もアップするのではないでしょうか。

これこそが、ニコラ・テスラの提唱した「世界システム」なのではないかと思うのです。
「文明の発展にはワクワクする社会が必要だ」という考えで、スペースXやテスラモーターズを企業したイーロン・マスク。彼が設計する未来図はまだほんの一部しか見えていませんが、テスラモーターズのクルマに少し乗ってみれば、すぐにその一部が垣間見えます。

内燃機関をクルマが失ったら終わりだ…というファンが多いのも事実ですが、間違いなくテスラモーターズのクルマは無機質な移動の道具にはならない、そんな気がします。

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