なぜF1は排気量が小さいのに700馬力以上だせるのか?

昔のターボエンジン全盛のF1はもっとハイパワーだった

ルノー F1 1977

最近のF1しか知らない方だと「1.6リッターターボで700馬力なんてスゴイ!」と思ってしまうかもしれません。しかし、現在ほど規則が厳しくなかった時代は、もっとパワーが発生していました。

初めてF1にターボを採用したのは、1977年のルノーF1。

当時、BMWのツーリングカーなどで採用例はあったものの、まだまだ耐久性などに問題がありました。それを最高峰レースに使ったのですから、問題が出ないわけもありません。しかし一度結果が出たことで、当然各マシンにこぞってターボを採用し始め、エンジンサプライヤーの勢力図が大きく変わることになりました。

その当時のF1は、いまより排気量が小さい1.5リッターターボエンジンでしたが、それでもはるかにハイパワーで1,000馬力に手が届くエンジンがザラだったのです。

ホンダは1.5リッターターボで1,500馬力だった事も!

その時流に乗ったのが、エンジンコンストラクターとして参戦していた第2期F1時代のホンダです。

1987年、ウィリアムズFW11Bに搭載されていたホンダ RA163Eは、レース本戦仕様で公称1,050馬力、予選アタック仕様では1,500馬力を叩き出す化物エンジンでした。

スポーツカーのエンジンであれば、リッターあたり100馬力を超えるかどうかが高性能の指標という時代を考えると、リッターあたり1,000馬力のRA163Eは、文字通り”ケタ違い”のエンジンだったのです。

それでもラップタイムを比較すると、当時より現在のほうがはるかに速いのですから、クルマはエンジンの馬力だけじゃないことが理解できますね。

なお、翌1988年にはマクラーレンにエンジンを供給し、レギュレーションにより馬力は抑えられたものの、圧倒的な強さで全16戦中15戦で優勝。マクラーレン ホンダといまは亡きアイルトン・セナに黄金時代をもたらします。

ホンダ自身も「F1で圧倒的な速さを誇ったホンダのターボ」として、フラッグシップモデルのレジェンドにウイングターボと名付けた可変ノズルターボ搭載車を販売していました。

2014年にF1ターボが復活するまで

McLaren Honda MP4/6

※画像はMcLaren Honda MP4/6

1989年以降はターボが禁止され、自然吸気の3.5リッターV8、V10、V12エンジンを各マシンがマッチングしたものを搭載。

ホンダやフェラーリ、ランボルギーニなどがV12エンジンを投入する一方、無限やルノーはV10を、フォードのようにV8にこだわるコンストラクターもありました。

ヤマハ(V10とV12)やスバル(水平対向12気筒)もエンジンを投入するなど、多種多様なF1用エンジンが存在したので見ていて面白い時代でした。

しかし、この頃から段階的にF1に安全性と環境性能を向上するためのさまざまな制約が課されることになり、過剰なスピードとそれをもたらす要素のひとつとして、エンジンパワーや回転数のリミットを下げる方向に向かいます。

エンジンは、1994年に3リッター、2006年には2.4リッターのV8。2009年にはハイブリッド走行システムの一種であるKERS(運動エネルギー回生システム)の使用が認められることとなりました。

しかし、このエンジン規制はパッケージに優れた特定のコンストラクター優位の状況を作り出してしまいF1を退屈なレースにしてしまいました。そこで、KERSの使用でオーバーテイクの機会を増やそうとしたのです。

現在のF1は1.6リッターハイブリッドターボ!

無題

2014年には排気量を1.6リッターに縮小するとともにターボを復活させ、F1もダウンサイジングターボの時代に突入。

さらにKERSは運動エネルギーだけでなく熱エネルギーの再利用も可能にして省エネ時代のエネルギー効率に優れたERSに発展しました。

ERSはターボチャージャーに接続された回生システムで発生する電力も使ったハイブリッドシステムで、もはや過去の1.5リッターターボエンジンとは別物で複雑な「ハイブリッドパワーユニット」となっています。

ターボエンジン本体で500~600馬力、ERSでは100~200馬力程度を発揮して、システム出力は約700馬力以上と言われますが、規則により全力発揮時間に制約があります。

そのため、市販のスポーツカーやスーパーカーのハイパワーエンジンと同列には語れないものになっているのが実情で、比較することにはあまり意味がありません。

なぜそれだけの小排気量でハイパワーが?と言えば、ニューマチックによる高回転とターボチャージャーに加え、市販エンジンに比べて耐久性が犠牲にされているからでしょう。

現在のレギュレーションでは、年間に3基以下と決められていますから、1基が平均7レースに使用されると仮定すると、予選決勝合わせて3,000-4,000kmの耐久性があれば良いことになります。市販車では、3,000-4,000km毎にエンジンをバラしてオーバーホールなんてことはないので、耐久性の部分でぎりぎりのパワーアップと軽量化が行われているのです。

またハイブリッドシステムも特別で、最新のNSXでもモーターの出力は27kW(37ps)ですから、約100psのERSは市販車とは異なるものになっています。

もっとも、スポーツカーの世界でもハイブリッドの波は押し寄せてきており、次期日産 GT-Rなどは3リッターV6エンジン+ハイブリッドでシステム出力は650馬力とも800馬力とも言われます。

F1のように瞬間的とも言える短時間のスプリントレースでは無いので、公道を走るスポーツカーとしての実用性を備えるには時間がかかるでしょう。しかし、いずれはF1のように小排気量でハイパワー、必要な時だけ思い切りパワフルになるパワーユニットを搭載した、環境に配慮したスポーツカーが当たり前な時代が来るかもしれませんね。

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