なぜBMWは少ない馬力でも速いのか? 200km/hを超えるドイツ車の秘密【2025年最新】

BMW 1シリーズ 2015

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ドイツの高級車ブランドBMW。なかでもエントリーモデルの1シリーズ5ドアハッチバックには1.5Lエンジン(直列3気筒ターボ)が搭載されており、車両価格も300万円台から購入可能な比較的手頃なモデルです。しかしこの小さなエンジンでも最高速は210km/hに達するとされています。日本のコンパクトカー並みの排気量・控えめな馬力ながら、なぜBMWは時速200km/hオーバーという驚異的な高速性能を実現できるのでしょうか。その理由を、BMWの技術的特徴や思想面から紐解いていきます。

CARPRIME編集部

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Chapter
ターボによるパワーの引き出し
BMW 1シリーズ 画像ギャラリー
日本でダウンサイジングターボが普及しない理由
アウトバーンが育んだ高速性能
クルマづくりの思想の違い
小排気量で200km/hを可能にする理由とは
エンジン(過給とトルク特性)
足まわり(シャシー剛性とサスペンション)
ボディ(空力デザイン)
BMW最新技術が支える高速性能
48Vマイルドハイブリッド
7速DCT(ダブルクラッチトランスミッション)
空力設計の進化
豆知識:BMWの「i」や「d」って何の意味?
まとめ

ターボによるパワーの引き出し

BMW 1シリーズ 2015

BMW 1シリーズ 2015

BMWの1シリーズ「118i」のエンジン出力は最高出力100kW(136ps)/4400rpm最大トルク220Nm/1250rpmと、公称スペック上の馬力は控えめです。

しかし、この1.5Lターボエンジンはダウンサイジングターボならではの特性で、低回転の1250rpmから最大トルクを発生します。いわば小さなエンジンで大きな力を生み出しているのです。

118iという車名の「18」は1.8L相当のエンジンを意味しており、ターボ過給によって実排気量以上のパワーを引き出せることを示唆しています。過給によるトルク増大で加速力が向上し、馬力もアップすることで最高速が伸びます。

実際BMWをはじめ欧州メーカーの輸入車が高性能と言われる要因のひとつは、小さい排気量でもこれだけのパワーを出せている点にあります。ダウンサイジングターボで小排気量のハンデを補い、高速域まで力強く加速できるのがBMW車の大きな特徴です。

BMW 1シリーズ 画像ギャラリー

日本でダウンサイジングターボが普及しない理由

BMW 1シリーズ 2015

BMW 1シリーズ 2015

なぜ日本の国産車では小排気量ターボがあまり普及していないのかという疑問があります。

決して日本の自動車メーカーにターボ技術がないわけではありませんが、その背景には欧州と日本の交通環境の違いがあります。

ターボ車は巡航時には燃費効率が良いものの、加速時にはどうしても燃料消費が多くなります。そのため信号渋滞でストップ&ゴーの多い日本の道路事情では、ターボよりもハイブリッド技術の方が効率的だとして採用が見送られてきた経緯があります。

一方、アウトバーンなど長距離高速巡航が前提の欧州では、小排気量ターボで燃費と出力を両立するメリットが大きいのです。こうした国内外のニーズの差から、日本ではダウンサイジングターボ搭載モデルが少数にとどまっています。

アウトバーンが育んだ高速性能

アウトバーン

アウトバーン

輸入車、とりわけBMWのようなドイツ車の高速性能が総じて高い背景には、ヨーロッパ特有の道路事情も関係しています。

日本の高速道路は最高速度が120km/hに制限されており、国産車は180km/hでリミッターが作動する設定になっている場合が多いです。

これに対してドイツには速度無制限区間のあるアウトバーンが存在します。日常的に150km/h程度で巡航し、ときには200km/hを超える速度域でも安定して走行できるクルマが求められる環境なのです。

こうした道路で鍛えられる欧州車は、高速でもぶれない頑丈な車体剛性や安定した足まわり(サスペンション)、車内の静粛性上品なエンジンサウンドに至るまで、高速巡航を念頭に置いた設計思想で作られています。

さらにギア比やエンジンのトルク特性も高速巡航に適したセッティングが施されており、200km/h前後のハイスピードでも快適かつ安心して走行できるようチューニングされています。

言い換えれば、BMWを含む欧州メーカーのクルマはアウトバーンで鍛えられた高速ランナーとも言えるでしょう。こうした土壌があるからこそ、小さなエンジンでも堂々と200km/h超えを可能にしているのです。

クルマづくりの思想の違い

欧州と日本では道路環境が大きく異なるため、クルマづくりの思想にも違いが生じます。日本の高速道路では巡航速度はせいぜい100km/h程度、追い越し時でも無理のない加速ができる性能があれば十分と考えられています。

そのため多くの国産車は4,000rpm以下のエンジン回転域で静粛性を重視し、それ以上の高回転は想定外として割り切っている場合もあります。

実際、日本の一般道や高速でエンジンを4,000rpm以上回して走る機会はほとんどないためです。対して海外、とりわけドイツでは高速域での安定走行が求められるため、車両性能のターゲットが異なるのは当然といえます。

小排気量で200km/hを可能にする理由とは

BMW M3 鍛造アルミホイール

BMW M3 鍛造アルミホイール

エンジン(過給とトルク特性)

最大の要因は、小さなエンジンをターボ過給でパワーアップしていることです。過給により低回転域から強力なトルクを発生できるため、実用域での加速が鋭くなります。トルクが立ち上がる回転域が低ければ低いほど、発進や追い越し加速で有利になり、高速域へスムーズに加速できます。

足まわり(シャシー剛性とサスペンション)

高速域で車体が安定していることも重要です。シャシー剛性サスペンションのセッティングが適切であれば、速度が上がっても車体の挙動が落ち着き、ドライバーは安心して速度を伸ばせます。

BMWはFF(前輪駆動)レイアウトを採用する1シリーズにおいても、スリップを素早く制御する「ARB」(アクチュエーター近接ホイールスリップ制限機能)など独自の技術を投入し、高い安定性とハンドリング性能を追求しています。

ボディ(空力デザイン)

空気抵抗を減らすボディ設計も不可欠です。空気抵抗は速度の二乗〜三乗で効いてくるため、高速域ではわずかなCd値の差が最高速に大きく影響します。

車体下面やフロントの整流、アクティブエアフラップなどの空力技術が、同じ馬力でもより高い最高速を可能にします。

BMW最新技術が支える高速性能

BMW MINI

BMW MINI

48Vマイルドハイブリッド

近年のBMWは48Vのマイルドハイブリッドを導入しており、4気筒や6気筒モデルを中心に小型モーターとバッテリーを組み合わせています。

例えば新型1シリーズでは、1.5L直列3気筒ターボにモーターのアシストを加え、システム合計でより高い出力とトルクを発揮する仕様が採用されています。

電気モーターによるトルクアシストでターボラグを補い、低回転から力強い加速を実現するため、小排気量でも高速域への到達が容易になります。

7速DCT(ダブルクラッチトランスミッション)

近年のBMW 1シリーズには、高性能な「7速DCT(ダブルクラッチトランスミッション)」が採用されています。

DCTは、2組のクラッチを用いて瞬時に変速を行うため、変速時のパワーの途切れ(トルク抜け)がほとんどありません。ダイレクトな加速感素早いシフトチェンジが、エンジンのパワーを効率よく路面に伝え、高速での加速性能を支えています。

空力設計の進化

最新モデルでは空気抵抗係数の低減がさらに進み、アクティブエアフラップフラットな車体下面などが空力性能に貢献しています。空力は速度が高くなるほど重要度が増すため、細かな設計改善の積み重ねが200km/hオーバーの安定性に直結します。

豆知識:BMWの「i」や「d」って何の意味?

BMWの車名には、「118i」や「320d」といったように数字の後にアルファベットが付いています。
実はこの**「i」や「d」には明確な意味**があるのです。

「i」はインジェクション(Injection)の頭文字で、ガソリンエンジンを示します。かつてキャブレター式だった時代、電子制御燃料噴射(インジェクション)を採用したことを誇示するために「i」が付けられました。その名残が今も続いており、ガソリンモデルには「i」が使われています。

一方の「d」はディーゼル(Diesel)の頭文字。燃費性能に優れ、ヨーロッパでは主流のディーゼルエンジン車を表しています。BMWのディーゼルモデルは低回転から強力なトルクを発揮し、長距離ドライブでも安定した走りを見せるのが特徴です。

最近では、電動化モデルを示す「e」も登場しています。「330e」などの“e”はプラグインハイブリッド(PHEV)を意味し、電気とガソリンの両方で走るタイプです。また、完全電気自動車には「i4」や「iX」といった“iシリーズ”が存在し、これはinnovation(革新)の「i」として新時代のBMWを象徴しています。

つまり、

i:ガソリン車

d:ディーゼル車

e:プラグインハイブリッド(PHEV)

と覚えておくと、BMWのモデル名を見ただけでどんなタイプか一目でわかるんです。
昔ながらの伝統と最新のテクノロジーが共存している――そんなところにも、BMWらしいこだわりが光っています。

まとめ

BMWが比較的少ない排気量・馬力でも200km/hオーバーを可能にする背景には、欧州流の徹底したクルマづくりがあります。

ダウンサイジングターボによる効率的なパワー向上、アウトバーン文化に根差した高速走行への対応力、足まわりや空力デザインのチューニング、そして48Vハイブリッドや高効率な7速DCT(ダブルクラッチトランスミッション)といった最新技術の採用。

これらが相まって、BMWのマシンはスペック上の馬力以上に堂々たる高速性能を発揮しています。控えめな数値に惑わされず、その裏に隠された駆け抜ける歓びを感じられる。それこそがBMWというブランドの真骨頂です。
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