小沢コージのものくろメッセ その13 ピケティに納得する

その13 ピケティに納得する

アヘッド 運転席 モノクロ

その最たるモノが毎年金満スイスで行われるジュネーブショーで、今年も沢山スペシャルに高そうなクルマが出ていた。

久々にフルモデルチェンジしたミッドシップフェラーリの488GTBにサーキット専用のマクラーレンP1 GTR、アストンマーティン・ヴァルカンなど。正直1千万円以上はボーッと眺めていただけだ。

若い頃は頑張ればポルシェの中古ぐらい買えると思っていたし、実際に買ってもみたが、もっと上はリアルに想定してなかった。というかスーパーカー世代の自分達にとって、スーパーカーは基本高くていいのだ。高嶺の華でも全然いいはずなのだ。

が、そうは言っても人生ほぼ折り返し地点を過ぎ、ある程度メドが立ってくると、金額に対して妙にシニカルな自分がいる。3千万円のクルマってなんだ?

5千万円って家買えるよな? 幸せはお金で買えるのか? 答えはあってないようなものだけど、さらに空しいのが高級時計で、1本数百gで数千万円クラスはザラ。リシャールミルやハリーウィンストンだと〝億〟だ。

一方オザワは毎日のようにクルマ好きを取材するのでお金持ちも結構知っていて、みんな当たり前にいい人で仕事も頑張っている。要するにスーパーカーとはこういう運と才能に恵まれた、モチベーション持ちまくりの人が買う物なのだ、と。

が、ときどき飲んで自宅までタクシーで帰るか、バスで帰るかで悩む自分と比べると、この格差は一体なんなんだと思う。たかが730円で悩む俺ってなに? と。

そこに颯爽と現れたのがピケティだ。自らの著作『21世紀の資本』で富める者はさらに富み、持たざる者との差を広げていくと指摘したフランスの経済学者、トマ・ピケティのことだ。理屈は簡単。財産を持っている人がそれを増やす度合いと、給与所得者が所得を増やす度合いでは、確実に前者が上回ると。それはほぼ全時代、全世界的にそうだと統計に基づき発表したのだ。

恐らくそれを見てみんな「はは〜ん」となったのだと思う。オザワも今回ジュネーブで「はは〜ん」となった。そうかそうか。世の中お金持ちは情報と金融とコネを通じて、ごく自然に俺たち以上にお金を増やしていたのねと。それに比べて、最近毎年のように原稿料が下がる俺たち。この差も当然ですわい。今さら言うなってほどに。

ついでにピケティさんの生い立ちを調べると面白くて、両親は'68年のパリ五月革命に関わった闘士で、その後田舎に行って山羊を育てた原理主義者。そんな環境で育った優秀な子供がピケティなのだ。そりゃ社会の不条理も追求したくなるわなと。

ところでアナタ、いま手元に1000万円あったとしてなにしますか? そこにその人の立場、発想がほぼ見えるはずだ。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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