EVオヤジの未来予想図 VOL.12 悪魔の時代と懺悔の旅

アヘッド EVオヤジの未来予想図

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7月初旬に中国、四国地方を襲った豪雨の被害は、日が経つにつれ広がり、死者は200人を超えている。今後、治水、避難指示等、さまざまな原因と問題が論議されるべきだが、この豪雨の基本的な原因は地球温暖化である。温暖化によって海水温が上がり、水蒸気をたっぷりと含んだ巨大な雨雲が発生し、豪雨がもたらされたと考えられる。

text:舘内 端 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
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VOL.12 悪魔の時代と懺悔の旅

VOL.12 悪魔の時代と懺悔の旅

台風が巨大化されて被害が甚大になる事象はすでに多く発生している。たとえば2005年にフロリダ半島を襲い、ルイジアナ州に再上陸したハリケーン(日本でいう台風)のカトリーナは、ニューオリンズ市を襲い、避難命令は43万人に出され、市の8割が水没し、死者はルイジアナ州のおよそ1500人を筆頭にミシシッピー州等を含めて1800人以上に及んだ。

それから7年。今度はニューヨーク市をハリケーン・サンディーが襲った。2012年10月29~30日にかけてのことであった。クオモ・ニューヨーク州知事の要請を受けてブルームバーグ・ニューヨーク市長は、市に緊急事態を宣言し、数々の対策を実行した。28日には、早々と夜7時から鉄道、バス等の公共交通機関の停止を命じた。さらに浸水予想によって区分けされたA~Cの地区のうちC地区には全員退去の強制避難命令を出した。

そうした対策にもかかわらずサンディに襲われたニューヨーク市での死者は43名に及び、街は復旧が危ぶまれるほどの被害を受けた。壊滅的な被害を目の当たりにしたブルームバーグ市長は、共和党の市長ではあったが「地球温暖化に関しては(民主党の)オバマ大統領(当時)を支持する」と言わざるを得なかったと伝えられている。

さてさて、パリ協定を離脱したトランプ大統領が「オバマは正しかった」というような災害に合わなければよいが。もっとも中国、四国地方が豪雨に襲われている頃、酒宴を催し、気勢を上げていた政権政党の人たちもいたので、そんな人たちを選んでしまった日本人の一人である私は何も言えないが。

地球温暖化の最大の原因物質は、言わずもがなの二酸化炭素CO2である。しかも化石燃料の燃焼にともなうCO2が主犯だ。

では自動車はどのくらいCO2を出しているかというと、日本では全体の18%、世界では年間72億トンで全体の23%である。自動車は世界の石油のおよそ半分を使ってしまうからしかたのない話ではあるが、ずいぶんと出すものだ。

ということで、先の豪雨の責任の一端は自動車にある。誰が出したかというと、世界のありとあらゆる人々だ。今や、自動車を保有せずとも、世界中の人が何らかの形で自動車の世話になっているからである。もちろん、たくさん出す人と、あまり出さない人はいる。

つまり、世界中の人々が地球温暖化そして先日の豪雨の犯人なのだ。あなたも、私も。これはなんともつらい話ではないか。人によっては「そんなこといわれたって。知らなかったもの。理不尽だ」と言うかもしれない。

かくいう私も70~80年代にブリブリと排気音を響かせてF1やらGCカーを走らせていたときには、何にも知らなかった。地球温暖化の「地」くらいを知ったのが、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット」あたりのことである。

私に責任はあるが、ないともいえる。個人の問題であることを超えて、20世紀という時代の責任であり、さらにいえば石油の世紀=20世紀を生み出した「近代」の責任なのだ。「近代的ね」あるいは「モダンね」と、称賛の気持ちを込めて呼ばれる時代が、実は悪魔の時代だったということだ。

その「近代」の寵児の一人が(内燃機関)自動車だったのだ。ああ。私はまだまだ懺悔の旅を続けなければならない。

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text:舘内 端/Tadashi Tateuchi
1947年生まれ。自動車評論家、日本EVクラブ代表。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。’94年には日本EVクラブを設立、日本における電気自動車の第一人者として知られている。現在は、テクノロジーと文化の両面からクルマを論じることができる評論家として活躍。
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