乗り換えたクルマは28台以上...そんなモータージャーナリストはなぜ、マツダ デミオ XDツーリング Lパッケージを選んだのか
更新日:2024.09.09
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先日、この原稿を書くにあたって、一体何台くらいクルマを買って乗ったんだろうなって数えてみたら、何と28台!。免許を取って、ん十年、単純計算だと2年ちょっとで1台のペースで買っていたことに改めて驚いた。といっても最近は俄然ペースが落ちている。昔だと早い時で4ヶ月で手放したクルマもあった。でも今は大抵5年は乗る。そうなった理由は、やはり生活環境の変化である。どう変わったかって、若い時は勢いに任せて好きなクルマを買っていたが、子供が出来てまず大きく変わり、成長とともに手間と金が掛かるようになると、おいそれとクルマにバンバンと投資はできない。さらに悪いことに、結婚当時は平気で2台持ちしていたが(場合によっちゃ全部で4台なんていう時もあった)、諸事情から今は1台プラス動かないお荷物が1台という状況。つまりここで問題なのは、我が女房殿はマニュアルの運転ができないため、ATもしくはそれに準じるということが必須条件であるのだ。
文/写真・中村孝仁
文/写真・中村孝仁
クルマを買う理由も生活環境の変化で刻々変わるもんです
そんなわけで、ここ数台購入したモデルは前提の第1歩としてオートマチックモードのあるクルマで、かつ比較的コンパクトなクルマであるということが条件になった。今乗っているのはマツダ・デミオ XDツーリング Lパッケージ。何故これを買うことになったのか。そこには女房殿との壮絶な(大袈裟!)条件闘争があるのだ。
つまり、女房殿はマニュアルがダメ、かっこ良くなきゃ嫌、そこへ持ってきて内装や色などにもあれこれと注文を付ける。一方でこちらとしては、拘りたい部分があって、それはさすがにモータージャーナリストを名乗る以上、乗る必然性が欲しいわけで、ある時は技術革新であったり、またある時は純粋に他では得られないようなスタイルであったりするが、デミオの場合はコンパクト・ディーゼルエンジンであった。
日本市場でコンパクトディーゼルと言うと、古くはいすゞ・ジェミニだったり、ダイハツ・シャレードだったりと、存在していたのだが今はさっぱり。輸入車もかつてはゴルフにディーゼルがあったが、こちらも小さいと前置きすると最近はさっぱりである。そんな時、わずか1.5㍑のターボディーゼルを搭載して出てきたのだから、これはもうずどーんと刺さった。
というのもこの私、昔からディーゼル好きでこれまでに2台、ディーゼル車を購入していてその良さを知っていた。当時買ったのはどれも今風のクリーンディーゼルではなかったし、今のようにパワフルでもなかったが、やはりトルクだけはあってその力強さを知っていたというわけだ。だから、今日本で買える一番小さなディーゼルということで、選ぶにあたって躊躇はなかったのである。
こんなチビがこんなに速くていいの?
デミオといえば、いわゆるBセグメントのコンパクトハッチバックである。横並びに見てみると、日本車でぱっと浮かぶのはトヨタ・ヴィッツだったり日産だとノート。ホンダはフィットとまあ、国内では売れ筋の多いセグメント。輸入車はVWポロ、ルノー・ルーテシア、プジョー208あたりで、最近はこれっ!っていうBセグモデルは見当たらない。(忘れているのあったらゴメンなさい)そんな中でデミオは、まず最近のマツダ魂動デザインをまとったスタイルは個人的には○。
Lパッケージにしたことで内装は部分本革シートである。ここで女房殿は内装は白じゃなきゃダメ…ときた。このクラスで白の本革内装なんて無い。このあたりも、デミオが少なくともエンプティネスターのそこそこ拘りのある夫婦に受ける理由かも知れない。つまり、Bセグでも質的な我慢をしなくて良いという点だ。性能に関して言えば文句はなかった。
パワーこそ105psしかないが、トルクは250Nm。普通のNAガソリンエンジンだと、デビュー当時は下手な中古V6エンジン車と肩を並べるほどのトルクであるから、パーシャルからガンと踏んだ時の速さは「後ろのクルマがみるみる離れて行きまぁ~す!」的加速感を示した。
さらに、言うまでもない美点は燃費である。既に6万キロ以上を後にした今は少し落ちているが、買った当初はリッター19km~20kmは走ってくれた。最近遠出が少なく、ほとんど町内周りに終始しているが、それでも16kmを切ることはない。おまけに我が家周辺は軽油が安く、ハイオクとの差は何と40円!デミオの前は大抵の場合ハイオクだったので、通信交通費が劇的に下がったのは言うまでもない。
もうひとつ、これは最近大きな美点になりつつある。それはドライバーがちゃんと正対してステアリングを握れ、ペダルレイアウトが適正なことだ。フロントタイヤを80mm前に出して、ドライバーがステアリングに正対した状態で、体の中心にペダルがセットされている。つまり、オフセットされていない。だから、ドライビングポジションが非常に良く必然的に長距離走っても体が疲れない。最近はペダルの踏み間違いが問題視されているが、とにかくこのレイアウトはそれを起こしにくいから安全。みんなマツダを見習うべきだ。
やっぱりなんでもオネダリは無理か
とまあ、いいことずくめで買ったつもりだったが、使っているうちには不満も出てくるというもの。そのひとつはわかってはいたものの、やはり不便というやつ。それはラゲッジスペースの小ささとリアシートを倒してそのスペースを広げた時に、フラットな荷室を作れないことだ。
我が家には犬が居る。つい最近までは3匹いて、どこかへ連れて行くにしてもシートを倒してそこに大型のビニールでできたケージを置くのだが、コイツがフラットじゃないから犬も辛そうだった。天地が低くなってもいいから、やはりフラットな荷室を作ってもらいたいものである。
長く乗って気が付いた問題点は、丸型のベンチレーター。これ、首を振る角度が小さくて、思ったところに風を当てられないという欠点がある。まあ、ライバルと比較して室内が狭いのは初めからわかっていたことだが、さすがに5人乗りは辛い。そんなことしないつもりで買ったのだが、最近娘が子供を連れてくると、その5人乗りをしなくてはならない。しかもチャイルドシートにベビーシート。その間に挟まれた狭い空間に座るのは、いつも女房殿。さすがにそれが理由でデミオをやめる日が近づいている。
中村 孝仁 | TAKAHITO NAKAMURA
モータージャーナリスト歴42年。かつては毎年世界各国のモーターショー取材に奔走し、時には自身の名を冠した「中村コージンのシフトアップ」なんていうテレビ番組もこなしていた。現在はモータージャーナリストとしての活動の傍ら、企業の営業マンに運転のマナーや技術を教える「ショーファーデプト」という会社を立ち上げ、インストラクターとしても活躍中。愛車はマツダ・デミオの他に、今やそのメーカーも存在しないフランスの名車、ファセルベガ・ファセリアという稀少車がガレージに眠っている。現在はデミオに代わる次期足クルマを模索中。さらにもう1台狙っているクラシックカーがあるから、クルマとは縁が切れない。