欠点もあるが、魅力いっぱい。買ってよかった中古ロータス エリーゼの初期モデル

ロータス エリーゼ(フェイズⅠ)R-Freaks

※この記事には広告が含まれます

90年代末期に発売されるや否や、日本でも人気となったロータス エリーゼ。フェイズⅢの現在は、非常に現代的で誰にでも乗りやすい車になっていますが、初期のフェイズⅠはいろいろな面でオーナーを選ぶクルマでした。それでも、いまだ僕に強い印象を残してくれているエリーゼの魅力を、お伝えしたいと思います。

山崎 友貴|やまざき ともたか

四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。

山崎 友貴
Chapter
革新的なロータス車だったエリーゼ
欠点もあるが、魅力いっぱい
僕の愛と苦悩の日々の始まり

革新的なロータス車だったエリーゼ

※写真はすべてロータス エリーゼ 111S

現在、50代以上の方であれば、70年代のスーパーカーブームはよく覚えていらっしゃると思います。そして、そのスーパーカーブームを牽引したのが、少年ジャンプに掲載された「サーキットの狼」でした。いま読むと少々荒唐無稽な部分もありますが、主人公がロータス ヨーロッパでライバル車を破っていく様は、当時の少年たちを熱狂させました。

その影響もあって、我々世代の車好きには、”ロータス”は特別。ロータス=スーパーカーだったのです。大人になって「ヨーロッパが、そんな速い車じゃない」ことがわかっても、やはり蓮の葉をかたどったオニギリマークは永遠の憧れでした。

とはいえ、社会人になって、車が買える身分になっても、ロータスは高嶺の花。旧車のヨーロッパはメインテナンスなどの維持費を考えると贅沢品だし、ボンドカーとしても活躍したエスプリなど、買えるわけもありません。ですが、1999年に革新的なモデルが登場したのです。

ロータス伝統の「E」から始まる名のニューモデルは、エリーゼ。当初は“エリーザ”だったようですが、イギリスぽくないということで、エリーゼになったんだとか。このモデルの特徴は、スタンダードという廉価グレードが約500万円ほどで買えるということでした。

それでいて、見た目も造りもレーシー。シャシーはアルミ製で、それを航空機用の接着剤を使って組み立てており、なんと70kgを切るシャシー重量を実現。FRP製のボディ、1.8ℓ直4エンジン、その他のパーツを併せても、車重は675kg(カタログ値)という軽さだったのです。

もちろんミッドシップエンジン・リアドライブ。当時はトヨタのMR2が絶版になったばかりだったので、スポーツカーファンは、大いに盛り上がったものでした。

欠点もあるが、魅力いっぱい

僕がエリーゼを購入しようと思ったのは、フェイズⅠと呼ばれる初期型が生産中止になった2001年のこと。当時、フィアット バルケッタに乗っていた僕は、FFではないライトウエイトスポーツに乗りたいという欲求が高まっていたのです。その時、某中古車店の軒先で、300万円台後半のプライスが付いた1999年式のスタンダードを見つけたのです。

バルケッタは、ソフトトップからの水漏れ以外は、非常に付き合いやすい車でした。中古で買ったせいか、マイナートラブルが出尽くしていたようで、なんの苦労もなく乗ることができたのです。しかもエンジンはバイクのように回るし、名前のように小舟のようにキビキビ走る感じが気に入っていました。ですが、やはりFF。やはりスポーツカーの王道は、FRかMRです。

中古輸入車への不安感がすっかりなくなっていたため、そのエリーゼを迷わず購入。そこから、僕の愛と苦悩の日々が始まりました。

僕の愛と苦悩の日々の始まり

当時はまだ、エリーゼが珍しい車種だったこともあり、購入直後はとにかくご満悦。街でも目立つし、ちょっと面倒くさいけど、ソフトトップを外せば爽快に走ることができたのです(ちなみにこの頃はまだ5月)。

ところが、エリーゼのスタンダードには、英国ローバーが製造している18K4F型1.8ℓ直4DOHCエンジンが搭載されていました。これはケータハムのスーパー7などに搭載されていたものと、基本的には同型です。最高出力は120psでしたが、700kgを切る車体を動かすには十分と思っていました。

しかし18K4F型エンジンは、上位グレードに搭載されていた可変バルブタイミング付きの18K4K型や、後に登場したトヨタ製の1ZZ-FE型に比べると、なんともかったるいものでした。勇ましい音の割には加速が鈍く、ノーマル状態ではとても満足のいくものではなかったのです。

さらに、エリーゼには大きな問題がありました。エリーゼのエンジンは、コクピット後部に横向きで置かれていたのですが、エンジンフードの一部が冷却性を高めるために、金属のメッシュになっていました。

さらにエンジンヘッドのプラグ部分には、カバーがありません。そのため大雨が降ると、プラグホールに溜まった雨水がエンジンに入り込んで、エンジンが止まってしまうという問題を抱えていたのです。また、この年はゲリラ豪雨が多発し、その度に雨が当たらない駐車場などに避難するという始末。

これだけではありません。フェイズⅠには、エアコンが付いていないのです。付いていたのは、ヒーターと送風のみ。それでなくとも地面スレスレに運転席があるような車ですから、夏の路面からの照り返し熱がアルミシャシーを伝って車内に入ってきます。そのうえ、エンジンの放熱がシート裏から伝わってくるので、車内は灼熱地獄…。

さらに渋滞にハマれば、エンジンがオーバーヒートしないように、ヒーターを回すことに。渋滞中の車内の熱さで、愛犬が熱中症になりかけたくらいです。
そんなエリーゼですが、ワインディングに行けば、やはり本領発揮。少々加速が悪くても、シフトワークで補えば十分にスポーティな走りが楽しめます。もちろん、お金に余裕があれば、吸排気系や足周りのチューニングをして楽しむことだってできます。

結局、事情があってエリーゼには1年間しか乗ることができませんでしたが、良くも悪くも非常にいい思い出を残してくれたクルマです。エリーゼの中古車市場を見てみると、現在でも変わらぬ相場ということがわかります。

フェイズⅠでも300万円前後の価格で売買されており、リセールバリューも悪くありません。フェイズⅡにはオプションでエアコンも付けられるようになりましたので、付いた車両を選べば日常生活も快適です。

まるで1/1のプラモデル、まさしくホビーの塊のような1台。スーパーカーに憧れた世代なら、一度乗っておいて損はない楽しい車です。

(写真はすべてR-Freaks(株式会社アール・フリークス)より提供されています)

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細