霊柩車で「親指を隠す」迷信とは?意味と基本ポイント

霊柩車

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かつて日本ではこのような豪華な宮型霊柩車が街中でもよく見られました。霊柩車を見かけたとき、「親指を隠さないと親の死に目に会えなくなる」などと言われた経験はありませんか?

子供の頃に親や祖父母から、「霊柩車を見たら親指を隠しなさい」と教わった人も多いでしょう。

これは、一種の縁起担ぎ・迷信で、霊柩車に遭遇した際に親指を手のひらに握り込むよう隠す風習のことです。

  • 親の死に目に会えなくなる説 (親が亡くなるときに立ち会えない、あるいは、自分が親より先に死んでしまうという意味合いも含む)
  • 両親が早死にする説 (親指=「親の指」という連想から、親に不幸が及ぶという考え)
  • 親族に不幸が及ぶ・縁起が悪い説 (霊柩車を見ると死を連想するため、悪い気を受けてしまうという考え)

CARPRIME編集部

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Chapter
霊柩車で親指を隠す理由は?3つの由来と背景
由来① 親指=親を守るおまじない
由来② 親指は霊魂の出入口
由来③ 仏教礼法「叉手(さしゅ・しゃしゅ)」説
由来④ 風習の変化と転用
地域差と現代の考え方:親指を隠す人・隠さない人
親指を隠すべき?迷信との上手な付き合い方
まとめ|霊柩車と親指の迷信は知識として覚えておこう

霊柩車で親指を隠す理由は?3つの由来と背景

由来① 親指=親を守るおまじない

1つ目は親指の「親」という字や音を、両親の「親」に結びつけて考える説です。

霊柩車は死を連想させるため、「親指を隠さないと親が早く亡くなってしまう」あるいは「親に不幸が及ぶ」といった言い伝えが生まれたとされています。親指という名前そのものが親を想起させるため、親に長生きしてほしい、親を不幸から守りたいという願いを込めて、とっさに親指を握り込んで隠すようになったとも解釈できます。霊柩車を見たときに親指を隠す行為は、裏を返せば「どうか親が無事でありますように」という子どもの素朴な願いの表れだったのかもしれません。


また、「親の死に目に会えない」という言葉もこの説と関連して広まりました。

この言葉の解釈については、一般的に「親の最期に立ち会えなくなる」と受け取られることが多いですが、もう一つの有力な説として、あるいは言葉の古い意味合いからは、「(子が)自分が親より先に死んでしまう」こと、つまり親にとって最大の不幸を指すという意味だとも言われています。 それは子にとっても不幸であり、何よりも親にとってこれ以上ない悲しみです。

だからこそ昔の親たちは、子どもが自分たちより先に亡くなることのないよう、一種の戒めとして「霊柩車を見たら親指を隠しなさい」と教え諭していた、とも考えられています。

由来② 親指は霊魂の出入口

2つ目の由来は、親指が霊魂や穢れ(けがれ)の出入りする場所だと信じられていたことにあります。

古来より日本には「人の親指(特に親指の爪の間)から魂が出入りする」という民間信仰があり、葬列や墓場など死者や霊的なものに関わる場に出くわした際に、悪い霊や穢れが体内に入り込まないように親指を隠す風習が各地で伝承されてきました。江戸時代の文献にも、葬列を見た際に親指を隠すといった描写が見られるとされ、古くから行われていた風習と考えられます。人が亡くなってまだ成仏していない間は霊魂がこの世を漂っており、それが親指の爪の間などから体内に入り込み、災いをもたらすと考えられていたようです。

霊柩車(かつては葬列)に遭遇したときに親指を握り込むのは、死者の霊や悪い気が自分自身や家族に入り込まないよう身を守るためのおまじないだったわけです。

実際、地域や時代によっては霊柩車に限らず、夜道を歩くときや、墓地のそばを通るとき、あるいは恐ろしい話やお化けの話を聞いたときなどにも親指を隠すといった言い伝えもあったようです。

不安な状況でとっさに親指を隠す仕草には、「災いを未然に防ぎたい」「身を守りたい」という先人たちの素朴な願いや知恵が込められていたのかもしれません。

由来③ 仏教礼法「叉手(さしゅ・しゃしゅ)」説

3つ目の説として、仏教の礼法である「叉手(しゃしゅ、または さしゅ)」に由来するという考え方も一部で示されています。

叉手とは、仏教において敬意を表す際に行う手の組み方の一つで、宗派や場面によっていくつかの形があります。例えば、禅宗など一部の宗派では、片方の手の親指をもう片方の手で包み込むようにして胸の前で組む作法があり、これは恭敬の印とされています。

この説では、霊柩車で運ばれる故人や、その葬送の列に対して敬意を表すために、人々がこの叉手に類似した形で(あるいはその簡略化された形で)とっさに手を組み、結果的に親指が隠れるような動作をしたことが、やがて「親指を隠す」という特定の風習として広まったのではないか、と解釈するものです。

ただし、この説がどの程度一般的に受け入れられているか、また仏教の正式な作法と庶民の俗信との直接的な関連性については、さらなる考察が必要とされるかもしれません。

由来④ 風習の変化と転用

以上のように複数の由来がありますが、興味深いのは時代を経て意味合いが変化した可能性です。

もともとは親指を隠すことで「自身の身を護る」「死者の霊を遠ざける」という穢れ避けの呪術的な風習が先にあり(前述の「親指は霊魂の出入口」説とも関連します)、のちにそれが現代に伝わる段階で「親指=親」という連想に置き換えられて「親を守る」という解釈が付加されたとも考えられます。

いずれにせよ、人々が大切な家族を想う気持ちや、目に見えない存在や死といったものへの畏敬の念が、このような言い伝えとなって受け継がれてきたのでしょう。

地域差と現代の考え方:親指を隠す人・隠さない人

日本全国で知られているこの「霊柩車と親指」の風習ですが、地域や世代によって受け止め方には違いもあります。

例えば、北部九州など地域によっては霊柩車だけでなく救急車とすれ違った際にも親指を隠すという人もいるようです。地方の祖父母世代では今でもこの迷信をわりと真剣に信じている方がいる一方、若い世代では「話には聞いたことがあるけど自分はやらない」「そもそもそんな迷信は知らない」という人も増えているかもしれません。
子供の頃は親に言われて親指を隠していたけれど、大人になると次第にやらなくなったという声もあります。


現在では写真のようにシンプルな洋型霊柩車が主流となりつつあります。ひと昔前によく見かけた金色の豪華な装飾が施された宮型霊柩車は減少し、一見しただけでは霊柩車と分かりにくいような落ち着いたデザインの車も増えました。

そのため、特徴的な外観の霊柩車を遠目に見て「お葬式だな」と察する機会自体が少なくなってきており、結果として霊柩車に遭遇して親指を隠すという体験をする人も減っているでしょう。
実際、一部の火葬場の利用規定や地域の申し合わせなどにより、豪華な宮型霊柩車の使用が事実上制限されたり、乗り入れの自粛が求められたりするケースも見られるなど、霊柩車を取り巻く環境は変化しています。


現代人にとって「霊柩車を見たら親指を隠す」はだいぶカジュアルな話題になりつつあります。インターネット上でも「うっかり親指隠し忘れちゃった!親大丈夫かな(笑)」といった冗談混じりの書き込みを見かけることもあります。

迷信だと分かってはいるけれど、「まあ一応隠しておこうかな」という軽い気持ちで親指を握り込む人もいるようです。逆に、「いい大人が親指隠すなんてバカバカしい」と全く気にしない人ももちろんいます。

このように、受け止め方は人それぞれですが、昔に比べてだいぶ言い伝えとしての色合いが強くなり、日常のマナーや習俗として強く意識する人は少なくなってきています。

親指を隠すべき?迷信との上手な付き合い方

結論から言えば、「霊柩車で親指を隠すかどうか」は完全に個人の自由です。迷信ですから、隠さなかったからといって本当に親御さんに不幸が降りかかるわけではありませんし、隠したからといって何か確実なご利益があるわけでもありません。

現代では科学的に考えて根拠がない以上、やりたくなければやらなくても問題ないでしょう。 とはいえ、迷信や言い伝えというものは「信じておけば心が安心する」という心理的なお守りのような側面もあります。

たとえ根拠がなくても、「親指を隠しておいたから大丈夫」と思えるだけで気持ちが落ち着くのであれば、それはそれで一つのプラスになるかもしれません。また、年配の方の中にはこの風習を大事にしている方もいます。おばあちゃんと一緒にいるときに霊柩車に遭遇したら、何も考えず親指を隠してあげれば、きっとおばあちゃんも安心するでしょう。

要は迷信との付き合い方も人それぞれです。ゲーム感覚で「霊柩車だ!親指隠さなきゃ」と楽しむ人もいれば、特に気にしない人もいます。どちらが正しいということはありませんので、自分の気持ちに従って行動すれば良いでしょう。

まとめ|霊柩車と親指の迷信は知識として覚えておこう

「霊柩車を見たら親指を隠す」という言い伝えについて、その意味や由来、背景を解説してきました。昔からの迷信ではありますが、そこには親を想う気持ちや死への畏怖など、先人たちの様々な思いが込められていたことが分かります。最終的に信じるか信じないかはあなたの自由です。

しかし、由来や理由を知っておけば、いざ霊柩車に出会ったときに「どうしよう?」と不安になることもなくなるでしょうし、周囲の人が親指を隠しているのを見ても戸惑わずに済むはずです。知識として知っておくだけでも心のどこかで安心感が得られる -そんな意味で、この言い伝えは現代にも受け継がれているのかもしれません。

信じるかどうかは別として、知っておいて損はない豆知識と言えるでしょう。
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