SPの箱乗りとは?暴走族から選挙カー・警護車両まで危険性と法律を徹底解説

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あなたは総理大臣や大統領など、要人を乗せた車の一行を目撃したことはありますか?ブラックで統一された高級車の車列や、黒いスーツに身を包んだ私服警官の姿は、ただならぬ雰囲気です。そうそう間近で見られるものではないですが、テレビなどで見たことがあるという方も多いかと思います。そこでよくある光景が、SPによる箱乗り。これって危険行為に該当するのでは?警察だから許されるのでしょうか?その理由を調べてみました。

CARPRIME編集部

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Chapter
箱乗りとは|定義と起源
類似行為「サンルーフサーフィン」との違い
暴走族文化で広まった箱乗りの実態
実際に起きた死亡事故の事例
取締り強化の最新動向
SP警護で注目された「SP箱乗り」|要人車列の特殊技法
SPが箱乗りするタイミングと装備
選挙カーの箱乗りは合法か?|特例規定と安全配慮
道路交通法施行令の規定を詳しくチェック
安全配慮の実例
箱乗りが招く重大事故と法律リスク
損害賠償と保険の落とし穴
なぜ箱乗りはその場で取り締まられないことがあるのか
取締りのフローとネット通報の活用
まとめ|箱乗りは絶対に真似してはいけない危険行為

箱乗りとは|定義と起源

「箱乗り」とは、自動車の助手席側の窓枠に腰掛け、上半身を車外に乗り出す乗車スタイルを指します。

もともとはリアカーやトラックの荷台(箱)の縁に腰掛ける行為を意味していましたが、時代とともに暴走族が車の窓枠に腰掛ける行為を象徴する言葉として定着しました。

現在では、窓枠に腰掛けていなくても窓から大きく体を乗り出す行為全般を「箱乗り」と呼ぶようになっています。走行中の車両から身を乗り出す行為は極めて危険で、最悪の場合転落して重大事故につながる恐れがあるため、決して真似してはいけません。

類似行為「サンルーフサーフィン」との違い

欧米ではサンルーフから上半身を出して立ち上がる「サンルーフサーフィン」も問題視されていますが、日本の道路交通法では、窓やサンルーフから体を出す行為は、乗車方法違反(道路交通法第55条第2項)や座席ベルト装着義務違反(同法第71条の3)に該当する可能性があります。

箱乗りもサンルーフサーフィンも法的評価は同様であり、「窓だから軽い違反」という誤解は禁物です。

暴走族文化で広まった箱乗りの実態

昭和から平成初期にかけて全盛期を迎えた暴走族にとって、箱乗りは“武勇伝”の一つでした。

深夜の公道を改造車やオートバイで走行し、低速の蛇行運転や車外に身を乗り出す箱乗りを仲間内で競い合うことで、威圧感や連帯感を誇示していたのです。

しかし箱乗り中に転落して死亡する事故が実際に発生し、運転者が業務上過失致死で逮捕されるケースもありました。社会問題化を受け、共同危険行為を禁じる罰則の強化が進み、暴走族による箱乗りは次第に下火となっていきました。

実際に起きた死亡事故の事例

  • 2004年11月 北海道釧路町
暴走行為中に助手席の20歳男性が転落死。運転手は業務上過失致死容疑で逮捕されました。警察は「転落の可能性を認識しつつ無謀運転を続けた」と判断しています。


  • 2022年6月 千葉県木更津市
知人が車外につかまったまま約50m走行し転落死させたとして、運転者が過失運転致死で逮捕。ふざけ半分の行動が一転して重大事故へ発展しました。


  • 2021年11月 首都高速川崎線
運転者自身が窓枠に腰掛けたまま高速道路を走行し、動画を投稿。後日20代の男2人が共同危険行為等禁止違反で逮捕されています。

取締り強化の最新動向

首都高速道路などでは危険運転動画の投稿が増えた2020年以降、警察がSNS上の情報を端緒とした捜査体制を強化し、ナンバープレートや映像から後追いで検挙するケースが増えています。

道路交通法に定める共同危険行為で検挙された場合は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科される可能性があり、重い事案として扱われます。

SP警護で注目された「SP箱乗り」|要人車列の特殊技法

近年「SPの箱乗り」というフレーズがネット上で話題になりました。これは要人警護を担当する警察のSP(セキュリティポリス)が首相やVIPの車列で、走行中の車両から身を乗り出して周囲の車両を誘導する映像が拡散されたことに由来します。

一見危険に見えるものの、車列が安全かつ円滑に合流するための高度な警護テクニックで、赤色灯や手信号で周囲に走行制止を促します。

道路交通法施行令第26条の3の2第1項では、警護対象者の身辺警護や警察官の公務など、その性質上シートベルトを装着して自動車を運転・乗車することが困難と認められる職務に従事する場合にシートベルト装着義務が免除されるため、SPの行為はこうした規定に基づく特例措置と考えられます。

ただし危険を伴う行為であることに変わりはなく、一般人が真似してよいものではありません。

SPが箱乗りするタイミングと装備

首都高速への合流、料金所付近、交差点での右左折時など、追突・割り込みリスクが高い地点で実施されるのが通例です。

車外に出る隊員は厚手の耐切創グローブを装着し、肩が窓枠に密着する姿勢を取ることで転落リスクを最小化しています。

2024年10月の石破総理車列でも同様の動作が確認され、「命綱なしで立ったまま乗り出すわけではない」というプロの技術が注目されました。

選挙カーの箱乗りは合法か?|特例規定と安全配慮

選挙期間中、候補者が選挙カーの窓や天井から身を乗り出して手を振る光景も広義の箱乗りに当たります。

公職選挙法上の選挙運動正当な民主的活動とされ、道路交通法施行令第26条の3の2第1項第8号では「公職選挙法の規定による選挙運動」を行うために自動車に乗車する場合、シートベルト装着義務が免除されます。

そのため候補者やスタッフが車上からアピールする行為自体は直ちに違反とはなりません。しかし転落や接触事故のリスクは残るため、自治体選管が候補者へ自粛を要請する事例もあります。

速度を極力落とす、停車中のみ身を乗り出す、転落防止用の演説台を設置するといった安全対策が求められています。

道路交通法施行令の規定を詳しくチェック

免除根拠は、道路交通法施行令第26条の3の2第1項第8号に規定される「公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の規定による選挙運動又は政治活動(一定の期間内に行われるものに限る。)を行うため自動車に乗車させるとき」に該当します。

もっとも車両移動中は最低限の安全確保が前提であり、信号待ちで停止した際のみ立ち上がるなど、選挙管理委員会がガイドラインを通知する自治体も増えています。

安全配慮の実例

東京都内の某市長選では、候補者が腰下までホールドするハーネス付き演説台を採用。低速走行時でも体が揺れにくく、聴衆への視認性も向上したとして、以降の地方選挙で同様の車両改造例が増えています。

箱乗りが招く重大事故と法律リスク

一般のドライバーや同乗者による箱乗りは極めて危険です。急ブレーキやハンドル操作のミスで簡単に振り落とされ、本人が死傷するだけでなく、落下した人を他車が轢いたり、回避行動による二次事故を誘発する恐れがあります。

法律面でもシートベルト非着用違反に加え、悪質な場合は共同危険行為の禁止(道路交通法第68条)や危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。

首都高速道路で運転者自身が箱乗り状態で走行した事件では、運転者・同乗者ともに道路交通法違反で逮捕されています。愚かな一瞬の行動が重大な刑事責任と経済的賠償を招くことを忘れてはなりません。

損害賠償と保険の落とし穴

自家用車で箱乗り中に転落死事故を起こした場合、自賠責保険は被害者に対して支払い義務を負いますが、加害者が同乗者(友人)である場合は運転者への重過失減額が適用されるケースもあります。

さらに任意保険は「被保険者による故意・重大な過失」に該当し、保険金の一部または全額が不払いとなる可能性が高い点に注意が必要です。

なぜ箱乗りはその場で取り締まられないことがあるのか

SNSなどで箱乗り走行が拡散されると、「警察はなぜ現場で取り締まらないのか」と疑問を抱く声が上がります。

実際、警察が無理に追跡すればさらなる危険を招く恐れがあるため、その場で即時検挙できないケースもあります。しかしナンバープレートや映像から後日車両と人物を特定し、危険運転を行った者は書類送検や逮捕で法的責任を問われます。

一方でSPや選挙カーの行為は特例規定に基づく適法な業務執行や選挙運動であり、「取り締まられない」のではなく「法の下で許容されている(またはその可能性がある)」点が根本的に異なります。

取締りのフローとネット通報の活用

首都高速道路株式会社と警視庁および関連県警は近年、危険運転に関する情報収集体制を強化しています。

各都道府県警察では、ウェブサイトや専用窓口を通じて一般ユーザーからの危険運転に関する情報提供を受け付けており、SNS上の動画投稿なども捜査の端緒として活用されています。

AIによる映像解析ナンバープレート照合技術なども捜査に用いられることがあります。これらの取り組みにより、後日検挙に至るケースも増えており、「その場で捕まらなくても逃げ切れるわけではない」現実が浮き彫りになっています。

まとめ|箱乗りは絶対に真似してはいけない危険行為

箱乗りはスリルを感じるかもしれませんが、公道で行えば法律違反かつ極めて危険な行為です。暴走族文化では一時代を築きましたが、死傷事故や厳罰化で社会的に排斥されました。

SPや選挙カーの行為は職務・選挙運動という特別な事情に伴う例外的な措置であり、一般人が真似してよい理由にはなりません。

交通ルールを守り、安全で安心な社会づくりに協力しましょう。ハンドルを握る者は自他の命を守る責任を負っており、決して箱乗りのような危険行為に手を出してはいけません。
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