ロータリーファン必見!4ローター化で手に入る音・パワー・ロマンについて解説!
更新日:2025.08.12

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ロータリーエンジン愛好家にとって、「4ローターエンジン」は究極のロマンと言える存在です。2ローターを持つRX-7やRX-8など市販車のエンジンを4ローターに改造できたら…と夢見る方もいるでしょう。
本記事では、ロータリーエンジン4ローター化の魅力や代表的な事例、必要な費用の内訳、構造上の変更点、法的な注意事項、デメリット、そして気になる疑問への回答まで、最新情報を盛り込みながら詳しく解説します。
本記事では、ロータリーエンジン4ローター化の魅力や代表的な事例、必要な費用の内訳、構造上の変更点、法的な注意事項、デメリット、そして気になる疑問への回答まで、最新情報を盛り込みながら詳しく解説します。
- Chapter
- 4ローターエンジンとは?レースが生んだモンスターロータリー
- 4ローター化の魅力:圧倒的な音・パワー・希少性
- 圧倒的なサウンド
- パワーとトルクの向上
- 希少性と独自性
- 伝説のレーシングカー:マツダ 787B
- 国内チューニングショップによる4ローター搭載の実例
- 1. ワイズプロデュース & SCOOT製作のFD3S
- 2. SCOOT(スクート)製作のデモカー
- 3. Anniversary Racing Factory(アニバーサリー)製作のFC3S
- 4. RE雨宮(RE Amemiya)による異色のプロジェクト
- 海外の4ロータープロジェクト
- ニュージーランドのドリフトキング:「マッド・マイク」
- 最新プロジェクト:RX-3ワゴン「FURSTY」
- その他の注目プロジェクトとグローバルな部品供給
- 4ローター化にかかる費用は?最新相場と内訳
- 4ローターエンジン基本キット(ショートエンジン):約300万円〜
- フルチューン仕様へのアップグレード:+40万円前後〜
- ペリフェラルポート仕様コンプリートエンジン:約400万円〜
- 補機類・周辺パーツ費用:数十万円〜
- エンジン搭載・車両側改造費(工賃):数百万円
- 車検対応の追加対策費:〜100万円前後
- 法的な注意点と車検取得のハードル
- 1. 構造変更の届出と改造申請
- 2. 排出ガス規制への適合
- 3. 騒音規制への適合
- 4. その他保安基準
- 4ローターエンジンのデメリット・課題点
- コストが莫大
- メンテナンス性と信頼性
- 扱えるショップが限られる
- 車両バランスへの影響
- 燃費・環境性能の悪化
- リセールバリュー皆無
- よくある質問(FAQ)とその回答
- Q1: 4ローター化した車は公道を走れますか?
- Q2: エンジン出力はどのくらい上がりますか?
- Q3: エンジンの寿命やメンテナンス周期はどうなりますか?
- Q4: もう少し安くパワーアップする方法はありますか?
- Q5: 4ローターエンジンを作ってくれる業者はどこですか?
- おわりに
- 豆知識:マツダ787Bの快挙
4ローターエンジンとは?レースが生んだモンスターロータリー
まず、4ローターエンジンとは何かを押さえておきましょう。ロータリーエンジンは通常、ローター(おむすび型の回転ピストン)を2つ備えています。一方、4ローターエンジンはローターを4つ連結したエンジンで、もっぱらレース用に開発・使用されてきました。マツダは市販車には2ローター(一部3ローターの20B-REW)までしか投入しませんでしたが、ル・マン24時間レース参戦車両などには4ローターエンジンを搭載しています。
具体的には、1980年代後半のグループCカーで13J型4ローター(757や767Bに搭載)、そして1991年のル・マン優勝車マツダ787BにはR26B型4ローターエンジンが積まれました。R26Bは4室合計の排気量2616 cc(654 cc×4)を誇り、市販2ローターの13B(1308 cc)を倍増させたような規模のエンジンです。
ロータリーエンジンは構造上、ローター・ハウジング・エキセントリックシャフト(偏心軸)など主要部品を並列に繋げることでローター数を増やせます。理論上は3ローターだけでなく6ローターや8ローターも製作可能ですが、実際にはエキセントリックシャフトの設計が最大の課題です。4ローター以上ではシャフトを分割して組み立てる「多層構造シャフト」が必要となり、精度確保や強度維持が難しく高速回転時の振れを抑えるために莫大なコストがかかります。そのため、4ローターの自作はかつて非常に困難で、1970〜80年代にはプライベーターが試行錯誤したものの寿命が短く実用性に乏しかった記録もあります。
しかし近年では、技術の進歩とパーツ供給の充実により個人やショップでも4ローターエンジンを製作可能になってきました。日本の自動車税区分では、4ローター(654 cc×4×1.5換算)は約3.9 L相当となり維持費は高めです。それでも「夢の4ローターを愛車に載せたい」という挑戦は、ストリートでも現実味を帯びてきています。
具体的には、1980年代後半のグループCカーで13J型4ローター(757や767Bに搭載)、そして1991年のル・マン優勝車マツダ787BにはR26B型4ローターエンジンが積まれました。R26Bは4室合計の排気量2616 cc(654 cc×4)を誇り、市販2ローターの13B(1308 cc)を倍増させたような規模のエンジンです。
ロータリーエンジンは構造上、ローター・ハウジング・エキセントリックシャフト(偏心軸)など主要部品を並列に繋げることでローター数を増やせます。理論上は3ローターだけでなく6ローターや8ローターも製作可能ですが、実際にはエキセントリックシャフトの設計が最大の課題です。4ローター以上ではシャフトを分割して組み立てる「多層構造シャフト」が必要となり、精度確保や強度維持が難しく高速回転時の振れを抑えるために莫大なコストがかかります。そのため、4ローターの自作はかつて非常に困難で、1970〜80年代にはプライベーターが試行錯誤したものの寿命が短く実用性に乏しかった記録もあります。
しかし近年では、技術の進歩とパーツ供給の充実により個人やショップでも4ローターエンジンを製作可能になってきました。日本の自動車税区分では、4ローター(654 cc×4×1.5換算)は約3.9 L相当となり維持費は高めです。それでも「夢の4ローターを愛車に載せたい」という挑戦は、ストリートでも現実味を帯びてきています。
4ローター化の魅力:圧倒的な音・パワー・希少性
圧倒的なサウンド
4つのローターが生み出す排気音は、2ローターでは味わえない独特の高周波サウンドを奏でます。4ローターNAエンジン搭載車の走行音は「往年の787Bそのもの!」と形容されるほどで、見る者聞く者に強烈な印象を与えます。
ペリフェラルポート仕様で高回転型に仕上げた4ローターは、アイドリング時の「ババババッ」という不規則なサウンドから、ひとたびアクセルを踏み込めば甲高く響き渡るレーシングカーさながらの咆哮へと変化します。そのサウンド体験は4ローターならではの醍醐味でしょう。
ペリフェラルポート仕様で高回転型に仕上げた4ローターは、アイドリング時の「ババババッ」という不規則なサウンドから、ひとたびアクセルを踏み込めば甲高く響き渡るレーシングカーさながらの咆哮へと変化します。そのサウンド体験は4ローターならではの醍醐味でしょう。
パワーとトルクの向上
排気量が2ローターの倍となる4ローターでは、NA(自然吸気)でも500〜600馬力級の出力を比較的安定して引き出すことが可能です。事実、国内チューニングカーの例では4ローターNAペリ仕様で585ps/60kgmを発生させたFD3Sや、約600馬力を絞り出すRX-3改が実在します。
さらにターボ過給を組み合わせれば、800psを超える怪物エンジンに仕立てることも夢ではありません。これは同等パワーを2ローターで得ようとすると相当な過給や高回転化が必要で、耐久性やレスポンス面で不利になることを考えれば、排気量が倍の4ローターのアドバンテージは明らかです。
さらにターボ過給を組み合わせれば、800psを超える怪物エンジンに仕立てることも夢ではありません。これは同等パワーを2ローターで得ようとすると相当な過給や高回転化が必要で、耐久性やレスポンス面で不利になることを考えれば、排気量が倍の4ローターのアドバンテージは明らかです。
希少性と独自性
公道を走る車両で4ローターエンジンを搭載している例はごく僅かであり、イベント会場やサーキットでも人目を引くこと必至です。「誰も見たことのない世界」を味わえる唯一無二の体験は、莫大なコストや労力をかけても手に入れたいと感じさせる魅力でしょう。エンジンフードを開けて現れる4連のローターハウジングや吸気ファンネルの壮観な眺めは、車好きにとってこれ以上ない自己満足と所有欲を満たしてくれます。
伝説のレーシングカー:マツダ 787B
まず触れておきたいのが、4ローターエンジンの知名度を不動のものとしたマツダ787Bです。1991年のル・マン24時間レースで総合優勝を果たしたこの車は、世界で唯一ル・マンを制したロータリーエンジン車です。その心臓部こそがR26B型4ローターエンジンでした。排気量2616ccから公称700馬力を発生させ(レース本番では信頼性重視で約650馬力に調整)、可変インテークシステムや3プラグ点火など先進技術も投入された究極のロータリーです。
ちなみに、787B以外のマツダのレース車両では、前身の767/767Bが13J改系4ローターエンジンを搭載していました。こちらも自然吸気ながら600馬力級の性能を発揮し、マツダのロータリーレーサーの系譜を築いています。レースシーンで磨かれた技術があったからこそ、今日の4ローター市販車改造も実現していると言えるでしょう。
ちなみに、787B以外のマツダのレース車両では、前身の767/767Bが13J改系4ローターエンジンを搭載していました。こちらも自然吸気ながら600馬力級の性能を発揮し、マツダのロータリーレーサーの系譜を築いています。レースシーンで磨かれた技術があったからこそ、今日の4ローター市販車改造も実現していると言えるでしょう。
国内チューニングショップによる4ローター搭載の実例
日本国内でも、腕利きのロータリー専門ショップが4ローター化に挑み、その成果を世に送り出しています。スクート(SCOOT)やRE雨宮、アニバーサリー(Anniversary Racing Factory)、TCP Magicといった有名ショップは、早くから独自に4ローターエンジンを開発・製作してきました。
1. ワイズプロデュース & SCOOT製作のFD3S
東京オートサロン2025に展示された「ワイズプロデュース4ローター with スクート」FD3S RX-7は、スクート製4ローターエンジンを搭載し、メディア取材では最高出力600ps/最大トルク50kgm以上を発生すると紹介されたモンスターマシンです。ワイドボディ化された迫力の外観が目を引きますが、公道走行不可のサーキット専用車でした。
2. SCOOT(スクート)製作のデモカー
スクートはFD3S RX-7に4ローターNAエンジンを搭載したデモカーを2000年代から製作し、「787Bのような快音をストリートで実現する」というコンセプトで知られています。同社の製作した4ローター搭載車は、その圧倒的なサウンドだけでなく高い走行性能も証明しており、筑波サーキットで1分を切る「59秒台」のラップタイムを記録した実績があります。
3. Anniversary Racing Factory(アニバーサリー)製作のFC3S
また、アニバーサリーが製作したFC3S RX-7も特筆すべき存在です。見た目はノーマル風ながら中身は4ローターNAにスワップされており、その最高出力は620馬力に達します。同店は過去にも何度も4ローターを製作しており、ストリートで十分な耐久性を確保するノウハウを蓄積しています。エキセントリックシャフトはニュージーランド製の高品質品を採用し、信頼性と強度を両立させているとのこと。実際に海外製パーツの吟味と独自テストを重ね、オリジナル4ローターユニットを完成させている点は注目に値します。
4. RE雨宮(RE Amemiya)による異色のプロジェクト
さらに異色な例として、RE雨宮が手掛けたフェラーリ・テスタロッサの4ローター化プロジェクトも挙げられます。依頼主のオーダーでフェラーリV12を降ろし、代わりに4ローターターボエンジン(800ps超)をミッドシップ搭載するという前代未聞の改造でした。車体のフレーム補強やスバル用6速MTの流用など大胆な手術を伴いながらも、公認車検取得を目指した意欲作です。
海外の4ロータープロジェクト
ニュージーランドのドリフトキング:「マッド・マイク」
海外の4ロータープロジェクトを語る上で欠かせないのが、ニュージーランド出身のプロドリフトドライバー、「マッド・マイク」ことマイク・ウィデット選手です。彼は自身の競技車両にマツダのロータリーエンジンを長年愛用しており、4ローターエンジンをいち早くドリフト界に導入したパイオニア的存在として世界的に知られています。
彼の代名詞ともいえるRX-7ベースの「MADBUL」や、RX-8ベースの「BADBUL」には、自然吸気(NA)やツインターボ仕様の4ローターエンジンが搭載されてきました。その狂気じみた高回転サウンドと、アグレッシブなドリフトスタイルで世界中のファンを魅了しています。
彼の代名詞ともいえるRX-7ベースの「MADBUL」や、RX-8ベースの「BADBUL」には、自然吸気(NA)やツインターボ仕様の4ローターエンジンが搭載されてきました。その狂気じみた高回転サウンドと、アグレッシブなドリフトスタイルで世界中のファンを魅了しています。
最新プロジェクト:RX-3ワゴン「FURSTY」
近年マッド・マイク選手が手掛けたマシンの中でも特に注目を集めたのが、1974年式サバンナRX-3ワゴンをベースに製作された「FURSTY(ファースティ)」です。この車両は、日本の著名なロータリーチューニングショップ「TCP Magic」も製作に協力しており、その心臓部には自然吸気(NA)の4ローターエンジンが搭載されています。
最大出力は600馬力を発生し、その甲高いエキゾーストノートはル・マンを制した787Bを彷彿とさせます。この「FURSTY」は、東京オートサロン2024で世界初公開され、日本のファンに強烈なインパクトを与えました。
最大出力は600馬力を発生し、その甲高いエキゾーストノートはル・マンを制した787Bを彷彿とさせます。この「FURSTY」は、東京オートサロン2024で世界初公開され、日本のファンに強烈なインパクトを与えました。
その他の注目プロジェクトとグローバルな部品供給
マッド・マイク選手以外にも、ロータリーエンジンのカスタムは世界中で行われています。
アメリカでは、人気YouTuberのロブ・ダーム(Rob Dahm)氏が、世界初となる4ローターエンジンAWD(四輪駆動)のRX-7を自作するプロジェクトで大きな注目を集めています。また、オーストラリアやニュージーランドの専門ショップは、さらに上を行く6ローターエンジンの開発・製作にも成功しており、ロータリーエンジンの可能性を押し広げています。
アメリカでは、人気YouTuberのロブ・ダーム(Rob Dahm)氏が、世界初となる4ローターエンジンAWD(四輪駆動)のRX-7を自作するプロジェクトで大きな注目を集めています。また、オーストラリアやニュージーランドの専門ショップは、さらに上を行く6ローターエンジンの開発・製作にも成功しており、ロータリーエンジンの可能性を押し広げています。
4ローター化にかかる費用は?最新相場と内訳
4ローターエンジン基本キット(ショートエンジン):約300万円〜
13Bベースの4ローター用エキセントリックシャフト&ハウジング一式(サイドポート仕様)。いわゆるショートブロック相当で、補機類は含まない価格帯です。
フルチューン仕様へのアップグレード:+40万円前後〜
上記基本キットをさらに高出力化するオプション。ポート拡大や強化部品組み込みなど、「フルチューンエンジン」に仕立てる場合の追加費用で、選択する仕様により変動します。
ペリフェラルポート仕様コンプリートエンジン:約400万円〜
最初からペリフェラルポートのNA4ローターを組んだ完成エンジンがこのくらいの価格帯。ただしマニホールド類・マフラー・クラッチ・ECU・配線などは含まれず、あくまでエンジン本体のみの参考価格です。
補機類・周辺パーツ費用:数十万円〜
タコ足(エキマニ)やマフラー、インテークマニホールド、追加インジェクター、ラジエーター強化、オイルクーラー追加、燃料ポンプ/ライン、エンジンマウント加工、クラッチやミッション補強など、車両にエンジンを載せるために必要なパーツ類。仕様によって必要なものが異なるため一概にいくらとは言えませんが、最低でも数十万〜100万円以上は見込んでおくべきでしょう。
エンジン搭載・車両側改造費(工賃):数百万円
エンジン単体を購入しても、車両に搭載し動く状態に仕上げるまでには大掛かりな加工・調整が必要です。エンジンルームの物理的な収め込み(4ローターは長いため、FD3Sではミッションを後方に10 cm下げて搭載する工夫をした例もあります)、排気系の新設、配線やコンピュータのセッティング、シャシー補強など、多岐にわたる作業になります。
あるショップの試算では、FD3Sに4ローターを載せて車検取得まで行うには最低でも約700万円の費用が必要だったとのことです。これは工賃とワンオフ部品製作、各種手続き費用を含めた金額と言えます。
あるショップの試算では、FD3Sに4ローターを載せて車検取得まで行うには最低でも約700万円の費用が必要だったとのことです。これは工賃とワンオフ部品製作、各種手続き費用を含めた金額と言えます。
車検対応の追加対策費:〜100万円前後
公道走行可能な状態に仕上げる場合、最大のネックとなるのが騒音規制です。4ローターエンジンは音量が大きく、このままでは車検に合格しません。
そのため、大型サイレンサーの製作・装着や燃料タンク移設(消音器スペース確保のため)等の対策が必要になり、その予算として100万円程度は見込む必要があります。また、排ガス対策として触媒の追加やセッティング調整も必要でしょう。
そのため、大型サイレンサーの製作・装着や燃料タンク移設(消音器スペース確保のため)等の対策が必要になり、その予算として100万円程度は見込む必要があります。また、排ガス対策として触媒の追加やセッティング調整も必要でしょう。
合計すると、エンジン本体300〜400万円+周辺パーツ・搭載加工に500〜600万円超となり、最終的には最低でも約800万円以上の費用がかかる計算になります。実際には仕様変更や不測のトラブル対応などでさらにコストが上振れする可能性も高く、「正確な見積もりは難しい」というのがショップの本音のようです。ケースによっては総額1000万円前後に達するプロジェクトも珍しくなく、時間もお金も惜しみなく注げる情熱が求められます。
なお、エンジンを海外から輸入する場合は、為替レートや送料・関税も絡んできます。
ニュージーランドやアメリカから完成4ローターエンジンを取り寄せることも不可能ではありませんが、いずれにせよトータルの出費は国内製作と同等かそれ以上になるでしょう。4ローター化は極めて特殊なカスタムであるため、「時価」の要素が大きく、依頼するショップとじっくり打ち合わせて見積もりを取るしかないのが現状です。
ニュージーランドやアメリカから完成4ローターエンジンを取り寄せることも不可能ではありませんが、いずれにせよトータルの出費は国内製作と同等かそれ以上になるでしょう。4ローター化は極めて特殊なカスタムであるため、「時価」の要素が大きく、依頼するショップとじっくり打ち合わせて見積もりを取るしかないのが現状です。
法的な注意点と車検取得のハードル
1. 構造変更の届出と改造申請
エンジンスワップを行った場合、車両の登録内容(車検証記載事項)に変更が生じます。ロータリーエンジンの場合はエンジン型式や排気量、燃料種別などが該当します。2ローターから4ローターに変更すると排気量換算が約1.5倍以上に増加するため、所定の手続きを踏んで構造等変更検査を受け、新しいエンジン情報で車検証を書き換える必要があります。改造内容によっては運輸支局に事前に図面や改造概要を提出する改造申請(いわゆる「車検前の認可」)が求められるケースもあります。
2. 排出ガス規制への適合
エンジンを載せ替えた車両は、そのエンジンの初年度登録年式相当の排ガス基準に適合していることを求められます。特にペリフェラルポート仕様の4ローターは燃焼効率や排ガス浄化性能が市販2ローターより劣る場合があるため、触媒コンバータの追加や入念なフューエルトリム調整で有害物質の排出を抑える工夫が不可欠です。
3. 騒音規制への適合
車検の加速騒音試験では近接排気騒音が規制値以内であることが条件となります。4ローター+大径マフラー直管ではまず間違いなくアウトなので、大容量サイレンサーの装着やインナーサイレンサー併用で音量を下げる必要があります。それでもペリフェラルポートの場合、アイドリングからバラバラと炸裂音が出るため静粛化には限界があります。燃料タンクをトランクに移設してまで特大サイレンサーを装備し、音量低減を図った例も存在しますが、ここまでして辛うじて検査をクリアできるかどうかという厳しさです。
4. その他保安基準
エンジン重量やパワーが増すことによるブレーキ性能や重量配分への影響も考慮が必要です。極端に重量が増えるようならサスペンションやタイヤのロードインデックス、ブレーキ容量もアップグレードしておかないと整備不良とみなされかねません。また、改造箇所の工作精度が低いと最悪公道走行中の危険を招くため、溶接部の強度や増設した部品の確実な固定など、保安基準に照らして問題ないか専門家によるチェックが必要です。
実際、公認ナンバーを取得している4ローター改造車はごくわずかで、多くはイベント展示や競技専用として割り切られています。とはいえ、不可能ではありません。信頼できるショップと協力し、一つ一つの課題をクリアしていけば、夢の「公道走行可能な4ローター車」を実現することもできるでしょう。
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4ローターエンジンのデメリット・課題点
コストが莫大
初期製作費用がとてつもなく高額です。エンジン本体の製作・購入費から車両側の改造費、諸手続きまで含めると軽く数百万円単位で出費が嵩みます。さらに完成後も、オイル交換一つとってもローター数が倍なので使用量が増えるなど維持費も割高です。
メンテナンス性と信頼性
4ローターは完全なワンオフエンジンである場合がほとんどなので、メンテナンスのノウハウやパーツの入手性で不利があります。高出力チューンゆえ、定期的なオーバーホールが前提となるでしょう。使用状況にもよりますが数千km〜数万km毎に分解点検くらいの心構えが必要です。
扱えるショップが限られる
4ローターの製作・チューニングを任せられるショップはごく一部のロータリー専門店に限られます。順番待ちや地理的ハードルが生じやすい点も留意しましょう。
車両バランスへの影響
エンジン長が増し重量も増えることで、元の車両の重量配分やハンドリングが変化します。対策として薄型ハウジングを用いた短縮仕様の4ローターを開発する例もありますが、その分コストが増大します。
燃費・環境性能の悪化
排気量が倍になる4ローターは単純計算で燃料消費量も倍近くになります。街乗りでリッター一桁前半、場合によってはリッター3〜4 km程度も覚悟が必要です。
リセールバリュー皆無
極端な改造車は買い手が限られるため、資産価値は期待できません。完全なる自己満足の世界と割り切る必要があります。
よくある質問(FAQ)とその回答
Q1: 4ローター化した車は公道を走れますか?
理論上は可能ですが、車検適合させるハードルは非常に高いです。排ガス・騒音などクリアすべき基準が多く、かなりの追加改造と費用が必要になります。実際にナンバー取得まで完了した例は極めて少なく、ほとんどはサーキット専用や展示専用です。どうしても公道走行したい場合は、専門ショップと相談し綿密な対策を講じる必要があります。
Q2: エンジン出力はどのくらい上がりますか?
NA仕様で450〜600馬力が目安です。レーシングカーのR26Bは700馬力近くに達していましたし、市販車改造でも600馬力超の例があります。ターボ過給を組む場合はさらに伸び、800馬力以上も可能です。
Q3: エンジンの寿命やメンテナンス周期はどうなりますか?
一般的な市販エンジンより短いと考えてください。目安としては数千kmごとに調子を確認し、1万km走行毎に腰下点検くらいの慎重さが望ましいでしょう。
Q4: もう少し安くパワーアップする方法はありますか?
費用対効果を重視するなら20B(3ローター)への載せ替えや、2ローターのハイパワーターボ化の方が現実的です。4ローターほどの音とフィーリングは得られませんが、コストは抑えられます。
Q5: 4ローターエンジンを作ってくれる業者はどこですか?
国内ではスクート、RE雨宮、アニバーサリー、TCP Magic、ロータリーエンジン研究所、ワイズプロデュースなどが実績を持ちます。海外ではニュージーランドのPPREやオーストラリアのBillet Rotaryなどが有名です。
おわりに
4ローター化は莫大なコストと高度な技術力、そして深い愛と情熱が求められる改造ですが、それだけの価値がある唯一無二の体験をもたらします。4ローターエンジンが奏でる音、得られるパワー、そして完成したマシンを前にしたときの高揚感は、他では決して味わえないものになるでしょう。
4ローター化は決して万人にお勧めできるメニューではありません。しかし「人生を懸けてでもやり遂げたい」と強く惹かれるのであれば、その夢に挑戦してみるのもまた車趣味の醍醐味です。最新情報と先人の知見を取り入れつつ、ぜひ後悔のないよう準備を重ねてください。夢の4ローターがあなたの愛車で目覚める日を、心から応援しています。
4ローター化は決して万人にお勧めできるメニューではありません。しかし「人生を懸けてでもやり遂げたい」と強く惹かれるのであれば、その夢に挑戦してみるのもまた車趣味の醍醐味です。最新情報と先人の知見を取り入れつつ、ぜひ後悔のないよう準備を重ねてください。夢の4ローターがあなたの愛車で目覚める日を、心から応援しています。
豆知識:マツダ787Bの快挙
1991年、マツダ787Bは日本車として初めてル・マン24時間レースで総合優勝を果たしました。この優勝は現在(2025年)に至るまで日本メーカー唯一のル・マン制覇であり、使用されたロータリーエンジン(R26B型4ローター)は史上唯一のル・マン優勝エンジンとして今も伝説的存在です。レース後、欧州ではロータリーエンジンがル・マンで禁止されてしまったため、ある意味“不滅の王者”となりました。787Bの甲高いエキゾーストはファンの心に焼き付き、今でもデモ走行でそのサウンドが披露されると大歓声が上がります。まさにロータリーファンにとって誇りとも言える1台なのです。