いまさらですが、"ホンダマチック"ってなんですか?

ホンダマチック

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ホンダマチック、トヨグライド、ニッサンマチック…これらは1960年代後半からオートマチックトランスミッション(以下AT)に使用されていた商標です。当時、マニュアルトランスミッション(以下MT)が主流だった日本では、ATは高価で大排気量なお大臣車にしか採用されない特別な機構でした。それを軽自動車に初めて採用したのがホンダで、搭載されたATが独自のホンダマチックでした。
Chapter
かつては変速機に商標が付けられていた
ホンダマチックはホンダ独自のオートマチック
ホンダマチックはシンプルで小型
その後のホンダマチック

かつては変速機に商標が付けられていた

2017年現在、日本のAT車の比率は、90%以上といわれ、純粋なMT車を探すほうが大変です。そのATも50年前には3速が当たり前で、多段化や無段階CVTが主流となった現在とは隔世の感があります。

日本では、1960年代から普及が始まったATですが、当時は、ユニットが大きく価格も高価であったことから高級車のための装備と考えられていました。そんなATには、国産自動車メーカーの商標が付けられていました。そのひとつがホンダマチックでした。

ホンダマチックはホンダ独自のオートマチック

2017年現在からおよそ50年前の1968年、軽自動車初のATモデルが発売になりました。それがホンダ N360ATです。

搭載する変速機は、3速フルオートタイプのホンダマチックです。ホンダマチックのすごい点は、360ccの軽自動車に搭載できることと、当時5万点ほどのAT関連技術の特許を使用せず完全にホンダのオリジナルであったことです。

1960年代後半、日本のモータリゼーションは黎明期でしたが、アメリカではすでに市場として成熟しておりAT普及率も80%に迫っていました。そのAT関連技術の特許を前述のように5万点近く保有していたのがボルグ・ワーナー社でした。

5万もの特許はAT独自開発を阻む高い壁として君臨し、当時の自動車メーカーはボルグ・ワーナー社とAT製造会社を合同で設立してパテントを使用していました。トヨタ自動車がセンチュリー用に開発したトヨグライドは、アイシンAW社で製造されました。このアイシンAW社は、アイシン精機とボルグ・ワーナー社の合弁会社です。

少し戻って1964年。ホンダは、開発のためにボルグ・ワーナー社へS500用のATを発注したのですが断られています。その理由は、小排気量と高回転型エンジン適応するATがないというものでした。そこでホンダは、独自のATを開発することとなりました。

ホンダマチックはシンプルで小型

ボルグ・ワーナー社が製造していたATは巨大な車体と強大なトルクを発生するOHVエンジンにマッチングした仕様でした。そのためミッション自体も大型ですし、トルク変換効率が多少低くても実際の走行には支障がないものでした。

アメリカ車と比較すれば、日本車は小型です。搭載エンジンも360~1,500ccが主流でしたので、大排気量OHVのビッグトルクと比較になるはずもありません。

そこでホンダが目指したのは、小型・シンプル・軽量・トルク変換効率の高いATでした。そしてボルグ・ワーナー社のミッションを購入し、研究して辿りついた技術が『ステータ反力検出型自動変速装置』です。

難しい技術的な話は省きますが、ステータ反力検出型自動変速装置は、従来の油圧制御式と比較すると、シンプルな構成でありながら効率のよい制御が可能でした。この技術は日本、ドイツ、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアと特許が認可され、ホンダの独自技術であることが証明されています。

これをN360に搭載するには、さらに小型化が必要でした。というのもN360は、FF車で、乗車空間を広くとるには、ミッションもボンネット内に収めることが理想です。

そこで、エンジンとミッションを一体化するため平行軸方式を採用し、プラネタリギアを使用せず従来のミッションと変わらないシンプルな構造としました。これにより変速ショックの低減を図りながら、整備性も確保し、市販へと向かうのでした。

その後のホンダマチック

1968年3月、ホンダ N360ATとして「ホンダマチック」が発表されました。

ホンダマチックは、その構造上、オフオートマで使用すると低回転でトルク伝達効率が悪く、それを補うために1、2速を用意。トルクが必要な場面ではセミオートマのようなにギアチェンジをして使いました。

その後、2速セミオートマ、OD付き3/4速フルオートマと進化を遂げながら、1980年代まで採用されたのですが、一般的なATの効率があがったことと普及したことによってホンダマチックは消滅しました。

ホンダマチックの名称は、1995年に発表されたEK型シビックに搭載されたCVTで「ホンダマルチマチック」として一度は復活を遂げますが、現在では特にホンダマチックの商標は使用されていません。

技術のホンダ、チャレンジスピリットのホンダといったブランドイメージを象徴するトランスミッションでした。
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