昔の車に多かった『サイドモール』、その正体と今も活かせる意外な役割とは?【2025年版】
更新日:2025.10.29
昔の国産セダンや高級車の側面には、ドアの真ん中あたりに車体を横切るようなサイドモールが装着されていました。
黒やボディ同色のゴム・樹脂製の細長いパーツで、1970〜90年代には多くの車種で見られたものです。一見地味で「ちょっと古臭い」印象もありますが、実はドア開閉時の接触からボディを保護する役割や、車体デザインのアクセントになるといった実用・装飾両面の目的がありました。当時は「サイドモール=高級車の証」とも言われ、高級セダンほど標準装備される傾向が強かったのです。
しかし2020年代の今、新車でサイドモールを見かける機会はめっきり減りました。なぜサイドモールは姿を消したのでしょうか?
そして2025年現在、サイドモールは完全になくなってしまったのか? この記事ではサイドモールの歴史や役割を振り返り、現代でも活かされる意外な使い道や最新事情について解説します。
黒やボディ同色のゴム・樹脂製の細長いパーツで、1970〜90年代には多くの車種で見られたものです。一見地味で「ちょっと古臭い」印象もありますが、実はドア開閉時の接触からボディを保護する役割や、車体デザインのアクセントになるといった実用・装飾両面の目的がありました。当時は「サイドモール=高級車の証」とも言われ、高級セダンほど標準装備される傾向が強かったのです。
しかし2020年代の今、新車でサイドモールを見かける機会はめっきり減りました。なぜサイドモールは姿を消したのでしょうか?
そして2025年現在、サイドモールは完全になくなってしまったのか? この記事ではサイドモールの歴史や役割を振り返り、現代でも活かされる意外な使い道や最新事情について解説します。
サイドモールの役割:ボディガード兼ドレスアップアイテム
① ボディの保護
狭い駐車場でドアを開けたとき壁に当ててしまったり、隣の車のドアがぶつかったりした場合に、ドアの塗装剥がれやヘコミを防いでくれる「当てゴム」の役割です。板金塗装では数万円単位の修理費がかかるキズも、モールが傷つくだけで済めばパーツ交換で安価に直せるため、実用的なお守りとなっていました。
② デザインの向上
もう一つは見た目のアクセントです。特に昔のセダンなど大きな車はボディ側面が平坦で単調になりがちでした。そこにサイドモールで一本ラインを入れることで、ボディに起伏とメリハリが生まれ、高級感やスタイリッシュさを演出できたのです。実際2000年代初頭までの高級車にはほとんど装備され、「サイドモールが付いている=高級車」というイメージも定着していたほどでした。
このようにサイドモールは実用と装飾を兼ね備えたパーツとして一時代を築きました。しかし一方で、「野暮ったい」「後付け感がある」といった声もあり、ボディと色違いの黒いモールは敬遠される場合もありました。それでも当時は「愛車を守りたい」「サイドにアクセントが欲しい」というニーズに応える存在だったのです。
サイドモールが減った理由:技術進歩とデザインの変化
現代の車では、標準でサイドモールを装備する車種はほとんど見かけません。その背景には自動車設計・製造技術の進歩とデザイン志向の変化があります。
ボディ成型技術と塗装の進歩により、かつてはモールで作っていた視覚的なラインや抑揚を、プレスラインやサーフェス造形だけで表現できるようになりました。塗膜強度も向上し、軽い接触では傷がつきにくくなったため、「モールで保護しなくても大丈夫」という考えが広がりました。
また、2000年代以降のシンプル志向や空力重視の流れでは、線状の付加物は造形の一体感を損ねる場合があります。重量や空気抵抗を増やすパーツは減らすという方針もあり、「付けなくても機能・見映えともに成立するなら外す」という判断が一般化しました。
さらにセダン需要の低下も無関係ではありません。サイドモール文化を支えたセダンの販売比率が下がり、ユーザーの関心がSUVやミニバンへ移行。後付けモールの主な購入層だった年配セダンユーザーが減少したことも相まって、サイドモールは一時“絶滅危機”とまで言われるほど姿を消していきました。
ボディ成型技術と塗装の進歩により、かつてはモールで作っていた視覚的なラインや抑揚を、プレスラインやサーフェス造形だけで表現できるようになりました。塗膜強度も向上し、軽い接触では傷がつきにくくなったため、「モールで保護しなくても大丈夫」という考えが広がりました。
また、2000年代以降のシンプル志向や空力重視の流れでは、線状の付加物は造形の一体感を損ねる場合があります。重量や空気抵抗を増やすパーツは減らすという方針もあり、「付けなくても機能・見映えともに成立するなら外す」という判断が一般化しました。
さらにセダン需要の低下も無関係ではありません。サイドモール文化を支えたセダンの販売比率が下がり、ユーザーの関心がSUVやミニバンへ移行。後付けモールの主な購入層だった年配セダンユーザーが減少したことも相まって、サイドモールは一時“絶滅危機”とまで言われるほど姿を消していきました。
現代での意外な復活例:デザイン戦略として再注目
国内での復活例:シエンタ/クラウンに見る“実用+デザイン”
ほぼ見なくなったサイドモールですが、近年になって思わぬ形で復活しているケースがあります。たとえばトヨタ・シエンタ(3代目)はドア下部に大きなサイドプロテクションモールを備え、実用的なキズ防止と同時にカジュアルなアクセントを演出しています。
またトヨタ・クラウン クロスオーバーでは、側面にサイドモール風の黒樹脂パーツを配し、敢えてキャラクターラインを減らした大きな面のデザインを引き締めています。セダンとSUVの融合という新しい文脈の中で、面の抑揚と黒樹脂のコントラストがモール的な役割を果たしています。
またトヨタ・クラウン クロスオーバーでは、側面にサイドモール風の黒樹脂パーツを配し、敢えてキャラクターラインを減らした大きな面のデザインを引き締めています。セダンとSUVの融合という新しい文脈の中で、面の抑揚と黒樹脂のコントラストがモール的な役割を果たしています。
海外の進化形:シトロエン「エアバンプ」による再解釈
海外ではシトロエンが進化形のサイドモールを提案。
C4カクタスに採用された「エアバンプ」は、空気のクッションを持つウレタン製のプロテクションパネルで、低速域の軽い接触からボディを守りながら個性的なルックスを実現しました。その後の新型C3やベルランゴにも広がり、機能とデザインの両立例として再評価されています。
このように2020年代は、各メーカーが独自のアプローチでサイドモール的なパーツを再評価・活用する潮流が見られます。デザインの多様化が進むなか、「機能がデザインを語る」アイテムとしての存在感が戻ってきているのです。
C4カクタスに採用された「エアバンプ」は、空気のクッションを持つウレタン製のプロテクションパネルで、低速域の軽い接触からボディを守りながら個性的なルックスを実現しました。その後の新型C3やベルランゴにも広がり、機能とデザインの両立例として再評価されています。
このように2020年代は、各メーカーが独自のアプローチでサイドモール的なパーツを再評価・活用する潮流が見られます。デザインの多様化が進むなか、「機能がデザインを語る」アイテムとしての存在感が戻ってきているのです。
カスタム&豆知識:今だから楽しめるサイドモール
サイドモールは純正採用が減ったとはいえ、アフターマーケット(後付けカスタム)の世界では根強い人気があります。
カー用品店では汎用のドアガードやモール材が今でも販売されており、好みの長さにカットして貼り付けるだけで手軽に保護力とアクセントを追加可能。
ドア縁に貼るドアモールは定番で、メッキ調のモールをドア下に貼ってクラシカルな雰囲気に寄せる例も見られます。安価で試せるのも魅力です。
豆知識として、鉄道車両やバスの車体側面にもサイドモール状のゴムが使われることがあります。
狭いホームや車庫での接触から車体を守る「当てゴム」という発想で、クルマのサイドモールと起源を同じくする実用品です。旧車イベントでは当時物の新品モールを探し出し、純正の姿にこだわって仕上げる愛好家も少なくありません。
廃盤になった純正モールがネットオークションで高値になることもあり、サイドモールは今なお一部で熱い支持を集めています。
カー用品店では汎用のドアガードやモール材が今でも販売されており、好みの長さにカットして貼り付けるだけで手軽に保護力とアクセントを追加可能。
ドア縁に貼るドアモールは定番で、メッキ調のモールをドア下に貼ってクラシカルな雰囲気に寄せる例も見られます。安価で試せるのも魅力です。
豆知識として、鉄道車両やバスの車体側面にもサイドモール状のゴムが使われることがあります。
狭いホームや車庫での接触から車体を守る「当てゴム」という発想で、クルマのサイドモールと起源を同じくする実用品です。旧車イベントでは当時物の新品モールを探し出し、純正の姿にこだわって仕上げる愛好家も少なくありません。
廃盤になった純正モールがネットオークションで高値になることもあり、サイドモールは今なお一部で熱い支持を集めています。
おわりに:サイドモールが教えてくれるもの
一度は姿を消しかけたサイドモールですが、時代を経て価値が見直されつつあるのは興味深い現象です。
自動車の世界では技術革新やトレンドの変化によって装備の盛衰が起こりますが、本当に必要なものは形を変えて残っていくもの。サイドモールの歴史は、自動車デザインと機能のせめぎ合いを映す鏡とも言えます。
2025年現在、街中でサイドモール付きの新車を見る機会は多くありません。けれど、駐車場で愛車のドアをぶつけそうになった時、ふと「サイドモールがあれば…」と思い出すかもしれません。
昔ながらの知恵と工夫が詰まったサイドモール。その役割と魅力は、形を変えながらこれからも車好きたちの心に残り続けるはずです。
自動車の世界では技術革新やトレンドの変化によって装備の盛衰が起こりますが、本当に必要なものは形を変えて残っていくもの。サイドモールの歴史は、自動車デザインと機能のせめぎ合いを映す鏡とも言えます。
2025年現在、街中でサイドモール付きの新車を見る機会は多くありません。けれど、駐車場で愛車のドアをぶつけそうになった時、ふと「サイドモールがあれば…」と思い出すかもしれません。
昔ながらの知恵と工夫が詰まったサイドモール。その役割と魅力は、形を変えながらこれからも車好きたちの心に残り続けるはずです。