かつてパジェロやデリカに装着されていた、フロントのごついパイプはいま…

三菱 デリカ スペースギア 1996

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1980年代から1990年代前半のバブル時代にブームとなったのは、輸入車やスポーツカーだけではありません。現在のクロスオーバーSUVへの過渡期、本格4WDであるクロスカントリー4WDに豪華装備を施した車種もブームでした。一方で、そのゴテゴテしたフロントガードが「どこを走るつもりなのか」と批判の対象になったこともありました。
Chapter
その昔、特殊な車だったクロカン車
豪華オフローダー、パジェロの大ブームとその終焉
フロントガードへの批判
20年以上の時を超え、警察用として復活の兆し

その昔、特殊な車だったクロカン車

現在流行のクロスオーバーSUVは、基本的に乗用車の車高を高くしただけのモデルで、その先駆者的なモデル、トヨタ RAV4やホンダ CR-Vが登場した頃は、シティオフローダーと呼ばれたこともありました。

つまり、実際にオフロード走行でのタフさを求められているわけではない、格好だけの車というわけです。しかし、実用上はそのほうが都合が良いので、現在まで世界中でブームになっています。

しかし、それらが登場する以前は、本物のオフロード車に乗用車並の豪華装備を施したものがSUVとして販売されており、当然そのベースとなったオフローダーがありました。

例えば、スズキ ジムニーやトヨタ ランドクルーザーの元祖的存在と言える三菱 ジープは、荒地を走りきるタフなオフローダーでした。しかし、一部のマニアを除けば、本当に必要なところで使うための特殊な車でした。

1970年代には、4WD乗用車としてスバル レオーネが登場しましたが、当時は4WD車でなくても皆、普通の乗用車で未舗装路車を走っていた時代であったため、4WD車に乗っていると、「あの人はよほど山奥に出かける用事があるに違いない」という認識だったのです。

豪華オフローダー、パジェロの大ブームとその終焉

その状況に風穴を開けたのは、1982年にデビューした三菱 パジェロです。

ピックアップトラックのフォルテをベースに乗用キャビンを乗せ、エアコンやオーディオなど豪華装備と乗用車同様の内装を施したパジェロは、たちまち大ブームになりました。オフロードを走るか否かに関わらず、タフさの象徴として大人気になったのです。

要するに”普段からそこまでの能力は必要無いけれども、いざという時に便利だろう”という考えをうまく突いた車でした。

パジェロの人気に便乗するように、いすゞはビッグホーン、トヨタはランドクルーザー、日産はサファリやテラノでパジェロ同様の車を作り、いずれも人気になります。

ピックアップトラックも人気となって、三菱はフォルテを豪華装備にした後継車ストラーダ、トヨタはハイラックス、マツダはプロシードと続々登場。

さらに1BOXワゴンでも、三菱 デリカがパジェロ同様にフォルテのパワートレーンを組み込んでデリカ・スターワゴンとして登場。他社はさすがにそこまで気合を入れず、見かけだけオフロード風にしたあたりが境目でした。

もしかして本格的な走行性能を与えなくても、見た目だけでいいのではと気づいた他メーカーが、現在のクロスオーバーSUVに近い車を思いつき、ブームを牽引していたはずの三菱がその流れに取り残されていきます。

フロントガードへの批判

パジェロをはじめとする豪華オフローダーは、その当時SUVではなくRV(レクリエーショナル・ビーグル)と呼ばれていました。

現在のSUVと大きく異なったのは、大きく重くゴテゴテと追加装備をつけた勇ましい姿が良しとされていたことで、フロントバンパーの前にパイプで組まれたガード類を装備している車も多く見ました。

これは本来、大型動物が多い地域で衝突時に車のダメージを軽減するための、アニマルバーあるいはカンガルーバーと呼ばれていたものです。

街中で走るのには、まったく不要なパーツであるばかりか、衝突時には相手の被害をむやみに拡大させる、それが歩行者の場合は死傷率が上がるという批判が次第に高まりました。

その極めつけが、1994年に登場した三菱 ギャランスポーツGTでした。

「GT-RV」のキャッチコピーで登場した同車は、ステーションワゴンブームに三菱がギャランの5ドアハッチバックで便乗しようとした際に、得意のRV路線で付加価値をつけようとしたモデルです。

当然のようにフロントガードを装着していたその姿に、”やりすぎ”という批判が集まり販売は低迷。そのあたりを境としてフロントガードは急速に消えて行き、RVブームも収束していきました。

20年以上の時を超え、警察用として復活の兆し

そうして再びマニア向けに戻ったRVことクロカン4WDとフロントガードですが、2017年になって思わぬところで復活の兆しが出ています。

それが大阪府警のランドクルーザープラドで、かつてのブームを彷彿とさせる巨大なフロントガードを装着して、2017年3月に登場しました。 「地域遊撃車」と名付けられた車両は、職務質問を受けた車がパトカーに体当りして強引に突破する事例が多発したことから、試験的に導入されたものです。

あまりにパトカーの被害がひどく、そのたびに長期間の修理が必要、あるいは廃車・買い替えとなってその費用が非常に高いということで、要するに逃走車両が突っ込んできても耐えられる車が必要になったのでした。

大型動物との衝突など日本ではそうそう考えなくても良かったはずで、むしろ衝突時の被害拡大を懸念して無くなったはずのフロントガードですが、今度は「衝突されても大丈夫なように」復活したというのですから、物騒な時代になったものです。

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