スカイラインやマークⅡに搭載されていたセミトレーリングアームは何が良かったのか?

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自動車のサスペンション形式は、様々です。シンプルなものでは、コンパクトカーなどに多いトーションビーム式が有名です。また、高級車用には、ダブルウィッシュボーンやマルチリンクなど…。

その中の一つにセミトレーリングアーム式というサスペンション形式があります。これはどのようなサスペンションでしょうか?
Chapter
まずはトレーリングアーム式から
さて、セミトレーリングアーム
セミトレーリングアームの元祖
BMWだからこそのセッティング

まずはトレーリングアーム式から

トレーリングアーム式は、独立懸架タイプのサスペンションの中でも古いタイプと言えます。車軸よりも前方向にスイング軸がある事がその名称の由来。こちらは、主にFFに用いられることが多いようですが、トー角やキャンバー角の変化を抑えることができるのが特徴です。

但し、車体がロールすると左右のタイヤが共に同じ方向のキャンバー角となります。比較的シンプルな構造をしており、設計や製造上も安価であると言えるでしょう。

さて、セミトレーリングアーム

セミトレーリングアーム式は、スイングアームのピボット軸が斜めに設置されているのが、トレーリングアームとの違いです。セミトレーリングアームはFF車などで利用されることが多いですが、こちらのセミトレーリングアームは、FR車のリアサスペンションに多く用いられました。

特に、FRのリアサスペンションに用いられた大きな要因は、その安定性のためです。トレーリングアームと大きく異なるのは、セミトレーリングアームの場合、旋回時にキャンバーがネガティブに、トーがイン方向に変化することから、サスペンションジオメトリの変化が操縦安定性に寄与できる方向に作用することです。

特に、FRのリアサスペンションは、駆動輪を兼ねていることから、その安定性の向上は非常に重要であり、コーナリング時の安定性向上のためにも、FRでは必要なサスペンションの一つでもありました。

セミトレーリングアームの元祖

セミトレーリングアームを開発したのは、FR車にこだわりをもつBMW。開発したのは、1960年台と言われており、世界初の量産ターボカーである、BMW2002も、リアサスペンションはセミトレーリングアームを採用していました。

セミトレーリングアーム式は、そのサスペンションの構造上、安定性向上に一役買ってくれるサスペンション。当時、高出力ターボカーとして、911を退けるほどの速さを誇った2002が、セミトレーリングアームを採用していたことも頷ける事実です。

その後、日本でも510ブルーバードや、GC10スカイライン、マークⅡやFRだった頃のセリカ、カリーナなどに採用されていました。どの車種をとっても、当時のFRスポーツと言える車たちばかりですね。日本では、特に上級車種(グレード)への設定が多かったようですね。

BMWだからこそのセッティング

日本でも採用メーカーの多かったセミトレーリングアームですが、そのセッティングのツボを得ているのはBMWとも言われています。

スカイラインでも広く採用されていたセミトレーリングアームですが、BMWと同じような安定性とは言えなかったようです。スカイラインの場合、R32以降はマルチリンクが採用されており、この頃から安定性が増したようです。

現在では、BMWもセミトレーリングを辞め、分類的にはマルチリンクを採用しています。BMWは5リンクと呼んでいますが、これはセミトレーリングの技術を存分に生かし、マルチリンクを設計した結果のようです。

FRのスポーツカーで追い込んだ走り方をすると、どうしてもリアの接地感が気になります。トラクションの抜ける限界と言うべきか、そのまま滑る感覚が残るのが事実です。しかし、BMWでは、その限界点は非常に高く、高速域でも安定したコーナリングやラインの変更を行うことができます。
セミトレーリングは、1960年台の開発、その後マルチリンクが出る頃には90年台目前でした。セミトレーリングは、今でこそシンプルなサスペンション形式ですが、当時の設計や加工技術から考えれば、十分すぎるほど高性能なサスペンションであったと言えます。

現在は、CADやNC旋盤などもありますので、複雑なサスペンションの設計や加工も可能ですが、当時はそういう時代ではありませんでしたので、その中で生み出されたものとしては、非常に高性能だったといえるでしょう。
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