クラウンやシビックに搭載…ダブルウィッシュボーン式サスペンションは何が良かったのか?

ホンダ シビック

ダブルウィッシュボーンサスペンションは部品点数も多くやや高度なメカニズムという認識がありますが、それでも時にシビックのような大衆乗用車にも採用されてきた例もあります。このダブルウィッシュボーン、いったいどのような特性や利点があるのでしょうか。

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F1では常識のダブルウィッシュボーン
シビックにダブルウィッシュボーン?
クラウンは長らくダブルウィッシュボーン

F1では常識のダブルウィッシュボーン

上下二本のサスペンションアームによって構成されているダブルウィッシュボーンサスペンションは、前から見ると平行四辺形を描いていて、上下にストロークするときにタイヤの角度があまり変化しない、路面に対して垂直を保ちやすいという特性がまず挙げられると思います。

多くのレーシングカーやF1マシーンが採用していることでも、この形式のサスペンションが理想に近いものであることは明白です。また、横方向からの入力、Gに強く剛性が保てたり、ダンパーやスプリングはステアリング機構や剛性担保といった要件を必要としなくなるためそのレイアウトの自由度も高まるといわれています。

しかし、そのかわり、部品点数が多くなることは避けられず、また十全にその性能を満たすだけのものを構築しようとするとどうしてもスペースを必要とする傾向があり、こうしたあたりがデメリットでしょうか。

F1のような長い長いサスペンションアームを市販車で、というのは少し難しいものがあります。ただ、性質的にロードホールディングに優れ、しなやかにストロークする傾向のあるこのダブルウィッシュボーンは、市販車においてはやや贅沢な仕組みといっていいはずです。

そんな中でもダブルウィッシュボーンサスペンションを採用した例は数多あり、市販車における実績も充分にあります。今回はそれらいくつかの例を見てみたいと思います。

シビックにダブルウィッシュボーン?

1987年デビューのEF型シビック。この頃はバブル景気華やかりし頃で、こうした大衆車にも贅沢化の波が押し寄せ、軒並みサイズアップ、重量アップという流れが発生していたものですが、そんな流れの中でこの型のシビックのサスペンションはダブルウィッシュボーンでした。

もちろん、高級化の波にあって、高級なメカニズムと優れた性能や乗り心地を得るという目的でさいようされていたこのダブルウィッシュボーンですが、じつは、この頃のホンダ車の場合、もうひとつ別の理由があったというのが本音のようです。

当時のホンダデザインはとにかく平べったく、薄く、低く、というスタイリング。ゆえに車両の上下方向にスペースを確保することが難しいパッケージングを採らなければなりませんでした。それもこれもスタイリングを優先した結果です。おかげで見た目は非常に格好良く仕上がったのですが、そのしわ寄せは、じつは足回りに行ってしまいます。

ホンダがこのクルマでダブルウィッシュボーンを採用した理由は、限られたスペースの中で最大限サスペンションストロークを確保し、同時に失われたであろう余裕をダブルウィッシュボーンの優れた乗り心地やハンドリングで補おうという目論見があったといわれています。

一見して贅沢嗜好、高級メカニズムという触れ込みで採用されていたEF型シビックのダブルウィッシュボーンサスペンション。しかし裏事情にはこうした問題が隠されていたわけですね。実際に乗り心地はダブルウィッシュボーンとしては硬めで、本来のしっとり感はちょっと影を潜めていたとか。

ホンダはこれ以前にも二代目プレリュードでも同様の理由でフロントサスペンションにダブルウィッシュボーンを採用しています。しかしそれらすべて、ホンダのMM思想に基づいたものかもしれません。マンマキシマムに則り、可能な限りメカニズムをコンパクト化、効率化しようという考え方だったのですね。

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