クラウンアスリートにイナズマ型グリルが採用された理由とは?

トヨタ クラウンアスリート

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2012年に登場した現行型クラウン、中でも人目を引いたのはアスリート系に採用されたイナズマ型とも取れる大胆な形状のフロントグリル。保守的なクラウンとしてはかなり先鋭的に映るこのグリルですが、当初は賛否両論いろいろありました。

3年経過してマイナーチェンジも行なわれ我々見る側としてもクラウンアスリートの特徴として定着した観もありますが、このグリルによってクラウンは何が変わったのでしょうか。
Chapter
1999年以降、クラウンのマスクはどう変わったか?
決め事の中の困難な挑戦
ちりばめられた変化の証

1999年以降、クラウンのマスクはどう変わったか?

1999年、S170系クラウンアスリート。この頃はまだ保守本流のクラウン像を見て取れますが、これでも当時は大胆に変わったといわれたものでした。ハードトップボディを廃止し、全車セダンとされて全高をたっぷり採って室内空間を確保。同時に側面衝突への対応を強化しました。
2003年、ZEROクラウン。それまでのクラウンの常識を覆し、V6エンジンに広いキャビン、またこれまでよりずっとヨーロッパナイズされた内外装と走りの良さで大好評を得たモデル。いうなればクラウンの大改革。身も心も体もすべて新しくなりました。
2008年、S200系クラウン。基本的に前モデルであるS180系ZEROクラウンを引き継ぎながら、やや流線型も強くなり、クラウンとしてはかなりスポーティな雰囲気を身につけていることがわかりますよね。ハイブリッドも本格的に始動し、新しい時代を予感させました。
そして2012年、S210系クラウンアスリートデビュー当時のイナズマ型グリル。出たときは相当衝撃がありましたが、見慣れてくるとこれもクラウンの顔なのかな、というふうに妙に納得してしまう、その説得力がすばらしいですね。ここ数年はモデルチェンジのたびに新しいクラウンのあり方を模索しつつ、時間がたつとそれがしっかりクラウンになってしまうというあたりが、やはり歴史のなせる業といったところでしょうか。

決め事の中の困難な挑戦

クラウンはトヨタブランドの高級車としては初めてダウンサイジングターボエンジンを搭載するなどして、さらなるブラッシュアップを施され2015年にマイナーチェンジされました。保守的な銘柄でありながらクラウンはそのスタイリング然り、メカニズム然り、走りも含めて、モデルチェンジのたびに毎回挑戦的な改良や採用を行なって登場しています。保守的で変化を好まない顧客層、また、変わらないことでブレないクラウン像を構築するという目的もあるはずですが、その中で新しいものを盛り込む難しさもあるはずです。

クラウンのスタイリングには制約が多いといわれています。サイズは日本の道路事情、とくに駐車場などのスペースを考慮されていて、過剰にサイズアップできないという事情があります。また、後席をメインに使われる顧客のために、Cピラーはできるだけ乗員の顔が隠れるような角度と形状を取り入れていたりもしているのです。この二点の制約だけでも、スタイリング、デザインをまとめる上での難しさははっきりと他車とは異なるものであろうことが想像に難くありません。

デザイン上、こうした制約がもたらす難しさ、変わりにくい事情などがクラウンのデザイナーの仕事を難しくさせていることでしょう。しかし、ずっと変わらないままでいるわけにもいかない。むしろクラウンが積極的に「変わる」という姿が、トヨタ自動車としての企業スタンスを明瞭にあらわす重要な要素にもなっているため、クラウンは本当は大きく変わりたい。だけど、変われないしがらみがある…。

今回のイナズマ型グリルが用いられたのもそんな事情からではないでしょうか。

よく見渡すと、このフロントマスクを除けばクラウンは、じつはクラウンそのものです。フォルムやキャビンの形状、窓の形やテールランプまで、それまでのクラウンを色濃く残しています。これは「変えられない部分」ということなのでしょう。しかし、イナズマ型フロントグリルは多くの人に大きなインパクトを与えることに成功しました。その意味で、そのデザインは成功といっていいのかもしれません。

ちりばめられた変化の証

例えばクラウンアスリートの広告展開。今回から広告キャラクターに俳優の豊川悦司さんを起用。クラウンとしては若々しい印象の組み合わせになる豊川さんの年齢は、じつはマークXの佐藤浩市さんより若かったりします。こうしたところにもクラウンの「若返り」というテーマが透けて見えてくるような気がしますよね。従来の保守層にはロイヤルシリーズがあって、年齢層の高い顧客にも対応。アスリートはより若いファンを囲い込もうという戦略ということでしょうか。
また、「ジャパンカラーセレクションパッケージ」と称して12色の特別色を用意して、いわゆる「オーダーカラー」として様々なカラーを設定したところも見所でしょう。日本の高級乗用車は欧米の高級乗用車に比べてカラーチョイスに乏しいという声もあって、それに応じたということなのでしょうが、2015年マイナーチェンジ版では前期物のピンクなどとは一味違った趣のあるカラーが数多く用意され、顧客の好みとクラウンの車格に相応しいバリエーションを展開しています。これもやはり「変化」の「一環」ではないでしょうか。

さて。現行型クラウンのとくにアスリートはその象徴的なフロントグリルが話題となったクルマですが、やはりそれはクラウン自身が自らの変化を追い求めた結果のものであったということが見えてきます。60年という長きに渡って連綿と続く歴史を構築し、ゆるぎない日本の、日本人のための高級乗用車として君臨するクラウンも、時代とともに変化を繰り返し、その変化自体も、トヨタにとって、あるいは日本にとって重要なモデルとしての自負を抱えながら、必ずしも簡単ではない若返りや変化を繰り返してきたということが言えると思います。

これまでがそうであったように、クラウンは日本人とともに歩むはずです。それは突然クラウンが顧客をリードするというよりも、歩調を合わせて共に歩む、ということなのではないでしょうか。動かしがたいクラウンというクルマでありながら綿密な変化を盛り込みながら進化していく、その姿はクラウン特有のカベにぶち当たりながらもブレークスルーを繰り返した、そんなトヨタ自動車の仕事ぶりを感じさせる部分なのです。
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