キャストとハスラーの販売好調!今、軽クロスオーバーが人気の理由とは?

スズキ ハスラー

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全盛期を過ぎて若干苦戦中の軽自動車市場。その中で市場全体を引っ張る救世主となっているのが、「クロスオーバー軽自動車」というジャンルです。今回はその起爆剤となったスズキ「ハスラー」と、それを猛追撃するダイハツ「キャスト」をご紹介します。
Chapter
過去にもあった「第一次軽自動車クロスオーバー対決」
かつては受け入れられなかった軽クロスオーバー
2000年代後半からのユーザー大移動
開花した軽クロスオーバー、スズキ ハスラー
追撃するダイハツ「キャスト」
今回は激戦の「第二次クロスオーバー対決」

過去にもあった「第一次軽自動車クロスオーバー対決」

左がスズキ「ハスラー」、右がダイハツ「ネイキッド」です。15年も前に「ハスラー」と似たような軽クロスオーバーが市販されていましたが、この時はユーザーの広い支持を受けるには至りませんでした。

クロカン(クロスカントリー)風でありながら舗装路メインの車が「SUV」、さらに乗用車でありながらSUVテイストを高めたのが「クロスオーバー」です。1992年発売のダイハツ「ミラRV-4」が一応の軽クロスオーバー第一号と言えますが、「既存車へのデコレーション」では無く、初めての新型車が、1998年デビューのスズキ「kei」でした。

同じスズキのハード系クロカン「ジムニー」との競合を避け、地上高は高いながらも、タワー式立体駐車場に入る車高に収めた、スマートなシティオフローダーなのが特徴です。その「kei」を追撃したのが1999年デビューのダイハツ「ネイキッド」でした。容易に交換可能な外板パネルによる無骨な外観と、キュートな丸目のフロントマスクのギャップで、「機械としての自動車の素材感」を好むユーザー層からのコアな人気を得ます。

特に熱心だったのが演出家・プロデューサーとして知られたテリー伊藤で、自動車雑誌などでネイキッドを絶賛した上に、彼がプロデュースした「@1」(アットワン)というグレードも設定されていたのです。

かつては受け入れられなかった軽クロスオーバー

こうして始まった「第一次軽自動車クロスオーバー対決」ですが、僅か2年ほどであっけない幕切れを迎えました。当時、新規格に移行したばかりの軽自動車は旧来の「貧弱な格下の車」として敬遠される傾向がまだ根強く、メーカーから提案したカーライフが受け入れられない事も多かったのです。そのため、「kei」も「ネイキッド」もクロスオーバーとしては受け入れられませんでした。

後に「kei」は「keiスポーツ」や「keiワークス」といったスポーツモデルが投入され、「keiスポーツ」によるワンメイクレースが行われるなど、スポーツ路線に転換して2009年までそれなりに長いモデルライフを送りました。

一方の「ネイキッド」は一般向けアーバンライフモデルを追加したものの、そのジャンルで既存の「MAX」との差別化をしきれず、共倒れのような形で2004年に後継車も無く廃止されたのでした。

2000年代後半からのユーザー大移動

軽自動車を取り巻く環境に変化が訪れたのは、2005年から完全施行された「自動車リサイクル法」と、2009年から実施された「エコカー減税」の影響が大きいと思われます。日本自動車工業会の統計を元に「日経トレンディネット」が発表したグラフによれば、2006年頃を境に登録車(いわゆる「白ナンバー」)が減少していった一方で、年々品質が高まっていた軽自動車は増加を続けます。

軽自動車に移行したユーザーは、それまでの各々の嗜好を軽自動車に求める事となり、メーカー側でも年々高品質化と高価格モデルを増やして行きました。その結果として「軽自動車メーカーが提案するカーライフ」を受け入れるユーザー層が誕生する事になったのです。

開花した軽クロスオーバー、スズキ ハスラー

このような情勢の中で、2014年にスズキが発売した「ハスラー」はヒットモデルとなりました。それ自体は当時のアルト(HA35S)の最低地上高を上げ、クロスオーバー風の内外装を与えただけでしたが、「軽自動車一台で一般道からアウトドアまで、多様で楽しいカーライフが送れる」というスズキからの提案が、広く受け入れられたのです。

外観も寸法を詰めてファニールックにした上で、ボディと別色のバンパーを備えるなど、屋根が白い2トーンルーフを選択すれば、一見するとトヨタの人気クロカン「FJクルーザー」の軽自動車版に見えるスタイルも大成功でした。

追撃するダイハツ「キャスト」

スズキが成功すれば、黙っていないのがライバル・ダイハツです。2015年9月に満を持して軽クロスオーバー「キャスト」をデビューさせました。「キャスト」は最近のダイハツがコペンなどで得意とする「一車種で数ジャンルのモデルを作る」という手法で開発されています。ミラジーノ以来続くレトロ調モデルの「スタイル」と、スポーティ版の「スポーツ」、そしてクロスオーバー版が「アクティバ」です。

「アクティバ」は屋根を白く塗る「デザインフォルムトップ」や、フロントバンパーには大径の補助灯を備えるなど、明確に「ハスラー」対抗馬である事をアピールしてきました。スズキの「S-エネチャージ」のような飛び道具は無いものの、熟成されたKFエンジンとアイドルストップだけで「ハスラー」に匹敵する燃費を実現しており、シンプルながら優れた環境性能という強みもあります。

今回は激戦の「第二次クロスオーバー対決」

「キャスト・アクティバ」と、迎え撃つスズキの「ハスラー」の真っ向からの激突は、それまで無かった高品質の軽クロスオーバー車を、両車が競合して商品性を高める相乗効果を産みだしています。また、「ハスラー」がFJクルーザー風ならば、、「キャスト」はBMWの「ミニ・クロスオーバー」を意識したようなデザインと、ユーザーの嗜好によって選択の余地ができました。

その結果として、「全国軽自動車協会連合会」が発表した2015年10月期の新車販売速報では、「キャスト」が前月比127.7%増の8895台で4位、「ハスラー」が前月比109.6%増の8375台で5位につけました。「しかも軒なみ前月比で販売台数を落としている軽自動車の中にあって、この2台のみが前月比アップしており、「キャスト」のデビューで軽クロスオーバー市場がにわかに活性化しているという事になります。

もし「キャスト」だけが台数を伸ばす状況であれば、新車効果が終わると同時に、「kei」と「ネイキッド」が対決した時のように、軽クロスオーバー市場は急激に冷めていったでしょう。
「ワゴンR」や「ムーヴ」「タント」に代表される、日本中どこでも見かけるハイトワゴン系軽自動車では満足できない、しかし「コペン」や「S660」のような趣味一辺倒の軽スポーツよりも実用性は求めたいユーザーにとって、こうしたメーカー間の競争は「待ってました!」という事だったと思います。後発の「キャスト」に追い上げられるスズキは、今後「ハスラー」にさまざまなテコ入れを行っていくと思われますし、ダイハツも負けじと続くでしょう。

最初に「ハスラー」が登場した時のような、ユーザーの胸を打つような提案で、さらに軽クロスオーバー市場を活性化させていってほしいですね。
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