WRXの「S4」と「STi」で搭載されているエンジンが違う理由とは?

スバルWRXは以前からもATとMTでエンジンチューンに差をつけるなどしていましたが、今回のモデルではエンジン型式、スペック、またトランスミッションも異なります。今回はこの理由がどこにあるのかについて探ってみたいと思います。

Chapter
オートマチックでオールマイティな魅力、S4
FA20型直噴DITエンジン
本格スポーツを目指すWRX STi
伝統のEJ20型エンジン
明確な棲み分けを同一銘柄に実施
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オートマチックでオールマイティな魅力、S4

WRX S4はこれまでのWRXよりもやや大人びた、マイルドな性質で出てきていると言えると思います。それはユーザーからの要望や、ユーザー自身の年齢が以前より高まり、今までのようなものでは感覚に合わなくなってきたという面が否定できないと思います。

WRXもユーザーとともに大人になったというわけです。それもそのはず、インプレッサ時代から数えて既に20年以上経っているわけです。それだけ歴史があるということでもあり、蓄積された信頼や期待も大きく、WRXとしてはこれまでのような「走り」一本ではない、また別の方向性を模索するという必要性も生まれてきたのでしょう。

それだけユーザーに根ざした、密着型のスポーツカーと言えるかもしれません。求めに応じて姿を変えるというのもひとつの見識というものです。

FA20型直噴DITエンジン

S4は2リッター直噴DITエンジン、FA20型。300PS/5600rpmと40.8kgf・m/2000-4800rpmという大パワーとトルクを保持。しかもそれはリニアトロニックでイージーに引き出せるばかりか実用域からの扱いやすさ、柔軟性をも兼ね備えています。このパフォーマンスをAWDで発揮するわけですから無駄なくきわめて効率の高いパワーパッケージと言えるはずです。

S4はそんなオールマイティで比較的実用性を重んじた仕立て、ということで間違いないでしょう。

特徴的なのはハイパワーとトルクを保持しながらそのピークとなる回転数をやや下げて、とくにトルクに関しては広範囲でその特性をいかんなく発揮できるような設えとなっていて、まさしく状況を選ばない高性能という見方もできそうです。

本格スポーツを目指すWRX STi

以前は通常のWRXに対して限定車とか特別仕様車的な存在として君臨したのがこのSTiというネーミングですが、もはやカタログ上のレギュラーメンバーとなった感もありますよね。これもやはり、S4のオールマイティ路線に対してスポーツ色という色合いをより濃厚なものとするためのコントラストということなのでしょう。

より本格的な走り、もっといえば、ランエボなどとも方を並べ抜き去るべく作られたコンペディションカーというわけです。

6段マニュアルに強化されたボディ、足廻り、大型ウイングなどなど、このクルマは従来からのスポーツイメージを持つWRXの行き方をそのまま延伸させたようなクルマ。スバルとしても胸を張れる頂点のスポーツマシーンとして位置づけているということでしょう。

伝統のEJ20型エンジン

WRX STiに搭載されるのはあの初代レガシィから脈々と受け継がれてきたEJ20型エンジン。とはいえ、途中何度も改良が入るなどして初期のものとはまったく別物と呼んでもいいような出来になってはいます。

スペックは308PS/6400rpmと43.0kgf・m/4400rpmのパワートルク。馬力の数値的にはやや飛び出ているというくらいの印象かもしれませんが、その発生回転数は6400rpmと高回転型です。より高いレベルで高いパワーを発揮できるようになっている、もっというなら、マニュアルギアボックスに適したチューニングを施されているという認識でいいと思います。

実際にこのエンジンは、もちろん現代のエンジンですから低中速域でも十分に柔軟性がありますが、より「回して」こそ刺激性の高まるエンジン。ターボの爆発力もあいまって、よりトバしたくなる仕様になっているというわけです。より楽しめるエンジンになっています。

明確な棲み分けを同一銘柄に実施

このようにしてみてみると、様々な事情や要望、ニーズからWRXというクルマが二分化されているという状況が見て取れると思います。以前はスポーツカーというのは「初志貫徹」みたいなところがあって、ブレないことこそ正義というような考えもありましたが、WRXのように顧客層も広く、また、さらに広げるためにもこうした色分けのようなことを効果的に施すということもひとつの戦略です。

大人のユーザーが乗っても恥ずかしくない、あるいは気持ちよく自分に心地の良い性能を味わえるスポーツカー「S4」と、究極的にスポーツ性能を追求した「STi」。この二者が存在することでWRXというクルマは裾野を広げ、より深くユーザーに浸透しているようで、それは売れ行きにもそのまま好影響を与えているようです。

例えばエンジン形式だけではない、車体や足回りに至るまでの細部の調整を事細かに行うというのは、いうなれば開発費用はその分割増しになってかかることを意味しています。しかし敢えてそれをしてでもこのクルマの値打ちを高め、新たな鉱脈を掘り当てるという自信のほどがスバルにはあったということでしょう。その意味で、長年この分野で作り続けてきたベテランとしての誇りとも言うべきかもしれません。

お好みにより選べるふたつのWRX…あなたならどちらを選択しますか?


<前田恵之進>

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