エナジードリンクとモータースポーツの深い関係
更新日:2025.05.30

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レースやラリーなどモータースポーツで競うマシンには、車体一面にスポンサー企業のロゴが描かれています。
まさに「走る広告塔」と呼ばれる存在ですが、近年とりわけ目立つのがエナジードリンクのブランドです。世界的に人気のエナジードリンク各社がモータースポーツのスポンサーとして名を連ね、熾烈な宣伝合戦を繰り広げています。
エナジードリンクとモータースポーツにはどんな関係があり、各ブランドがどのように関与しているのでしょうか。
本記事では、その関係性を俯瞰しつつ、モータースポーツに深く関わる代表的なエナジードリンクブランドであるレッドブルやモンスターエナジーをはじめ、国内外で特徴的な活動を見せる(または過去に活動した)ZONe、burn、KiiVAといった各社のモータースポーツ支援の歴史や戦略、影響について解説します。
エナジードリンクとモータースポーツの密接なつながりを紐解いていきましょう。
まさに「走る広告塔」と呼ばれる存在ですが、近年とりわけ目立つのがエナジードリンクのブランドです。世界的に人気のエナジードリンク各社がモータースポーツのスポンサーとして名を連ね、熾烈な宣伝合戦を繰り広げています。
エナジードリンクとモータースポーツにはどんな関係があり、各ブランドがどのように関与しているのでしょうか。
本記事では、その関係性を俯瞰しつつ、モータースポーツに深く関わる代表的なエナジードリンクブランドであるレッドブルやモンスターエナジーをはじめ、国内外で特徴的な活動を見せる(または過去に活動した)ZONe、burn、KiiVAといった各社のモータースポーツ支援の歴史や戦略、影響について解説します。
エナジードリンクとモータースポーツの密接なつながりを紐解いていきましょう。
レッドブル(Red Bull)-モータースポーツ支援の先駆者
1980年代にオーストリアで生まれたレッドブルは、「レッドブルは翼を授ける」というキャッチコピーでもおなじみの世界的エナジードリンクブランドです。
2006年に日本へ本格上陸し市場で人気を博して以来、その名は広く知られるようになりました。レッドブルが自社F1チームとして本格的にモータースポーツへ参入したのも2005年で、以降モータースポーツ界への支援を拡大していきます。
レッドブルは特に四輪レース最高峰のF1での活躍で知られています。1995年からザウバーF1チームのスポンサーとなり、2004年には名門ジャガーF1チームを買収して自社の「レッドブル・レーシング」を設立しました。
自動車メーカーがひしめくF1において、飲料メーカーがオーナーのプライベートチームながらマシンに雄牛のロゴを掲げ、幾多の表彰台と勝利を獲得してきたのです。
実際、2009年のF1中国GPではレッドブル育成出身のセバスチャン・ベッテルがチーム初優勝を遂げ、その後もレッドブルはF1ワールドチャンピオンを幾度も獲得するトップチームへと上り詰めました。
レッドブルの支援はF1にとどまりません。
世界ラリー選手権(WRC)や二輪のMotoGP、ダカールラリーなどあらゆるカテゴリーのモータースポーツで存在感を発揮しています。日本でもSUPER GTやスーパーフォーミュラにおいてチームスポンサーを務め、レッドブル・ボックスカートレースのようなユニークなイベントや、過去にはエアレース・ワールドチャンピオンシップを開催するなど独自イベントでもモータースポーツ文化を盛り上げています。
レッドブルのマーケティング戦略は「自ら競技の一部になる」ことでブランドイメージを向上させる点に特徴があります。実際にトップチーム運営やイベント開催という大胆な手法で若者にアピールし、エナジードリンク=挑戦者を支える象徴というブランドイメージを確立しました。
その結果、モータースポーツファンにとってレッドブルのロゴは勝利と興奮の象徴となり、同社の支援は競技の発展や新たな才能の発掘(例:レッドブル育成ドライバーからF1へ昇格する若手)にも寄与しています。
2006年に日本へ本格上陸し市場で人気を博して以来、その名は広く知られるようになりました。レッドブルが自社F1チームとして本格的にモータースポーツへ参入したのも2005年で、以降モータースポーツ界への支援を拡大していきます。
レッドブルは特に四輪レース最高峰のF1での活躍で知られています。1995年からザウバーF1チームのスポンサーとなり、2004年には名門ジャガーF1チームを買収して自社の「レッドブル・レーシング」を設立しました。
自動車メーカーがひしめくF1において、飲料メーカーがオーナーのプライベートチームながらマシンに雄牛のロゴを掲げ、幾多の表彰台と勝利を獲得してきたのです。
実際、2009年のF1中国GPではレッドブル育成出身のセバスチャン・ベッテルがチーム初優勝を遂げ、その後もレッドブルはF1ワールドチャンピオンを幾度も獲得するトップチームへと上り詰めました。
レッドブルの支援はF1にとどまりません。
世界ラリー選手権(WRC)や二輪のMotoGP、ダカールラリーなどあらゆるカテゴリーのモータースポーツで存在感を発揮しています。日本でもSUPER GTやスーパーフォーミュラにおいてチームスポンサーを務め、レッドブル・ボックスカートレースのようなユニークなイベントや、過去にはエアレース・ワールドチャンピオンシップを開催するなど独自イベントでもモータースポーツ文化を盛り上げています。
レッドブルのマーケティング戦略は「自ら競技の一部になる」ことでブランドイメージを向上させる点に特徴があります。実際にトップチーム運営やイベント開催という大胆な手法で若者にアピールし、エナジードリンク=挑戦者を支える象徴というブランドイメージを確立しました。
その結果、モータースポーツファンにとってレッドブルのロゴは勝利と興奮の象徴となり、同社の支援は競技の発展や新たな才能の発掘(例:レッドブル育成ドライバーからF1へ昇格する若手)にも寄与しています。
モンスターエナジー(Monster Energy)-過激なイメージで競技を支援
モンスターエナジーはアメリカ発祥のエナジードリンクで、黒地に緑の爪痕状ロゴというインパクトあるデザインで知られます。2000年代後半からレッドブルに次ぐ存在感を示し始め、モータースポーツ界にも積極的に進出しました。
2009年にはF1王者ジェンソン・バトンと個人スポンサー契約を結び、翌2010年から2023年末まで名門メルセデスGP(現メルセデスAMG F1)とチームスポンサー契約を締結。長年トップチームのパートナーを務めました。2024年からはマクラーレンF1チームのスポンサーとして、F1でのブランド露出を継続しています。
モンスターエナジーのマーケティング戦略は、レッドブルとは一味違った手法で知られます。F1において、マシン全体のカラーリングを覆う形ではなく、マシンの一部のエリアやドライバーのヘルメット、レーシングスーツへのロゴ掲出を中心とした露出戦略をとってきました。
例えば、“赤い皇帝”ことミハエル・シューマッハや2016年F1王者ニコ・ロズベルグもモンスターの爪痕ロゴ入りヘルメットを着用していました。こうしたクールな露出戦略は、ファンの目に印象的に映り、ブランドの存在感を高めていると言われます。
もっとも、モンスターエナジーが力を入れているのはF1だけではありません。
二輪の最高峰MotoGPではヤマハワークスチームのタイトルスポンサーとなり、チーム名に「モンスターエナジー」を冠しています。また、北米ではモンスターエナジーがNASCARカップシリーズのタイトルスポンサーを務めていた時期もあり(2017年~2019年)、モトクロスやスーパークロス、ラリークロス、ドリフト競技などエクストリーム系モータースポーツに幅広くスポンサードしています。
日本でもD1グランプリ(ドリフト選手権)において斎藤太吾選手の駆るマシン「GRスープラ モンスターエディション」を支援し、2021年開幕戦で優勝するなど大きな話題を呼びました。
モンスターエナジーの荒々しく刺激的なブランドイメージは、エンジン全開の激しいレースシーンと相性抜群です。実際、同社の支援により潤沢な資金がもたらされたチームやイベントも多く、ファンはモンスタークロウ(爪痕ロゴ)を見ると自然と興奮を覚えるという声もあります。
レッドブルが「翼」を暗示するなら、モンスターは「爪を立てる獰猛さ」で観る者を魅了し、モータースポーツ文化に独自の熱狂をもたらしています。
2009年にはF1王者ジェンソン・バトンと個人スポンサー契約を結び、翌2010年から2023年末まで名門メルセデスGP(現メルセデスAMG F1)とチームスポンサー契約を締結。長年トップチームのパートナーを務めました。2024年からはマクラーレンF1チームのスポンサーとして、F1でのブランド露出を継続しています。
モンスターエナジーのマーケティング戦略は、レッドブルとは一味違った手法で知られます。F1において、マシン全体のカラーリングを覆う形ではなく、マシンの一部のエリアやドライバーのヘルメット、レーシングスーツへのロゴ掲出を中心とした露出戦略をとってきました。
例えば、“赤い皇帝”ことミハエル・シューマッハや2016年F1王者ニコ・ロズベルグもモンスターの爪痕ロゴ入りヘルメットを着用していました。こうしたクールな露出戦略は、ファンの目に印象的に映り、ブランドの存在感を高めていると言われます。
もっとも、モンスターエナジーが力を入れているのはF1だけではありません。
二輪の最高峰MotoGPではヤマハワークスチームのタイトルスポンサーとなり、チーム名に「モンスターエナジー」を冠しています。また、北米ではモンスターエナジーがNASCARカップシリーズのタイトルスポンサーを務めていた時期もあり(2017年~2019年)、モトクロスやスーパークロス、ラリークロス、ドリフト競技などエクストリーム系モータースポーツに幅広くスポンサードしています。
日本でもD1グランプリ(ドリフト選手権)において斎藤太吾選手の駆るマシン「GRスープラ モンスターエディション」を支援し、2021年開幕戦で優勝するなど大きな話題を呼びました。
モンスターエナジーの荒々しく刺激的なブランドイメージは、エンジン全開の激しいレースシーンと相性抜群です。実際、同社の支援により潤沢な資金がもたらされたチームやイベントも多く、ファンはモンスタークロウ(爪痕ロゴ)を見ると自然と興奮を覚えるという声もあります。
レッドブルが「翼」を暗示するなら、モンスターは「爪を立てる獰猛さ」で観る者を魅了し、モータースポーツ文化に独自の熱狂をもたらしています。
ZONe(ゾーン)-デジタル世代のエナジードリンクと新領域
ZONe(ゾーン)は、株式会社ZONeエナジーが企画・開発し、サントリー食品インターナショナルから2020年に本格発売された国産エナジードリンクです。
製品名に「Ver.1.0.0」などバージョン番号を冠し、500mlの大容量缶にたっぷりの糖分とカフェインを配合するというユニークな戦略で登場しました。「モニターと向き合うすべての人に、最高の没入とパフォーマンスを」というコンセプトを掲げ、デジタルカルチャーに特化したエナジードリンクとして台頭しています。
レッドブルやモンスターエナジーが伝統的にモータースポーツや音楽イベントなどリアルな競技・カルチャーを支援してきたのに対し、ZONeはeスポーツやアニメ・漫画などデジタル寄りの分野を積極的にサポートする姿勢を打ち出しています。
実際、人気アニメ『SPY×FAMILY』やVTuberとのコラボレーション商品を展開するなど、ゲーム・アニメ好きの若者層へのマーケティングに注力しています。
発売当初から「デジタルネイティブ世代へ届けるエナドリ」という明確なブランディングがなされており、この点で従来の競技志向のエナジードリンクとの差別化に成功しています。
ではZONeはモータースポーツと無縁かというと、伝統的なモータースポーツへの直接的なスポンサー活動は他ブランドほど活発ではないものの、eスポーツ分野での支援が見られます。例えば近年盛り上がりを見せるeモータースポーツ(シミュレーションレース競技)の領域では、ZONeのコンセプトと親和性が高く、関連イベントへの協賛なども行っています。
このようにZONeはデジタル世代の競争や熱狂を支えることで、新しい形で広義のモータースポーツ文化にも貢献していると言えるでしょう。
製品名に「Ver.1.0.0」などバージョン番号を冠し、500mlの大容量缶にたっぷりの糖分とカフェインを配合するというユニークな戦略で登場しました。「モニターと向き合うすべての人に、最高の没入とパフォーマンスを」というコンセプトを掲げ、デジタルカルチャーに特化したエナジードリンクとして台頭しています。
レッドブルやモンスターエナジーが伝統的にモータースポーツや音楽イベントなどリアルな競技・カルチャーを支援してきたのに対し、ZONeはeスポーツやアニメ・漫画などデジタル寄りの分野を積極的にサポートする姿勢を打ち出しています。
実際、人気アニメ『SPY×FAMILY』やVTuberとのコラボレーション商品を展開するなど、ゲーム・アニメ好きの若者層へのマーケティングに注力しています。
発売当初から「デジタルネイティブ世代へ届けるエナドリ」という明確なブランディングがなされており、この点で従来の競技志向のエナジードリンクとの差別化に成功しています。
ではZONeはモータースポーツと無縁かというと、伝統的なモータースポーツへの直接的なスポンサー活動は他ブランドほど活発ではないものの、eスポーツ分野での支援が見られます。例えば近年盛り上がりを見せるeモータースポーツ(シミュレーションレース競技)の領域では、ZONeのコンセプトと親和性が高く、関連イベントへの協賛なども行っています。
このようにZONeはデジタル世代の競争や熱狂を支えることで、新しい形で広義のモータースポーツ文化にも貢献していると言えるでしょう。
burn(バーン)-短期間の輝きと撤退
burn(バーン)はかつて存在したエナジードリンクブランドで、日本では日本コカ・コーラが2012年に発売しました(日本国内では2017年頃に販売終了)。レッドブルやモンスターに挑む形で投入されたブランドで、黒地に燃え盛る炎のロゴをあしらった缶デザインが印象的でした。
2013年、burnは当時F1で躍進していたロータスF1チーム(ドライバー:キミ・ライコネン&ロマン・グロージャン)のスポンサーとなりました。これは親会社のコカ・コーラ社にとって、burnブランドを通じた本格的なF1チームスポンサーシップであり、チームと協力して音楽やアートを絡めた革新的キャンペーンを展開する意欲的な試みでした。
しかし、その後チームの成績状況の変化や経営体制の変更もあり、ロータスF1チームは2015年末にルノーに買収されました。これに伴いburnもF1スポンサーから撤退し、市場における製品競争でもレッドブルやモンスターの勢いに押された形となりました。
短期間でモータースポーツ界に強いインパクトを与えたものの、日本市場においては事業として大きな成功を収めるには至らなかった例と言えるでしょう。
2013年、burnは当時F1で躍進していたロータスF1チーム(ドライバー:キミ・ライコネン&ロマン・グロージャン)のスポンサーとなりました。これは親会社のコカ・コーラ社にとって、burnブランドを通じた本格的なF1チームスポンサーシップであり、チームと協力して音楽やアートを絡めた革新的キャンペーンを展開する意欲的な試みでした。
しかし、その後チームの成績状況の変化や経営体制の変更もあり、ロータスF1チームは2015年末にルノーに買収されました。これに伴いburnもF1スポンサーから撤退し、市場における製品競争でもレッドブルやモンスターの勢いに押された形となりました。
短期間でモータースポーツ界に強いインパクトを与えたものの、日本市場においては事業として大きな成功を収めるには至らなかった例と言えるでしょう。
KiiVA(キーバ)-元レーサーが起こした国産ブランドの挑戦
KiiVA(キーバ)は、日本人の元レーシングドライバー阿部翼氏が立ち上げた国産エナジードリンクブランドです。阿部氏は自身のレース引退後の2013年に株式会社キーバを設立し、2015年頃から製品展開を開始、「キーバ エナジードリンク 500」は2016年に発売されました。
創設者が元レーサーということもあり、KiiVAは当初からモータースポーツとの強い結びつきを見せています。2019年にはSUPER GTのGT300クラスに参戦する「チームJLOC(ジャパン・ランボルギーニ・オーナーズ・クラブ)」のスポンサーとなり、国内レースへの支援を本格化させました。
KiiVAのマーケティング戦略は、国内モータースポーツファンの共感を得る施策が光ります。
SNSではレース現場の熱気あふれる写真とともに「極限の戦いに挑むドライバーたちを、KIIVAは全力でサポートする」といった力強いメッセージを発信。ブランドカラーのゴールドはトロフィーや勝利をイメージさせ、缶デザインにもスピード感が漂います。
創設者が元レーサーということもあり、KiiVAは当初からモータースポーツとの強い結びつきを見せています。2019年にはSUPER GTのGT300クラスに参戦する「チームJLOC(ジャパン・ランボルギーニ・オーナーズ・クラブ)」のスポンサーとなり、国内レースへの支援を本格化させました。
KiiVAのマーケティング戦略は、国内モータースポーツファンの共感を得る施策が光ります。
SNSではレース現場の熱気あふれる写真とともに「極限の戦いに挑むドライバーたちを、KIIVAは全力でサポートする」といった力強いメッセージを発信。ブランドカラーのゴールドはトロフィーや勝利をイメージさせ、缶デザインにもスピード感が漂います。
おわりに:エナジードリンクが彩るモータースポーツの現在と未来
かつてタバコメーカーがスポンサーの主役だった時代は過ぎ去り、現代のモータースポーツ界ではエナジードリンク各社がチームやドライバーの大口スポンサーとなっています。
その背景には、エナジードリンクの持つ「刺激」「興奮」「挑戦」といったイメージがレースの世界観と融合しやすいことがあるのでしょう。スポンサーシップを通じて潤沢な資金や斬新なアイディアが競技にもたらされ、ファンはよりエキサイティングなレース体験を享受できています。
そしてこの関係性は今後も続いていくでしょう。エナジードリンク各社は新たなチャレンジをする人々の背中を押し、これからも数多くの名勝負を陰で支えてくれるはずです。
その背景には、エナジードリンクの持つ「刺激」「興奮」「挑戦」といったイメージがレースの世界観と融合しやすいことがあるのでしょう。スポンサーシップを通じて潤沢な資金や斬新なアイディアが競技にもたらされ、ファンはよりエキサイティングなレース体験を享受できています。
そしてこの関係性は今後も続いていくでしょう。エナジードリンク各社は新たなチャレンジをする人々の背中を押し、これからも数多くの名勝負を陰で支えてくれるはずです。