室内空間を確保するための特殊なレイアウト!ローバーミニのメカニズムを解説

ミニ 西川撮影

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コンパクトなボディで最大限の室内空間を確保することを目標に造られたミニは、独自のメカニズムが満載となっています。

そんなミニのオリジナリティあふれるメカニズムに今回は注目していきましょう。

西川 昇吾|にしかわ しょうご

1997年生まれ。富士スピードウェイ近隣で生まれ育ち、大学で自動車に関する学習をする傍ら、自動車ライターとしての活動を始める。過去にはコミュニティFMのモータースポーツコーナーにてレギュラー出演経験あり。「書くこと、喋ることで自動車やモータースポーツの面白さを伝える」を目標とし、様々なジャンルのライティングや企画に挑戦中。

西川 昇吾
Chapter
特殊なFFレイアウト
独特な運転フィーリングを生むサスペンション

特殊なFFレイアウト

今となっては多くのクルマが採用しているFFレイアウトですが、1959年当時では後輪駆動のレイアウトが主流でした。

そんな中ミニがFFレイアウトを採用した理由は、室内空間をできるだけ広くするために、走行に必要なメカニズムをコンパクトにまとめたかったからです。

このような理由から当時としては珍しいFFレイアウトを採用することになったのですが、ミニの生みの親であるアレック・イシゴニスはよりメカニズムをコンパクトにするために独創的な工夫を施します。

それはエンジンの下にあるオイルパンのスペースにギアボックスなどの駆動系のメカニズムを入れ込むということです。これが俗に言う2階建てパワートレインです。
なぜパワートレインを2階建てにしたのか?

それはエンジンと駆動系メカニズムをまとめることにより、パワートレインを更にコンパクトにまとめあげることができるという理由もありますが、設計上の制約もありました。それは既存のエンジンを使用するということ。これにはコストを抑える目的があったと思われます。

この制約の下選ばれたのは、848ccの直列4気筒エンジンでした。先にも述べたように当時FFレイアウトは珍しく、基本的に後輪駆動レイアウトで使用されているエンジンばかりでした。このエンジンもその例に漏れていません。

そのため、そのままエンジンとミッションを横置きにするレイアウトではパワートレインが長くなってしまい、想定しているボディサイズに配置できなくなってしまいます。

そこで2階建てのレイアウトにすることで、コンパクトなボディサイズにパワーユニットを収めることに成功。ミニの特徴とも言われるこのパワートレインのレイアウトはいわば苦肉の策とも言えるものでした。
この特殊なパワートレインレイアウトからエンジンとミッションでオイルを共有するという他のクルマにはないオイル循環となりました。「ミニはオイルが重要」と言われるのはこのようなパワートレインとなっているからです。

しかし、前例のない特殊なレイアウトから、各種補器類のスペースを確保するのがなかなか難しかったのも事実。通常ならば前に配置されるラジエーターが横置きとなっている点などから、スペースとの戦いであったことが見受けられます。

独特な運転フィーリングを生むサスペンション

特殊なメカニズムとレイアウトを採用したのはパワートレインだけではありません。フロントサスペンションも同様です。

形状こそウィッシュボーンというスポーツカーでポピュラーな高性能サスペンションとされる形状ですが、金属バネを使用していないのが特殊なポイントです。

バネの代わりに衝撃を吸収するのはゴム製のラバーコーンです。この特殊なサスペンション構造に、スペースを確保するために採用された10インチという小径のタイヤがミニ独特のダイレクトでクイックなステアリング感覚を生むこととなります。
2階建てパワートレインとラバーコーンサスペンション。この2つはミニのキャラクターを位置付けるメカニズムであることは間違いないでしょう。

決して正統派ではなく、その後の自動車でもあまり採用されなかった特殊なメカニズムであることは間違いありません。しかし基本的にこのメカニズムのまま排気量アップなどアップデートを繰り返し、ミニは約40年生産され続けることとなります。

この事実は、ミニのメカニズムが機能的にとても優れていたことを証明しているのではないでしょうか?バンやピックアップなど数多くのバリエーションが存在しているのも、この優れたFFレイアウトだからこそできたと言えるでしょう。

メカニズムをコンパクトにまとめて、室内空間を最大限確保する。この考え方は現代のコンパクトカーに似ているところがあります。ミニのメカニズム思想はその先駆けであったと言えるでしょう。
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