埋もれちゃいけない名車たち vol.46 クルマ哲学の先生的存在「ローバー MINI」

アヘッド ローバー MINI

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今回の巻頭特集では僭越ながら主筆を務めさせていただいた。その中のテーマのひとつ、〝息子に押し付けたいクルマ〟の中で、僕は「プリミティヴなクルマもオススメで、本当は古くて簡素なヤツも紹介したかった」というようなニュアンスのことを記した。今回は現行モデルであることを線引きのひとつにしたのだけれど、そこに記した〝色々なことを考えさせてくれる哲学の先生みたいな存在〟という点で、古くて簡素なクルマに敵うものはないからだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.162 2016年5月号]


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vol.46 クルマ哲学の先生的存在「ローバー MINI」

vol.46 クルマ哲学の先生的存在「ローバー MINI」

2001年に新世代のミニが生まれて台頭してくるにつれ、どんどん〝マニアのためのクルマ〟的な方向に追いやられつつあるようだけど、いわゆるクラシック・ミニは、その代表格といえる。クルマが快適で安楽な乗り物であるのが当たり前になった昨今、このクルマに乗ると本当に様々なことを考えさせられる。

クラシック・ミニはサー・アレック・イシゴニスというエンジニアの天才的な設計から生まれ、今の軽自動車より小さな車体に驚くほど優れたパッケージングがなされているけれど、基本的な構成としては極めてシンプルだ。

エンジンとミッションを2階建てにして狭いエンジンルームに押し込み、サスペンションもスプリングにスペースを取る金属バネじゃなく円錐形のゴムを用いてその弾力を利用することで、最小限のコンパクトさとした。そして大人4人が乗り込める室内スペースを稼いだ。

が、ぶっちゃけ、今の水準で考えたら少しも広くない。車体が余りにも小さいのだ。全長3m5㎝、全幅1m41㎝、全高1m35㎝程度。

それでも自動車としての機能は完璧に満たせるし、そのうえ小さくて軽い車体の恩恵と前述のゴム製サスペンションおかげで、スポーツカーのように機敏な走りすら楽しめる。おもてなしのようなものは何ひとつないけれど、クルマってこれでいいんだ、ということを身体で学べるのだ。

もっとも、例えば車室内も荷室も大人4人には窮屈、エンジンのパワーも大きくない、クルマに合わせた操作を強いられる場合もある、と〝自動車としての機能〟はあらゆる部分がミニマム。

日本仕様はクーラーとステレオ(オーディオ、ではない)が備わってることが多いけど、それ以外には何もないし、パワーステアリングもパワーウインドーもない。当然ながらABSもない。

つまり、使い方にも走らせ方にも、スマートにあらゆることをこなすには現代のクルマとつきあうようなインスタントな感じではダメで、頭を使って工夫する必要がある。

そうじゃなくてもそれなりに走るし使えるが、そこをクリアできたときにはどれほどのものが身についているか。それはもう無限大であろう。

考えてみたら、息子だけじゃなく親父も乗ってみるべきかも知れない。

ローバー MINI

クラシック・ミニこと“ミニ”が誕生したのは1959年のこと。まともなクルマを手に入れられなかった当時のイギリスの庶民に向け、経済性と実用性を持つ安価な小型車として開発された。

3m×1.5m程度の小さなスペースにクルマを走らせる機能と大人4人のためのスペースを無理なく詰め込んだミニの設計は、その後の小型車の作り方に大きな影響を与えたが、何よりミニそのものが最終的には2000年まで生産が続けられたことからも、このクルマが世界中で長く支持されたことが判る。

スポーツパーツやドレスアップパーツも豊富で、楽しみ方の拡張性も相当高い。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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