マツダ MX-30をCX-30との違いを比較しながら徹底試乗!観音開き(フリースタイルドア)の使い勝手とは?

マツダ MX-30

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 マツダの新型車、MX-30を徹底試乗。マツダ初の量産EVと噂されていましたが、MX-30には、直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」に独自のマイルドハイブリッドシステム「M HYBRID (エム ハイブリッド)」を組み合わせた「e-SKYACTIV G (イー・スカイアクティブ・ジー)」を先行して発売します。RX-8以来の採用となる観音開き(フリースタイルドア)も特徴的なMX−30ですが、2022年前半からは「ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術」を搭載する見通しとのこと。で、一体どんな変容を見せていくのか?必見の一台です。

文:工藤貴宏

工藤 貴宏|くどう たかひろ

1976年生まれの自動車ライター。クルマ好きが高じて大学在学中から自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。卒業後に自動車専門誌編集部や編集プロダクションを経て、フリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジン搭載のマツダCX-5。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

工藤 貴宏
Chapter
マツダ MX-30とCX-30を比較した時の違いとは?
マツダ CX-30のスタイリングからは、獲物を狙う猛獣のような躍動感が感じられる
マツダ MX-30はシンプルでクリーンな印象
MX-30は観音開きドアを採用
MX-30は観音開きドアの使い勝手は?
MX-30は「実用的な2ドア」と認識して選ぶ。それが賢明な答えか
MX-30は、マイルドハイブリッド仕様を先行して発売する
ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術」を2022年前半に搭載予定

マツダ MX-30とCX-30を比較した時の違いとは?

マツダが新たに発売したコンパクトSUVの「MX-30」。車体は全長4395mm×全幅1795mm×全高1550mmで、ホイールベースは2655mm。スペックとしては「CX-30」に対して全高が10mm高いだけ(この全高だと一般的な機械式立体駐車場も利用可能)。両者はなんとも近いポジショニングです。

MX-30に対するひとつめの疑問は、どうしてマツダはほぼ同じサイズのクロスオーバーSUVを2車種も用意したのかということ(SUVを連発しているトヨタですら同じ全長のモデルはないのに)。逆に考えれば、2車種を展開する意味を探し出せれば、MX-30のキャラクターが見えてくるでしょう。

マツダ CX-30のスタイリングからは、獲物を狙う猛獣のような躍動感が感じられる

写真:宮越 孝政
プラットフォームをはじめMX-30とCX-30は基本的な車体設計を共用しています。そのうえ全長もホイールベースも同じ。しかし、実際に並べてみると全く違うクルマ。その理由はプロポーションの違い(MX-30はCX-30に比べてフロントオーバーハングが長くてリヤオーバーハングが短い)もありますが、そもそもデザインテイストが全く違います。

CX-30は、「鼓動(こどう)」と呼ぶこれまでのマツダデザインの延長にあり、大きなフロントグリルに鋭い目つき(ヘッドライト)、そして鍛え上げた筋肉をイメージさせる車体側面の抑揚からは、獲物を狙う猛獣のような躍動感を感じさせます。

マツダ MX-30はシンプルでクリーンな印象

いっぽうMX-30はシンプルでクリーン。いままでの鼓動デザインに比べたらフロントグリルもずっと小さくてスマートで、ボディは直線基調でスッキリしています。デザイナーによると「MX-30も鼓動デザインだが、これまでよりも表現の幅を持たせた」とのこと。いずれにせよ、これまでのマツダとは明らかに違うのはだれの目にも明らかでしょう。

もうひとつの特徴は、クーペスタイルとしていること。真横からリヤウインドウの傾斜を見るとグッと緩やかで、軽快な雰囲気です。

MX-30は観音開きドアを採用

そして、一般的なSUV……どころか一般的な乗用車との大きな違いとなっている、MX-30のハイライトともいえるのが、マツダが「フリースタイルドア」と呼ぶ観音開きドアの採用。後席ドアを、一般的なドアとは逆に後ろ側へ開く構造とした設計です。

そんな違いを見ていると、マツダはより個性的なSUVを作りたかったのだということがわかります。王道を行くCX-30に対して、MX-30は個性で勝負。その背景には「EV(電気自動車)を作るにあたり、個性がないと埋もれてしまう」という判断があったのは間違いないでしょう。現時点では日本仕様にEVはありませんが、クルマの成り立ちはEVありきと感がるのが自然です。

MX-30は観音開きドアの使い勝手は?

さて、使い勝手はどうでしょう。まずは気になる観音開きドアからチェック。

後席ドアはサイズが小さいのをはじめ、一般的な後席ドアとは使い勝手が違います。たとえば、サッと後席に乗り込んだり、サッと後席から降りるのは苦手。MX-30の後席ドアは、前席のドアを開いた状態でしか開閉できないからです。

ただし、実際に使ってみると乗り降り自体は思っていた以上にずっと楽でした。前後ドアを開くとBピラーがないから柱が邪魔にならないし、開口部も意外に広くて乗降姿勢がスマートだからです。このあたりの使い勝手は一般的な2ドアとは段違いで、フロントシートを前に出さなくても乗り降りできたのは報告しておきましょう。
MX-30のアイデンティティともいえるこのドアをどう評価するか。それはMX-30を「後席ドアが特殊な4ドア」と捉えるか、「補助的な後席ドアを備えた2ドア」と認識するかで大きく違うでしょうね。

4ドアと同等の使い勝手を期待するなら、悪い点ばかりが気になりがっかりするかもしれません。しかし2ドアの派生モデルだと思えば、一般的な2ドアに比べて後席アクセスは楽だし、前席のドアも短いから狭い場所で乗り降りしやすいし、けっこう実用的。

もっとも便利なのは、後席に荷物を置く際にサッとドアを開けてアクセスできることでしょうか。後席を荷物置き場と考えれば、このフリーアクセスドアはかなり実用的なのです。

MX-30は「実用的な2ドア」と認識して選ぶ。それが賢明な答えか

また、赤ちゃんから小さい子供がいるファミリーにもいいでしょうね。赤ちゃんをチャイルドシートに座らせたり降ろしたりする際に、観音開きドアは一般的なドアに対して開いたリヤドアやBピラーが邪魔にならず、楽だからです。

子供がもう少し成長し、自分で乗り降りするような年代になってもマッチングは良好。リヤドアの開閉を大人が管理できるから、子供が勝手に力いっぱいドアを開けて隣のクルマに「ドーン!」なんてアクシデントを防げるから。乗り降り自体も、子供ならまったく苦にならないでしょう。いずれにせよ「4ドアでなく2ドアを買った」と考えておけば、フリースタイルドアのいい部分がたくさん見えてくるのです。
「実用的な2ドア」と認識して選ぶ。それがMX-30を買って幸せになるためのポイントと思えば間違いありません。

なかには、固定されたBピラーがないことで側面衝突時の安全性が気になる人もいることでしょう。しかし、ドアを閉めればリヤドアに内蔵された強固なBピラーがしっかり車体と結合する設計となっているから心配はいりません。
では、ドア以外の実用性はどうでしょうか。

気になるのは後席の広さですが、空間的には大人2人が座ってロングドライブするのに不足なし。クーペスタイルの外観からは意外ですが、ひざまわりも頭上も余裕があり、想像以上にゆったり座れます。

ただし、太いBピラーの影響もあって窓が小さいので、閉塞感は大きめ。あと後席座面の前後長が短めなのが気になりました。このあたりは個人の感覚に左右される部分が大きいので、実際に座ってチェックして欲しいところです。

その後ろの荷室は400L。CX-30の430Lに比べるとちょっと狭いですが、このクラスとしては平均水準といっていいでしょう。
運転席に座ると、水平基調のスッキリとしたインパネとともに面白いのがシフトレバーの位置です。台座が高い位置にあってなんだかスポーツカー的。これはハンドルとの距離が近いので持ち替えやすく、操作時の腕の動きも自然でいい感じです。

ドリンクホルダーにペットボトルを置いても、操作の邪魔にならないのもいいですね。
シフトパターンはMX-30で新たに採用されたマツダ独自の逆L字式ですが、これはPに入れる際にちょつと癖があり、「最前部がP」という一般的な感覚で操作すると、実は「Rのまま」なんてことも。

実は試乗中も、停車するつもりがブレーキを離したらバックして驚きました。慣れるまでは注意です。

MX-30は、マイルドハイブリッド仕様を先行して発売する

パワートレインは、排気量2.0Lのガソリン自然吸気エンジン(156ps)に出力6.9psと小さなモーターをセット。いわゆるマイルドハイブリッドです。

マイルドハイブリッドは一般的に10%ほどの燃費向上効果があるとされますが、大きなモーターを積むはハイブリッドに比べるとコストアップが抑えられ、性能とコストのバランスに優れているのが長所。

走りはモーターのアシスト感を強く感じることはできませんが、走り出しの反応の良さは光る部分。モーターのアシストの恩恵でしょう。停止からのスタートで気持ちよく前に出ていきます。パワートレインに関しては、特筆すべき程パワフルではないけれど不足はなく軽快といったところ。

加速時に、アクセル操作に対する反応がリニアに思えるのは、トランスミッションがこのクラスで多いCVTではなく6速AT、しかも積極的にロックアップする設計のユニットだからでしょうね。
乗り心地は、特に初期モデルでは「ちょっと悪い」という印象を受けることが多いマツダ車とは思えないほど滑らか。このあたりは「ストイックにハンドリングを磨いてきた」という背景とはちょっと違う感じです。

MX-30はCX-30に比べてドア開口部周りに加え、サスペンションの取り付け部も強化。そんな車体構造も乗り心地に効いているのでしょう。FFと4WDを乗り比べたところ、FFのほうがより上質な乗り心地でした。
ただ、走っていて気になったのは斜め後方視界。太いBピラーの影響を受け、特に右後方はそれが顕著で幹線道路や高速道路に合流する際などに右後ろを振り返った際の直接視界がちょっと狭いです。

これは、たとえば右ウインカーを出した時には右斜め後方のカメラ映像をディスプレイに映しだすなどのサポートで解決るのがいいかもしれません。今後のバージョンアップに期待したいですね。

ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術」を2022年前半に搭載予定

MX-30 2019年の秋に東京モーターショーにて。写真:宮越 孝政
ところで筆者も含め、このMX-30に対して「EV」というイメージを抱いていた人も少なくないはず。2019年の秋に東京モーターショーで公開された時は「マツダ初の量産EV」という説明だったからです。

だから正直なところ国内仕様が正式発表されて「ガソリンエンジンのマイルドハイブリッド」と明らかになったときは「あれれ!?」でした。

マツダによると「いろいろなパワーユニットを積むことを想定した設計になっていて、地域に合わせたパワーユニットを展開する」とのこと。欧州は最初からEVですが、日本はマイルドハイブリッドというわけですね。ただ、いずれにせよ“電動化車両(=モーターを駆動力に使う車両)”という括りがあり、そこで日本仕様もガソリンエンジンにモーターを組み合わせているわけです。
ただ、日本でも「マイルドハイブリッドのみ」ではありません。2021年1月からは日本でも電気自動車を発売予定。また2022年前半からは「ロータリーエンジンを発電機として使用するマルチ電動化技術」を搭載する見通しとのこと。微妙な表現ですが、噂のレンジエクステンダーのほかにPHEVなどの可能性もありそうです。
マツダはこのMX-30を「新しい価値観を持ち、マツダの幅を広げるクルマ。常識にとらわれず変化を楽しめる人にぜひ乗って欲しい」と言います。とはいえ、そんな人が多いとはマツダも思っておらず日本における月間販売計画は1000台を予定しています。

ライバルと比べるのではなく「気に入ったら買う。惚れたら買う。2ドアだと思って買う」というのが、MX-30との生活で幸せになれるパターンでしょう。

いままで、マツダはクルマらしさを前面にアピールした新型車を開発してきました。しかしMX-30は、居心地のいいインテリアとか、「自分らしく」をキーワードにした気取らない存在感とか、ちょっと違う方向性。今までと違うユーザー層に共感してもらうという狙いなのでしょう。

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