BMW523d M Sport・523d xDriveツーリングM Spiritを試乗レビュー!無機質なビジネスアスリートに魅力はあるのか!?

BMW 5シリーズ

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現行型のBMW5シリーズが日本デビューしたのは2017年1月。セダン(G30型)から販売開始し、半年後にツーリングが追加されました。

「空」「雲」と「プロペラ」がイメージされているという「BMW」のエンブレムが輝くラージサイズのボディには、先進安全技術から最新アイテム、さらにダイナミクスに関するアイテムまでフル装備。一見、不満に感じるところなど一切無いようにみえますが、詳細に見ていくと、気になる点がいくつか見えてきました。

今回は【1.車両の概要】【2.内外装のデザインのポイント】【3.シート座り心地や荷室の使い勝手】【4.ハンドリングや乗り心地といった「走り」】の4記事にわたって、販売の主力となるディーゼルエンジンの523dセダンと523dツーリングの比較試乗の結果を、ご紹介していきます。

文・吉川 賢一/写真・鈴木 祐子

吉川 賢一|よしかわ けんいち

モーターエンジニア兼YouTubeクリエイター。11年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。次世代車の先行開発を経て、スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。その後、クルマの持つ「本音と建前」を情報発信していきたいと考え、2016年10月に日産自動車を退職。ライター兼YouTube動画作成をしながら、モータージャーナリストへのキャリア形成を目指している。

吉川 賢一
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5シリーズはボディサイズはキープだがデカい
5シリーズの高級セダン&ディーゼルエンジンは完璧なコンビ
5シリーズは圧倒的に進化したBMWの先進安全装備を搭載

5シリーズはボディサイズはキープだがデカい

5シリーズは、全幅1,870mm×全長4,945mm(ツーリングは4,950mm)とかなりの巨体です。BMWの3シリーズは全幅1,830mm×全長4,715mm、フラッグシップの7シリーズは全幅1,900mm×全長5,000mm超ですので、まさにこの中間に位置します。ヒエラルキーは守られてはいますが、駐車場などでの取り回しは気を使います。

最小回転半径は5.7m。メルセデスEクラス(ホイールベース2,940mm)は5.4m、アウディA6(2,925mm)は5.7m、レクサスLS460(2,970mm)は5.4~5.7mとなっており、ホイールベース2,975 mmのラージセダンとしては標準的な数値ではありますが、後輪操舵機構を標準搭載するM Sportとはいえ、大径幅広のフロントタイヤを履くと起きるこの厳しい現実は、5シリーズオーナーとしては受け入れなくてはなりません。

5シリーズの高級セダン&ディーゼルエンジンは完璧なコンビ

5シリーズのラインアップは非常に幅広く、直列4気筒2.0Lガソリンエンジンのエントリーモデル523i(663万円)から、直列6気筒3.0Lガソリンターボのハイエンドモデル540i xDrive M Sport(1099万円)まで、なんと436万円もの価格差があります。

日本での販売主力モデルは、価格帯のほぼ中央となる、836万円の2.0Lディーゼルエンジンの523d。欧州市場で発覚したディーゼル燃費の不正問題の影響もあり、軒並み電動化ヘとシフトを始めている欧州車ですが、各メーカーが研究を重ね、環境負荷を極限まで減らしたディーゼルエンジンは、車重のあるクルマにとってベストマッチです。

今回の試乗した5シリーズセダンは1,700kg、5シリーズツーリングは1,840kgと、決して軽くはありませんが、40kgmを超える最大トルクによる立ち上がりは見事で、コロコロという小さめのディーゼルサウンドと共に、軽快に走らせることができます。エンジンの性能とは、最大出力ではなく、トルクだと改めて感じました。

トルクの細いガソリンエンジンを加給してトルクを引っ張り出すよりも、こうしたディーゼルターボエンジンの方がジェントルに感じるのは、筆者だけではないはず。エンジンサウンドにもこだわりたい方には、より上級の3.0L直6エンジンの340iをどうぞ、ということでしょう。

5シリーズは圧倒的に進化したBMWの先進安全装備を搭載

衝突被害軽減ブレーキ・ストップ&ゴー機能付ACC・レーンキープアシスト・レーンチェンジワーニング・クロストラフィックウォーニング・サイドコリジョンプロテクトなど、現時点で考えられる先進安全アイテムはすべて標準搭載となっており、またヘッドアップディスプレイやデジタルメーターも標準搭載。

車両価格800万円ならば当然ともいえますが、「見えないところをクルマが見えるようにする」といった安全技術の意識の高さは、欧州車共通の強みでもあります。その分、車両価格に反映されてしまっていますが…。

こうした安全技術に囲まれた移動は、安心感が高く非常に快適です。しかし、その分BMWをドライビングしている、という特別な感情も希薄になってしまうように思います。

先進安全制御に、メーカーごとの味の違いを持たせるのは困難であることは承知していますが、昔はドライバーズカーとして憧れを抱いたBMWのセダンが、今やデジタルの集まりのようになってしまったのは、やや残念にも感じました。
何世代もわたり、歴史を重ねて完璧なまでに作りこまれたパッケージング、そして先進安全性能やクオリティの高い作り込みなど、5シリーズはユーザーの声を拾い上げ、完璧なカタチとして答えています。

ただし、完璧であるがゆえに、旧来からのBMWファンとしては、少し寂しく感じることがあるのも事実。BMWらしさはどういった形で表れているのか?次回は、内外装デザインやシート性能、荷室の使い勝手、そして注目の走りについて、レポートしていきます。

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