現代のキャンピングカー事情は「宿代節約」と「ペット連れ」?!

AUTOHOME roof tent for the new MINI Countryman キャンピングカー

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10年ほど前から需要が右肩上がりを続ける、キャンピングカー。2019年7月に日本RV協会が発表したデータによると、2017年度のキャンピングカーの総売上額は424億6975万円の過去最高額を記録。

日本でも確実に定着しつつある、キャンピングカーの最新事情を探ります。

文・山崎 友貴/写真・横山 大輔

山崎 友貴|やまざき ともたか

四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。

山崎 友貴
Chapter
東日本大震災で注目を浴びたキャンピングカー
若年層を意識したキャンピングカーの登場
文化の定着と共にトラブルも増加

東日本大震災で注目を浴びたキャンピングカー

キャンピンカーのブームが始まったのは、2005年前後と言われています。この時期から日本での保有台数が右肩上がりとなり、2016年には10万台を突破しています。

キャンピングカーが増加した要因はいろいろ言われていますが、2009年あたりからファッションとして始まったアウトドアの流行や、空前のペットブームなどのファクターが後押ししているとも言われています。

また年々進む高齢化も、キャンピングカーの需要拡大に繋がっているようです。2019年度の「キャンピングカー白書」によれば、60代と70代のユーザーが全体の半数以上を占めており、夫婦二人で旅をするために購入したというユーザーが半数以上を占めました。

こうした高齢者ユーザーにキャンピングカーが注目されたのは、2011年の東日本大震災からでした。当時は、被災者が避難所や狭いマイカーで不自由を強いられる様子が連日のように報道され、エコノミー症候群にかかる人も少なくありませんでした。

これに危惧感を抱いた人々が、軽自動車のバンやトラックをベースにした軽キャンパーや、ハイエースなどのバンをベースにしたバンコンバージョンに注目。いざという時の「避難所」として購入する中高年が、少なくありませんでした。

その後、日本のキャンピングカー文化は急速に発展と成熟を遂げ、昨今ではより快適な中型の「キャブコンバージョン」を購入する人が多くなり、休日ともなると多くの“キャブコン”を高速道路などで見かけるようになっています。

ちなみに、筆者が各地で出会うキャンパーは、ほとんどがシルバーエイジの夫婦か、愛犬や愛猫を連れた人。キャンピングカーを買った理由を尋ねると、「のんびり時間を気にせずに旅をできるから」「宿泊費を節約した分、おいしいご当地グルメが食べられるから」「宿泊費がかからないので、長い期間旅行ができるから」といった理由が多く聞かれました。

またペット連れのユーザーは、「宿泊可能な施設の数が少なく、旅行に行ける範囲が限られてしまう」という切実な理由があるというのが分かりました。

若年層を意識したキャンピングカーの登場

経済的にゆとりのあるシルバー世代がキャンピングカーユーザーとして増えているのに比例して、より高級で大型なキャンピングカーが売れているという傾向が、昨今の市場では見られます。特に輸入キャンピングカーの売り上げは順調なようで、各地で開催されるキャンピングカーショーでも輸入車の展示コーナーは大変な人気です。

よりパワフルな動力性能を持ち、豪華で快適なバスコンバージョンなどの大型キャンピングカーは、動くコンドミニアムと言っても過言ではありません。高額で、運転には大型免許などを要しますが、時間と経済力にゆとりのあるシルバー世代にとっては、それらの条件をクリアすることはたやすいことです。

一方で、実は若年層が増えつつあるという声もあります。群馬県にあるキャンピングカー専門店「フィールドライフ販売」の大石純也氏は言います。

「軽キャンパーは10年ほど前からブームがスタートしましたが、当初買っていたのはシルバー世代がほとんどでした。しかし、最近は10代から20代の若い人が急速に増えています。釣りやサーフィンなどアウトドアスポーツが趣味とか、そういう明確な目的を持っているわけではなく、ただキャンパーに乗って週末に泊まりいくというユーザーです」。

軽キャンパーでも200〜300万円はする車種が多いのですが、それでもローンを組んで購入する若年層が多いんだとか。それに伴い、キャンピングカーにある変化が見られると大石氏は言います。

「軽キャンパーを購入するのは、日常でマイカーとして使用するからです。そのため、エクステリアを気にするユーザーがほとんどです。ボディカラーをはじめ、ホイールやタイヤなど、若者らしいセンスでドレスアップをしていく人が多く、それに合わせた新モデルを各社が出す傾向が顕著になっています」。

たしかに昨今の市場を見回すと、かつては“シロモノ”だったキャンピングカーが、急速にドレッシーになっています。欧米のムーヴメントである「バンライフ」をフューチャーしたモデルや、軽バンをリフトアップした「アゲバン」をベースにしたモデルなど、車中泊の装備の充実だけでなく、ドレスアップカーとしての価値を持ったキャンピングカーを各社がリリースしています。

文化の定着と共にトラブルも増加

日本にキャンピングカー文化が定着した感がありますが、同時にインフラの未発達が指摘されています。日本RV協会は、全国にキャンピングカー専用の車中泊施設「RVパーク」をはじめ、民間の各事業者と提携した施設「湯Youパーク」「ぐるめパーク」などを拡大させていますが、まだ数としては十分ではありません。

そのため、文化やマナーに馴染んでいないユーザーが、道の駅や公共の駐車施設などで、駐車スペースの占有、トイレや電力でトラブルを起こす事例が増えています。

日本RV協会や業界はマナーの啓蒙を行っていますが、安心してオートキャンプができる施設が少ない現状では、人や車が少ないことを理由に自分達の利便性を優先させてしまうという事情もあるようです。

現在はどの施設でも明確な使用ガイドラインがあるわけではなく、あくまでもユーザーの一般常識に委ねられている状態です。しかし、あまりにマナーが悪ければ入場さえ拒否する施設が今後増える可能性も。実際、キャンピングカーを積極的に呼び込んでいる道の駅がある一方で、出入り禁止にする道の駅も出てきています。
どんな文化でも急速にムーブメントになると、マナーやインフラは後追いになるものですが、キャンピングカーの今がまさにそういう状態と言えます。ただしこうしたマナー違反はキャンピングカーに限ったことではないので、今後ユーザー同士の見守りや啓蒙活動にも期待したいものです。
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