メルセデス・ベンツ Cクラスワゴン(C350) は賢明な選択だった
更新日:2024.09.09
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メルセデス・ベンツCクラスと筆者の付き合いは23年目を迎える。1997年に初めて購入したW202、続いてW203、そして現愛車であるS204(W204のステーションワゴン)を2台と、これまで3世代4台を乗り継いだ。その昔、新型モデルがデビューするたびに「最上級グレードを1台頼むよ!」なんて大名買いがあったと聞くが、筆者はいつの時代もそれとは真逆、中古車を交えた慎重な買い方を続けている。以下報告したい。
文/写真・西村直人
文/写真・西村直人
メルセデス・ベンツ Cクラスワゴン(C350) |最高の道具であるか否か
愛車に何を求めるか……、この欲求は人それぞれ。筆者のクルマ選びは“最高の道具であるか否か”だ。もっとも、現在の愛車であるS204を含め、これまでのCクラスはいずれも社用車として購入(登録)したからで、とくに信頼性の高さを重要視した。やはり業務で使う以上、出先でメカニカルトラブルに悩まされたくはないし、ランニングコストにしてもこのご時世、重視したい。
過去所有していた歴代Cクラスのうち、W202(C230)とW203(C180)は4気筒のベーシックグレードを購入した。ご存じのように日本市場へ導入される輸入車の多くは本国で展開しているすべてのグレードを導入できず、当時のCクラスは上級グレードである「エレガンス」(W202)相当を中心に導入されていた。
過去所有していた歴代Cクラスのうち、W202(C230)とW203(C180)は4気筒のベーシックグレードを購入した。ご存じのように日本市場へ導入される輸入車の多くは本国で展開しているすべてのグレードを導入できず、当時のCクラスは上級グレードである「エレガンス」(W202)相当を中心に導入されていた。
外装にはメッキモールを適度に配し、内装パネルには随所にウォールナットを用いるなど上質で、快適装備に至ってはほぼすべて揃っていた。選べるオプション装備にしてもサンルーフやトラクションコントロール(当時はASRと呼ばれていた)など限られたものだった。その後のW203はコストダウンが随所に見られたものの、走行性能は確実に洗練されW202の正常進化版として重宝した。
現在所有しているS204は冒頭に述べたように2台目。1台目は前期型でV型6気筒2.5lエンジンを搭載した「C250エレガンス」だ。詳しい読者もおられるだろうが、このS204とV6 2.5lエンジンの日本における販売期間は1年少々と短く、実際、日本での販売台数もかなり少なかった。
高回転域を好むショートストローク型(ボア×ストローク比率は約0.77)のV6 2.5lエンジンは90度バンクで204PS/25.0kgfmを発揮。トルクコンバーター方式の7速ATである7Gトロニックとの組み合わせで、小気味よい走りを得意としていた。また、16インチタイヤとのマッチングを図ったエレガンス専用ダンパー/ブッシュの設定により乗り味は路面状況を問わず滑らかだ。
共に過ごした4年間は故障もなく、消耗部品はクラス水準価格とランニング&メンテナンスコストに優れていたが、燃費性能だけはほめられたものではなかった。クルーズコントロール機能を使ってアップダウンの厳しくない高速道路を80㎞/hで100㎞ほど巡航しても12㎞/l台がやっと。アイドリングストップ機構も付かず、夏場の都市部では5㎞/l台前半なんてこともあった。
それでもC250に乗り続けたかった。もっとも大きな理由はそのボディサイズとステーションワゴンならではの使い勝手だ。メルセデス・ベンツが得意としている高い小回り性能(最小回転半径5.1m)に加えて、全幅1770㎜で見切りの良いボディは都市部の裏道でも躊躇することはないし、シングルフォールディング式のリヤシートを倒すだけで長尺荷物も楽に運べる。しかし、時代の流れとともにC250から買い換えを決断すべき出来事があった。
筆者は交通コメンテーターとして20年近く活動しているが、その間、継続している取材テーマがある。先進安全技術だ。正式名称を「衝突被害軽減ブレーキ」とする自律自動ブレーキ機能にはじまり、ドライバーの運転操作をサポートする数々の運転支援機能について、これまで国内外の自動車&商用車メーカー、そして部品メーカーなどへの取材を重ねてきた。
とりわけ、衝突被害軽減ブレーキとセンサーの大部分を共有するアダプティブクルーズコントロール機能(ACC)には強く惹かれるものがあった。ご存知のようにACCはSAEレベル1に相当する運転支援技術であり、この先の自動運転社会を形成する第一歩の技術になると確信していたからだ(詳細は拙著「2020年、人工知能は車を運転するのか」インプレス刊 https://book.impress.co.jp/books/1116102057 )。よって、そうした先進安全技術を装着したクルマを愛車にしたいという強い想いがあったのだ。
現在所有しているS204は冒頭に述べたように2台目。1台目は前期型でV型6気筒2.5lエンジンを搭載した「C250エレガンス」だ。詳しい読者もおられるだろうが、このS204とV6 2.5lエンジンの日本における販売期間は1年少々と短く、実際、日本での販売台数もかなり少なかった。
高回転域を好むショートストローク型(ボア×ストローク比率は約0.77)のV6 2.5lエンジンは90度バンクで204PS/25.0kgfmを発揮。トルクコンバーター方式の7速ATである7Gトロニックとの組み合わせで、小気味よい走りを得意としていた。また、16インチタイヤとのマッチングを図ったエレガンス専用ダンパー/ブッシュの設定により乗り味は路面状況を問わず滑らかだ。
共に過ごした4年間は故障もなく、消耗部品はクラス水準価格とランニング&メンテナンスコストに優れていたが、燃費性能だけはほめられたものではなかった。クルーズコントロール機能を使ってアップダウンの厳しくない高速道路を80㎞/hで100㎞ほど巡航しても12㎞/l台がやっと。アイドリングストップ機構も付かず、夏場の都市部では5㎞/l台前半なんてこともあった。
それでもC250に乗り続けたかった。もっとも大きな理由はそのボディサイズとステーションワゴンならではの使い勝手だ。メルセデス・ベンツが得意としている高い小回り性能(最小回転半径5.1m)に加えて、全幅1770㎜で見切りの良いボディは都市部の裏道でも躊躇することはないし、シングルフォールディング式のリヤシートを倒すだけで長尺荷物も楽に運べる。しかし、時代の流れとともにC250から買い換えを決断すべき出来事があった。
筆者は交通コメンテーターとして20年近く活動しているが、その間、継続している取材テーマがある。先進安全技術だ。正式名称を「衝突被害軽減ブレーキ」とする自律自動ブレーキ機能にはじまり、ドライバーの運転操作をサポートする数々の運転支援機能について、これまで国内外の自動車&商用車メーカー、そして部品メーカーなどへの取材を重ねてきた。
とりわけ、衝突被害軽減ブレーキとセンサーの大部分を共有するアダプティブクルーズコントロール機能(ACC)には強く惹かれるものがあった。ご存知のようにACCはSAEレベル1に相当する運転支援技術であり、この先の自動運転社会を形成する第一歩の技術になると確信していたからだ(詳細は拙著「2020年、人工知能は車を運転するのか」インプレス刊 https://book.impress.co.jp/books/1116102057 )。よって、そうした先進安全技術を装着したクルマを愛車にしたいという強い想いがあったのだ。
メルセデス・ベンツ Cクラスワゴン(C350) |人と機械の協調運転がいかに大切かを分からせてくれた
そのACCがCクラスの後期型、具体的には2012年7月26日発売以降のモデルにオプション装備として用意された。よって筆者は買い換えを決意し、2013年5月に納車を迎える。グレードは「C350 BlueEFFICIENCY アバンギャルド」で、アダプティブクルーズコントロール機能を含む先進安全技術群である「レーダーセーフティパッケージ/RSP」も当然ながら装備した。「ACCが買い換えの理由?」と多くの読者は疑問を抱かれるだろう。確かに「走る、曲がる、止まる」といった基本性能とは違う次元での話だし、そもそも先進安全技術にそれだけの価値があるのか……、という議論もあるだろう。
納車から7年目を迎え、愛車と共に全国津々浦々を走り回って感じたことは、「人と機械の協調運転がいかに大切か」ということだった。ACCは車載センサーで前走車を認識し、アクセルとブレーキの各操作が一定の範囲内でシステムによりコントロールされ追従走行が行われる。ただし、センサーの認識性能や制御の限界によって、システム任せの運転では前走車に離されたり、割り込み車両に対するブレーキ制御が遅れてしまったりすることがある。
そうした状況では人、つまりドライバーの出番となり、アクセルやブレーキを踏み足すことで安全な運転環境が保たれる。筆者はこれを「人と機械の協調運転」として2010年より提唱し、この先の高度運転支援社会から自律自動運転社会へスムースに移行するための予行演習であると位置づけている。人の弱みを機械が助け、機械の不得意分野を人が助ける……。現在、TRI-ADやVWではこの協調運転を「守護神/ガーディアン」という言葉で説明する。
いずれにしろ、完全なる自律自動運転技術とされるSAEレベル4以上を搭載した車両は実証実験と名の付く場面ではそれこそ1990年代から実現しているが、我々の購入できる車両へと実装されるには未だ長い時間が必要だ。それまでは人と機械の協調運転時代となる。
そうした状況では人、つまりドライバーの出番となり、アクセルやブレーキを踏み足すことで安全な運転環境が保たれる。筆者はこれを「人と機械の協調運転」として2010年より提唱し、この先の高度運転支援社会から自律自動運転社会へスムースに移行するための予行演習であると位置づけている。人の弱みを機械が助け、機械の不得意分野を人が助ける……。現在、TRI-ADやVWではこの協調運転を「守護神/ガーディアン」という言葉で説明する。
いずれにしろ、完全なる自律自動運転技術とされるSAEレベル4以上を搭載した車両は実証実験と名の付く場面ではそれこそ1990年代から実現しているが、我々の購入できる車両へと実装されるには未だ長い時間が必要だ。それまでは人と機械の協調運転時代となる。
さて、現愛車であるC350だが、搭載するV型6気筒3.5リッター直噴エンジン(M276型)は3モード燃焼システムによる低燃費性能(JC08モード数値12.8㎞/L)と、306PS/37.7kgfmの高出力/台形トルク特性(トルク局線画像で確認されたい)を両立する。
M276型が採用する3つの燃焼システムは、①成層燃焼、②均質燃焼、さらに①と②の混合である③均質成層燃焼であり、走行状態に応じて①~③をシームレスに切り替えることを特徴とする。ちなみに燃料消費量がもっとも少ない①がもっとも効果的に行われるのはアイドリング時で、理想空燃比1:14.7に対して1:50程度と極端な値となる。
前期型C250のウィークポイントであった燃費数値はC350となって劇的に改善された。排気量が1.4倍になって燃費数値が向上するとは狐につままれたようだが、3モード燃焼システムによってそれは実現した。M276型はとりわけ③の燃焼モードを多用する高速巡航燃費が良好で、車載の瞬間燃費計の値ながらACCを使用した80km/h巡航を続けると季節を問わず18~20km/lを記録する。
過去に計測した具体的な数値の一例だが、中央自動車道の河口湖IC(標高854m)→大月JCT(ここまで主に平坦から降坂路で同395m)→諏訪南IC(ここまで主に平坦から登坂路で同965m)までの約116kmを平均車速78km/h(外気温11℃~15℃で道中の渋滞なし)で筆者が実走テストした実測値で17.9km/Lだった。この数値、例えるなら2.0リッターターボエンジンの実測値に近い。
M276型が採用する3つの燃焼システムは、①成層燃焼、②均質燃焼、さらに①と②の混合である③均質成層燃焼であり、走行状態に応じて①~③をシームレスに切り替えることを特徴とする。ちなみに燃料消費量がもっとも少ない①がもっとも効果的に行われるのはアイドリング時で、理想空燃比1:14.7に対して1:50程度と極端な値となる。
前期型C250のウィークポイントであった燃費数値はC350となって劇的に改善された。排気量が1.4倍になって燃費数値が向上するとは狐につままれたようだが、3モード燃焼システムによってそれは実現した。M276型はとりわけ③の燃焼モードを多用する高速巡航燃費が良好で、車載の瞬間燃費計の値ながらACCを使用した80km/h巡航を続けると季節を問わず18~20km/lを記録する。
過去に計測した具体的な数値の一例だが、中央自動車道の河口湖IC(標高854m)→大月JCT(ここまで主に平坦から降坂路で同395m)→諏訪南IC(ここまで主に平坦から登坂路で同965m)までの約116kmを平均車速78km/h(外気温11℃~15℃で道中の渋滞なし)で筆者が実走テストした実測値で17.9km/Lだった。この数値、例えるなら2.0リッターターボエンジンの実測値に近い。
メルセデス・ベンツ Cクラスワゴン(C350) |先進技術は追いかけるとまた新たなものが欲しくなる
5万km弱を共にしたC350に対して大きな不満はない。そもそも前期型のC250で不満であった燃費数値が大幅に改善し、これまでの生涯燃費数値は11.8km/Lだ。高速道路での長距離移動が多いとはいえ、3.5リッターの排気量と1680kgの車両重量、前面投影面積は小さめながら空気抵抗係数0.31と今となっては平凡な値のステーションワゴンボディという条件からすれば納得だ。
先進安全技術に関しても不満はない……、が、納車から6年以上が経過し技術進化著しい先進安全技術の分野では当然ながら手に入れたい技術が増えた。具体的には車線の中央部分をトレースする車線維持機能を備えたい。もっともこの領域となると後付けのレトロフィット対応とは物理的、そして技術的にも難易度が高く、かなえるにはS205へとステップアップしなければならないのだが……。
先進安全技術に関しても不満はない……、が、納車から6年以上が経過し技術進化著しい先進安全技術の分野では当然ながら手に入れたい技術が増えた。具体的には車線の中央部分をトレースする車線維持機能を備えたい。もっともこの領域となると後付けのレトロフィット対応とは物理的、そして技術的にも難易度が高く、かなえるにはS205へとステップアップしなければならないのだが……。
メルセデス・ベンツの強みは芯がぶれないことだ。これは比較的コンパクトなボディサイズであるCクラスであっても変わらない。時代の流れにも敏感で、ときに先進安全技術の分野ではメルセデス・ベンツ全車種で最先端を目指す。
一方で、衝突安全性能の向上を考えた場合、多少のボディサイズアップはあってもダウンサイジング化されることはほぼないだろう。そうなると、車幅が狭く(C350では1780㎜)て取り回しが良い(18インチタイヤを装着するが最小回転半径は5.1m)S204はこの先も仕事のパートナーとして活躍してくれそうだ。
一方で、衝突安全性能の向上を考えた場合、多少のボディサイズアップはあってもダウンサイジング化されることはほぼないだろう。そうなると、車幅が狭く(C350では1780㎜)て取り回しが良い(18インチタイヤを装着するが最小回転半径は5.1m)S204はこの先も仕事のパートナーとして活躍してくれそうだ。