ライバルと比較して分かった!新型RAV4の革新性とは?

トヨタ 新型 RAV4 宮越孝政

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RAV4が久しぶりに日本に戻ってきました。すでに北米で先行発売されていたので、そのデザインは媒体で知っていた方も多いと思いますが、実車に触れてみると驚く性能を秘めていることが分かりました。

文・山崎 友貴

※ 2019年6月時点

山崎 友貴|やまざき ともたか

四輪駆動車専門誌、RV誌編集部を経て、フリーエディターに。RVやキャンピングカー、アウトドア誌などで執筆中。趣味は登山、クライミング、山城探訪。小さいクルマが大好物。

山崎 友貴
Chapter
間違いなくヒットする要素を多く持っている
CR-Vとは違うアプローチのベクタリング機構
世界初の機構で次世代のSUVを牽引

間違いなくヒットする要素を多く持っている

4月10日に発売されたばかりの新型RAV4ですが、その登場を心待ちにしていた人も多いのではないでしょうか。現在、トヨタではC-HRがヒット街道を爆進していますが、やはりコンパクトSUVなのでスペースユーティリティがイマイチだという声がありました。

一方、トヨタの看板SUVであるハリアーはモデルがすでに古く、また価格も高めという点で購入に踏み切れない人もいたからです。

ライバル車であるCR-Vが先駆けて発売されましたが、2019年3月の新車登録台数データ(自動車販売協会連合会調べ)を見てみると、CR-Vは3480台と好調のようですが、車格が違うとは言えC-HRの8952台に比べると遙かに及びません。新型RAV4はC-HRを凌ぐヒットを記録すると業界関係者はいいます。

予め誤解を解きますが、CR-Vは実に楽しい車です。2018年5月、2年ぶりに日本に復活した5代目CR-Vですが、RAV4同様に北米を中心とする海外市場をターゲットにしている車種です。

共に90年代半ばに誕生したRAV4とCR-Vは、高額で重厚なクロスカントリー4WDに対して廉価で若年層でも気軽に買える、都市部でも乗用車のように乗れる車としてスタートしました。そのため、当時は「ライトクロカン」という呼び名(カテゴリー)が一般的でした。

しかし、クロカン四駆ブームが終わり、両モデルはラグジュアリー路線に舵を切り、代ごとにどんどんキャラクターを変えてきた歴史があります。
現行型CR-Vは、先代よりもさらにラグジュアリーかつスポーティなイメージチェンジを図ってきました。これは北米市場を意識してのことでした。

アメリカでは歴代CR-Vは「ママのSUV」と呼ばれており、フルサイズSUVが人気の同国では、ランク下として捉えられた車種だったのです。そのため、男性ユーザーの人気がイマイチだったという状況にありました。

そこでさらにプレミアム感のある押し出しの強い外観、これにスポーティなハンドリングを付加させて、世の男達を魅了する。このコンセプトを具現化させたのが、現行型のCR-Vです。

一方、RAV4は2、3、4代目とソフトにコンフォート路線を進み、4代目で一気に現代的なフォルムへと変貌を遂げています。その結果、2016年と2017年でSUV販売台数世界一を獲得。順風満帆な進化を遂げていました。

ここでそのままにしないのが、いまのトヨタです。RAV4は先代モデルの遺伝子を受け継ぎながらも、あっさりと従来の路線を捨ててしまいました。

そのフォルムは、C-HRさながらのエッジの立ったものとなり、フロントマスクは北米で人気のあるタコマやタンドラと共通のヘキサゴンが与えられました。そしてツートーンカラーやオフロードルックのパーツを採用し、若くアクティブなイメージを前面に押し出しています。

日本のCMを観ると、かつて初代RAV4に慣れ親しんだ世代に、再びワクドキ感を感じて欲しいというRAV4に込められた開発陣のメッセージがよく伝わってきます。

RAV4のエクステリアは、シャープで現代的なデザインがベースになっていますが、スキッドプレートを大胆に取り入れたり、ツートーンカラーを採用したりと、ヘビーディーティな雰囲気を強調しています。さらに、後ほどお話する性能面でもオフロードを強く意識し、CR-Vとは異なるベクトルのSUVとなっているのです。

CR-Vとは違うアプローチのベクタリング機構

デザインなどの商品性に加えて、新型RAV4にはメカニズムで見るべき点がいくつかあります。そのひとつが「ダイナミックトルクベクタリングAWD」という4WDシステムです。

現行型のRAV4には、他に「E-Four(ハイブリッド4WD)」「ダイナミックトルク4WD(前後トルク配分型4WD)」がありますが、改良はあっても基本的な機構は従来からのスライドです。

ですが、ダイナミックトルクベクタリングAWDは世界初と謳われたメカニズムです。まずその特徴ですが、前後輪の駆動トルク配分を自動で制御するだけでなく、後ろの左右輪の駆動トルクもアクティブにスプリットさせます。ちなみに前後輪軸へのトルク配分率は100:0→50:50、後ろ左右輪は0:100→100:0に変化します。

ここがこのメカのポイントです。4WDは2WDに比べると、走行安定性は高いのですが、全輪が駆動した時に曲がりにくいという特質があります。運転上級者であればそれを鑑みたドライビングができるのですが、イージードライブという観点から考えれば、曲がりづらさは4WDのデメリットです。

そこでホンダはCR-Vに、「アジャイルハンドリングアシスト」という電子デバイスを採用しました。これは、車両の操舵量や車速などをコンピューターが計算して、四輪のブレーキを自動制御。四輪の回転差に微妙な変化を加えることで、シャープに気持ち良くコーナーを曲がれるようにしようというメカなのです。

実際に走行してみると、このメカニズムの効果は抜群です。まるでレールの上を走る列車のように、気持ち良くコーナーを曲がっていきます。アンダーステアになって、コーナーの中盤で焦ってしまうということがまずありません。
一方で、このメカニズムには多少の弱点があります。まず、走行中にブレーキを介入させるシステムゆえに、どうしてもコーナリングスピードが落ちるのです。さらに、コーナーリング中のドライビングフィールも、やはり電気制御による不自然さが多少あります。曲がっている時は気持ちがいいのですが、操る楽しみが薄いのも事実です。

こうした部分を無くすことに成功しているのが、RAV4のダイナミックトルクベクタリングAWDです。このシステムが備えている「トルクベクタリング機構」は、ステアリングを切った瞬間から前後輪に最適な駆動トルクを配分すると共に、後ろ左右輪のトルク配分も独立して行います。

例えば左に向かって曲がる時は、右後輪の駆動トルクを多めにかけることで、曲がりやすくするわけです。

考え方としてはCR-Vのアジャイルハンドリングアシストと同じなのですが、RAV4はブレーキ制御で回転差を付けないので、エンジンパワーをロスすることがないのです。このトルクベクタリング機構により、RAV4はワインディングで弱アンダー傾向の自然なハンドリングを発揮します。

一度CR-Vのベクタリング機構を体験してしまうと物足りなさも感じますが、あまり機械頼りになっていない感じがRAV4の好印象なところです。

世界初の機構で次世代のSUVを牽引

写真:宮越 孝政
ダイナミックトルクベクタリングAWDには、まだまだ特徴があります。もっとも大きな特徴が、世界初となるドグクラッチを使った「ディスコネクト機構」です。簡単に言えば、パートタイムタイム4WDのように“完全な2WD状態にできる”機構を、フルタイム4WDに採用したということです。

フルタイム4WDは、フルタイムといっても四輪が駆動している時間というのは「常時」ではありません。スタンバイ4WDと呼ばれるシステムでは、前輪や後輪の主要駆動輪が空転しないと四駆状態になりません。また、アクティブトルクスプリットと呼ばれるシステムでも、不要の時はできる限り2WDで走らせるようになっています。

その理由は「燃費」です。ところが、2WDで走っていても、従来のフルタイム4WDはパワートレーンの構造上、駆動トルクを2輪にしか伝えないというだけで、実はドライブシャフトもプロペラシャフトも受動的に回されてしまっていたのです。この必要のないパワートレーンの動きがパワーロスとなり、燃費を悪化させていたわけです。

そこでトヨタは、前後のLSDの脇にドグクラッチを設置して、必要のない時は、駆動系からフロントLSD〜プロペラシャフト〜リアLSDまでの回転を完全に停止させたのです。もちろんこれは、車両の状態に合わせて自動で行われますが、サブトランスファーを持ったのと同じことになったわけです。
写真:宮越 孝政
さらに注目すべき点があります。それは、本格クロスカントリー4WDであるランドクルーザーシリーズと同じ、「マルチテレインセレクト」を採用したことです。これはダイヤルを「マッド/サンド」「ノーマル」「ロック/ダート」の3つのモードから選ぶことで、オフロードや低μ路での走破性を自動で向上させるというメカです。

通常、オフロードを走破するには適切なドラテクやタイヤのチョイスといったノウハウが必要ですが、この電子デバイスを使えば、誰でも簡単に悪路を走破することができます。

このシステムは、ダイナミックトルクベクタリングAWDに付加されているもので、トルクベクタリング機構と相まって、驚くべき悪路走破性を発揮するのです。実際に試乗すると、スタック状態でのLSDの利きが非常に早く、さらにダートのコーナリングではテールスライドからのステアリングリカバリーを容易にしてくれます。

つまり、フラットダートから本格的な岩や泥などのオフロードまで、RAV4はいとも簡単にこなしてくれるのです。

もちろん、RAV4の車体構造は他のSUVと同じモノコック&独立懸架式サスですから、激しい凹凸のあるダートを大ジャンプしたり、ロックセクションをボディのアンダーをガツガツぶつけながら進むということは、現実的ではありません。

ですが“やろうと思えばできる”という潜在性能を持たせ、それをさらにデザインやインターフェイスで可視化させたことが、ライバルの CR-Vとは大きく異なる部分と言えます。

今は海外の超高級車やスポーツカーブランドでさえSUVをリリースしている時代ですが、どれも高級・快適化という乗用車ベクトルに邁進しており、かのランドローバーでさえも“硬派”なモデルはもはやありません。

そのため、かつて多くのユーザーたちがクロスカントリー4WDに求めた夢の生活やワクワク感が一部車種でしか味わえないのが現状です。
CR-Vはこうした現代のSUVの流れに乗ったモデルであり、一方の新型RAV4は黎明期のSUVに一度回帰して開発されたモデルと言えます。市場ではどちらが正解かはまだ分かりませんが、RAV4はSUVが第三世代に向かって行く過程で、纏うべき新しい価値観を見事に探り当てた車であることは間違いなさそうです。

最後になりましたが、ユーザーにとって大切な価格というファクターでも、RAV4とCR-Vには違いがあります。RAV4が300万円台の車両本宅価格におさめているのに対して、CR-Vは300万円台後半がメインストリームで、400万円台のプライスが付いたグレードもあります。

ボディサイズなど車格はほぼ同じ、メカニズムや性能面ではRAV4が先進的、そして価格でもRAV4がリーズナブルとなると、ユーザーの視線は当然ながら同車に集まりそうです。

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